代表取締役の解任(解職)時に押さえておくべきポイント

Q&A

Q: 代表取締役の解任(解職)について、何を注意すれば良いでしょうか?

A: 代表取締役の解任は、会社の経営にとって非常に重要な決定です。解任を行う際は、法的手続きの適正性を確保すること、解任の決議が適切に行われていること、そして解任後のトラブル防止策を講じることが大切です。この記事では、解任の手続きの流れや解任時の注意点、そして解任後の対応について解説いたしますので、ご参考になれば幸いです。

1.代表取締役の解任とは?

代表取締役の解任とは、会社が、現職の代表取締役をその地位から辞任させ、取締役としての地位のみを維持させることを指します。正確な法律用語では「解任」ではなく「解職」と呼ばれ、代表取締役を取締役の地位からも辞めさせる場合には「取締役の解任」が適用されます。ただし、本稿ではわかりやすさを重視し、「代表取締役の解職」を「代表取締役の解任」と記載します。

会社法に基づき、取締役会における決議によって解任は行われ、解任された代表取締役は、ただの取締役として会社に残ることになります。

代表取締役の解任(解職)の根拠(会社法第369条第1項)

取締役会の決議は、取締役会に出席した取締役の「過半数」の賛成によって成立します。ただし、解任(解職)の対象となる代表取締役本人は、議決に加わることができません。

2.代表取締役と取締役の違い

代表取締役とは、取締役の中から選ばれ、会社を法的に代表する権限を持つ者を指します。この権限は、契約書への署名や印鑑の押印など、会社を実際に代弁するためのものであり、通常の取締役(平取締役)とは異なる特別な立場です。

なお、代表取締役でない取締役を「平取締役」と呼び、平取締役は会社を代表する権限を持ちません。代表取締役を解職すると、その者は平取締役に戻りますが、会社から完全に去るわけではありません。

3.代表取締役の解任手続きの流れ

STEP 1:取締役会の招集

解任のためには、まず取締役会を招集しなければなりません。招集手続きは会社法に従って進める必要があり、取締役全員(監査役がいる場合は監査役も含む)に対して招集通知を送ります。

ポイントとして、解任の対象となる代表取締役にも招集通知を送る必要があります。もしこの手続きを怠ると、解任の決議が無効とされる可能性があるため、十分注意してください。

STEP 2:取締役会での解任決議

取締役会の成立には、定足数を満たす取締役の出席が必要です。解任の対象となる代表取締役は、議決に参加することができませんので、定足数の算定に含めずに議決を行います。

例えば、取締役が5人(A、B、C、D、E)いて、そのうち1人(A)が代表取締役の場合、Aが解任の対象である場合には、Aを除いた4人が取締役会に出席し、そのうちの過半数(4人中3人)が賛成すれば、解任が成立します。

STEP 3:取締役会議事録の作成

解任の決議が成立したら、取締役会議事録を作成し、解任内容を記録します。この議事録は、将来的なトラブル防止のために、証拠としても重要な役割を果たします。

STEP 4:解任登記の申請

解任が決議されたら、速やかに登記手続きを行います。登記手続きは法的義務であり、これを怠ると、登記簿上の代表取締役情報と実態が異なることとなり、法的リスクが生じる可能性があります。

4.解任後の対応策と注意点

解任後は、解任された代表取締役に対して「解任通知」を送ることをお勧めします。解任通知とは、取締役会で解任が決議されたことを文書で通知するものであり、法律上の義務はありませんが、トラブル防止の観点から送付しておくことが望ましいです。

また、解任した代表取締役が会社に対して損害賠償を請求する可能性もあるため、そのリスクについても事前に確認しておくことが大切です。

5.代表取締役の解任に関するよくある質問

Q: 代表取締役を解任した後、その者が会社に居続けることは可能ですか?

A: 代表取締役を解任したとしても、その者は取締役として会社に残ることができます。会社から完全に退いてもらいたい場合には、「取締役の解任」を行う必要があります。

6.弁護士に相談するメリット

代表取締役の解任は、法的な手続きや会社内の調整を必要とするため、専門的な知識が不可欠です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、企業法務に特化した経験豊富な弁護士が、代表取締役の解任手続きについてのアドバイスやサポートを行っています。

弁護士に相談することで、解任手続きがスムーズに進むだけでなく、将来的なトラブル防止や法的リスクの軽減を図ることができます。

7.まとめ

代表取締役の解任は、会社の経営における重要な決定です。適切な手続きに則り、解任後の対応もきちんと行うことが、トラブルの回避と企業の安定経営につながります。迷ったときや疑問があるときは、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所までご相談ください。

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