出入り禁止(出禁)とは?その法的留意点とポイント

Q: 「出禁」という言葉をよく聞きますが、具体的にどんな意味で、どのような場合に使われるのでしょうか?

A: 出禁とは「出入り禁止」の略称で、主に飲食店や小売店などが、特定の顧客に対して今後の入店を禁止する措置を指します。出禁には法的根拠がないと思われがちですが、民法の「契約自由の原則」に基づいて店舗側が入店を拒否できる権利が認められています。本稿では、出禁の法的効力や通知の仕方、トラブル時の対応方法について解説します。

出禁とは?

「出禁」とは、「出入り禁止」の略称で、飲食店やスーパー、コンビニなどの小売店が、問題行動を起こした客に対して、お店側の判断で今後の入店を禁止する措置のことを指します。

一般的には、以下のような場合に出禁が検討されます。

  1. 犯罪行為:万引き(窃盗)、レジの金銭を盗む(強盗)、店内の備品を破損する(器物損壊)、酔っ払って暴力を振るう(暴行、傷害)といった行為。
  2. 悪質なクレーマー:不当な要求を繰り返し、店員に対して威嚇的な態度を取る「カスタマーハラスメント」。

出禁の法的効力

出禁には明確な法律の規定はありませんが、以下の法的原則に基づいています。

1. 契約自由の原則

「契約自由の原則」とは、民法における基本的な考え方で、どのような相手と契約を結ぶかは自由であるとするものです。つまり、店舗側が「この客にはサービスを提供したくない」と考えれば、その客と契約を締結しないという選択を取ることができます。

2. 施設管理権

店舗は、自らが所有する施設の管理権を有しています。そのため、店舗の秩序を保つ目的で、特定の人物を出禁とすることが可能です。ただし、この権利を行使する際には、恣意的であったり差別的な理由による出禁を避けなければなりません。たとえば、人種差別や正当な理由のない出禁は、違法行為となり損害賠償を負う可能性があります。

3. 出禁の通知後の法的効果

出禁を通知された後、相手がしつこく入店を迫ったり、居座り続けた場合には、建造物侵入罪(刑法第130条)や不退去罪(同条)が成立する可能性があります。また、他の顧客に迷惑をかけた場合やお店に損害を与えた場合には、損害賠償請求を行うことができる可能性もあります。

出禁にしたい相手への通知方法と注意点

1. 犯罪行為が行われた場合の対応

窃盗や器物損壊、暴行などの犯罪行為が行われた場合は、通常、警察に通報して対応してもらいます。その際、相手方が逮捕されれば、弁護人を通じて示談交渉を行い、その中で「今後一切立ち入らないこと」を約束させることが有効です。

2. 悪質なクレーマーの場合の対応

住所が分かっている場合には、文書にて出禁を通知することが望ましいです。口頭で伝えた場合、「言った、言わない」のトラブルになる可能性があるためです。文書には、事実関係を簡潔にまとめ、相手が納得しやすい内容とすることが重要です。事前に弁護士に内容を確認してもらうことも有効です。

住所が不明の場合は、来店時に直接書面を手渡すか、電話などで通知し、その際の会話を記録しておくことがトラブル回避に役立ちます。

出禁になった際の注意点

出禁を通知された後の対応について、以下の点に注意しましょう。

  1. 安易にお店に近づかない
    出禁理由が犯罪行為の場合は、再び入店を試みると建造物侵入罪などに問われる可能性があります。
  2. 正当な理由がある場合は冷静に話し合う
    自身にとって納得のいかない出禁であっても、繰り返しお店に押しかけると新たなトラブルを引き起こす可能性があります。電話やメールで冷静に対話の場を設けることが大切です。

弁護士に相談するメリット

1. 法的アドバイスを受けることができる

出禁は法的に複雑な問題を含むことが多いため、専門家である弁護士のアドバイスを受けることが重要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、契約自由の原則や施設管理権の行使、出禁通知の文書作成など、出禁に関するトラブルを未然に防ぐためのサポートを行っています。

2. 法的手続きを適切に行うことができる

弁護士に依頼することで、適切な出禁の通知やトラブル対応が可能となり、相手方との交渉をスムーズに進めることができます。特に相手方が弁護士を立てた場合、こちらも専門家による対応が必要です。

まとめ

本稿では、出禁とは何か、出禁の法的効力、そしてトラブル時の対応方法について解説しました。出禁は顧客とのトラブルを未然に防ぐための手段である一方で、慎重な対応が求められます。弁護士に相談しながら適切な対応を心がけることで、トラブルを最小限に抑えることができます。


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