はじめに

ネット上で誹謗中傷の被害に遭ったとき、「誰に相談すればいいのか分からない」「いきなり弁護士に相談するのは敷居が高い」と感じて、一人で悩みを抱え込んでしまう方は少なくありません。

しかし、ネットの誹謗中傷問題については、国や関連団体が設置している、無料で相談できる公的な窓口がいくつも存在します。これらの窓口は、被害に遭った方が最初に頼れる心強い味方です。

この記事では、誹謗中傷の被害に遭った際に利用できる主な無料相談窓口を一覧でご紹介するとともに、それぞれの窓口で「できること」と「できないこと(限界)」、そして、具体的な解決を目指すための弁護士との役割の違いについて、詳しく解説します。

Q&A

Q1. 「誹謗中傷ホットライン」に相談すれば、投稿を確実に削除してもらえますか?

「誹謗中傷ホットライン」は、問題の投稿について国内外のサイト管理者等に削除を「促す通知」を行ってくれますが、削除を法的に「強制」することはできません。サイト管理者が通知に応じなければ、投稿は削除されないままです。あくまで、サイト側の自主的な対応を促すための働きかけ、と理解しておくのが良いでしょう。強制的な削除を求めるには、最終的に裁判所の手続きが必要となり、その場合は弁護士のサポートが必要になります。

Q2. ひどい悪口を書かれています。法務局と警察、どちらに相談するのが適切ですか?

相談内容によって異なります。書き込みの内容が「殺す」「火をつける」といった脅迫や、ストーカー行為に該当するなど、身の危険を感じる犯罪の可能性がある場合は、まず警察(警察相談専用電話 #9110)に相談してください。一方、名誉毀損やプライバシー侵害といった、人権侵害の問題として解決を図りたい場合は、法務局の人権相談窓口が適しています。どちらに相談すべきか迷う場合も、まずは話しやすい方に連絡すれば、適切な窓口を案内してもらえます。

Q3. 無料の公的機関への相談だけで、誹謗中傷の問題は解決しますか?

ケースによります。サイト運営者が公的機関からの削除要請に素直に応じてくれれば、投稿の削除という点では解決するかもしれません。しかし、公的機関は、あなたの代理人として法的手続きを行ったり、匿名の投稿者を特定したり、加害者に損害賠償を請求したりすることはできません。したがって、加害者の責任を追及して金銭的な被害回復を図るなど、根本的な解決を目指す場合には、公的機関への相談だけでは不十分であり、弁護士への依頼が必要となります。

解説

誹謗中傷の被害で使える!主な公的機関・無料相談窓口

まずは、無料で利用できる主な相談窓口のそれぞれの特徴を見ていきましょう。

違法・有害情報相談センター

運営

総務省の支援事業として設立された、一般社団法人テレコムサービス協会が運営。

役割

インターネット上の違法・有害情報(名誉毀損、プライバシー侵害、脅迫など)について、被害者本人からの相談を受け付けます。

できること
  • 相談員による電話・ウェブでの相談対応。
  • 関係法令や判例に基づいたアドバイスの提供。
  • サイト管理者への削除依頼の方法に関する助言。
  • 事案によっては、センターからサイト管理者へ削除を促す通知を実施。
特徴

ネットトラブル全般に関する幅広い相談に対応しており、「まず何をすべきか」を知るための最初の相談先として適しています。

誹謗中傷ホットライン

運営

一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)が運営。

役割

インターネット上の誹謗中傷投稿に特化した相談・通報窓口です。

できること
  • ウェブ上のフォームから通報を受け付け。
  • ガイドラインに基づき、国内外のプロバイダ等(サイト管理者)に対して、利用規約に沿った削除等の対応を促す通知を実施。
特徴

特に海外にサーバーがあるSNSなど、国内外の幅広い事業者を対象に通知を行ってくれる点が強みです。ただし、電話相談は受け付けていません。

法務局の人権相談窓口(みんなの人権110番)

運営

国の機関である法務省(法務局・地方法務局)が運営。

役割

いじめ、差別、虐待、そしてネット上の誹謗中傷など、あらゆる人権問題に関する相談を受け付けています。

できること
  • 専門の相談員(法務局職員、人権擁護委員)による電話・面談・インターネットでの相談。
  • 人権侵害の疑いがある事案について、調査(当事者からの聞き取りなど)を実施。
  • 事案に応じて、加害者への説示や、サイト管理者への削除要請を実施。
特徴

