【株主総会運営の基礎】適切な手続きと議事録作成で会社運営をスムーズに|重要な法的ポイントとは?

はじめに

株式会社の最高意思決定機関である株主総会は、会社の重要事項(定款変更・役員選任・決算承認など)を決議する重要な場です。一方で、その運営が不適切であれば、決議無効取消訴訟といったリスクに晒され、会社経営に混乱をもたらします。そのため、株主総会を正確かつ円滑に開催し、議事録を法的要件に従って作成することが極めて重要です。

本記事では、株主総会の開催手続き、招集通知の方法、当日の議事進行、そして議事録の作成・保存など、会社法が定める要件や実務ノウハウを解説します。特に、中小企業やオーナー企業では形式が軽視されがちですが、しっかりとルールを守ることで将来の紛争リスクを防ぎ、会社運営を円滑に進められるでしょう。

Q&A

Q1:株主総会は必ず開催しなければならないのですか?

定時株主総会は、原則として毎事業年度の終了後に一定期間内(多くは事業年度終了後3か月以内など)に必ず開催し、計算書類の承認役員選任などの決議を行います。加えて、必要に応じて臨時株主総会を開催することもできます。会社法では株主総会は会社の基本的な運営に欠かせない機関とされており、これを怠ると行政当局や株主からの指摘を受けるリスクがあります。

Q2:株主総会招集通知はどのようにすればいいのでしょうか?

一般的には、株主に対して書面または電磁的方法(メール等)で、開催日の2週間前までに招集通知を発する必要があります(公開会社・非公開会社で違いあり)。招集通知には、開催日時・場所・議題(目的事項)などを明示し、株主が議案を事前に把握できるようにする必要があります。招集手続きに不備があると、決議が取消されるリスクがあります。

Q3:議事録はどんな要件を満たさなければならないのでしょうか?

会社法上、株主総会議事録には以下の項目を記載・保存(10年間)する義務があります。

  • 株主総会の日付・場所
  • 議事の経過の要領およびその結果
  • 役員(議長・取締役など)や出席株主数、賛否の状況
  • 発言者と主張の要旨(必要に応じ)
  • 議長及び取締役の署名・押印(非公開会社の場合)
    記載内容が不明確だと将来的な争いの元となるため、正確にまとめることが重要です。
Q4:株主総会の決議が不適切だった場合、どうなるのですか?

会社法には決議の取消(無効・不存在)を主張する訴えが規定されています。例えば、招集手続きが違法であったり、議決権行使手続きに重大な欠陥があったりすると、株主が訴訟を提起して決議を取り消す可能性があります。結果的に会社の重要事項が無効になると、経営上大きなダメージを受けるため、適切な手続き遵守が不可欠です。

解説

株主総会の種類と流れ

  1. 定時株主総会
    • 毎事業年度の終了後に必ず1回開催。計算書類(財務諸表)や役員報酬、役員選任などを決議。
    • 事業年度終了後早めに監査や取締役会承認を経て、株主総会招集までのスケジュールを逆算して準備する。
  2. 臨時株主総会
    • 定時株主総会以外のタイミングで、増資・組織再編・役員解任など緊急の議題がある場合に招集。
    • 取締役会決議または一定割合の株主から請求があれば招集しなければならない。
  3. 開催手順
    • 招集通知送付→議案説明資料の準備→株主総会当日→議長の選任・議案の説明・質疑応答→採決→議事録作成。
    • 大企業では大株主事前説明会や想定問答集など、十分な根回しをするのが一般的。

招集手続きと通知の注意点

  1. 招集権限・期間
    • 取締役会設置会社の場合、原則として取締役会決議で株主総会を招集する。取締役会非設置会社なら代表取締役が招集する。
    • 非公開会社は最低1週間前、公開会社は2週間前までに通知するなど、会社法で定める期間を厳守する。
  2. 招集通知の記載事項
    • 開催日時・場所・目的事項(議案)・議決権行使書面添付など。
    • 決算承認、役員選任など具体的な議案を記載し、株主が事前に把握できるようにする。
    • 場所は物理的な会場だけでなく、近年はバーチャル株主総会の制度も利用され始めており、その場合