「人権を守る」という国の機関の立場から、サイト管理者等に働きかけを行うため、一定の効果が期待できます。調査権限を持っている点も特徴です。

警察相談専用電話(#9110)

運営

各都道府県の警察本部。

役割

緊急の事件・事故(110番)ではないものの、犯罪や事故による被害を防ぐための相談を受け付ける全国共通の窓口です。

できること
  • 専門の相談員による電話相談。
  • 脅迫、ストーカー、業務妨害など、犯罪の可能性がある誹謗中傷に対するアドバイス。
  • 被害届の提出方法や、その後の手続きに関する案内。
特徴

生命や身体に危険が及ぶ可能性がある悪質なケースでは、まずここに相談することが重要です。刑事事件としての対応を求める際の入り口となります。

公的機関のメリットと限界

これらの公的機関は、被害者にとって心強い存在ですが、そのメリットと限界を正しく理解しておくことが重要です。

メリット

  • 無料
    費用を気にせず、気軽に相談できます。
  • 心理的サポート
    専門の相談員に話を聞いてもらうことで、精神的な負担が軽減されます。
  • 情報提供
    問題解決に向けた次のステップや、法的な考え方について、基本的な情報を得ることができます。
  • 解決のきっかけ
    公的機関からサイト管理者へ削除要請がなされることで、問題が解決するケースもあります。

限界(できないこと)

  • 代理人にはなれない
    あなたの代理人として、サイト管理者や加害者と直接交渉することはできません。
  • 強制力がない
    削除の「要請」や「通知」はできますが、相手に削除を法的に強制することはできません。相手が応じなければ、それ以上の措置は取れません。
  • 投稿者の特定はできない
    匿名の投稿者が誰なのかを調査し、特定する権限はありません。
  • 損害賠償請求は扱えない
    精神的苦痛に対する慰謝料など、金銭的な被害回復のための手続きは行えません。

弁護士との役割の違いと比較

公的機関の「限界」をカバーし、より踏み込んだ根本的な解決を実現できるのが、弁護士です。

比較項目 公的機関・団体 弁護士
相談費用 原則無料 有料(ただし初回相談無料の事務所も多い)
役割 相談、助言、情報提供、削除の「要請」 被害者の「代理人」として全ての法的措置を実行
削除請求 任意での要請のみ 任意交渉に加え、裁判所を通じた強制力のある削除命令が可能
投稿者の特定 できない 裁判手続き(発信者情報開示請求)により、可能
損害賠償請求 できない 示談交渉や民事訴訟により、可能
刑事告訴 警察が窓口(助言はもらえる) 告訴状の作成から提出、警察とのやり取りまで全面的にサポート

このように、弁護士は、公的機関では対応できない「強制力のある法的措置」や「金銭的な被害回復」を実現できる専門家です。

弁護士に相談するメリット

  • ワンストップでの根本解決
    投稿の削除から、投稿者の特定、損害賠償請求、刑事告訴まで、誹謗中傷問題の解決に必要な全てのプロセスを一貫して任せることができます。
  • 被害者に代わる交渉・手続き
    被害者自身が矢面に立つ必要はありません。弁護士が代理人として、サイト管理者や加害者との全てのやり取りを引き受け、精神的負担を軽減します。
  • 法的強制力による実効性の確保
    相手が任意に応じない場合でも、裁判という国家の制度を利用して、削除や開示、支払いを強制することができます。

まとめ

ネット上で誹謗中傷の被害に遭い、どうして良いか分からなくなったときは、まず無料で相談できる公的機関の窓口を頼ってみましょう。話を聞いてもらい、基本的な情報を得るだけでも、次の一歩を踏み出す勇気が湧いてくるはずです。

しかし、投稿者が削除要請に応じない場合や、加害者の責任をきちんと追及し、受けた損害の賠償を求めたい場合には、公的機関のサポートだけでは限界があります。その先の、より根本的で実効性のある解決を目指すためには、法律の専門家である弁護士の力が重要です。

「公的機関に相談したが解決しなかった」「加害者を特定して謝罪させたい」など、より踏み込んだ対応をお考えの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、ネット誹謗中傷に関するご相談を初回無料でお受けしております。どの窓口に相談すればよいか分からない、という段階からでも結構です。まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたの状況をお聞かせください。


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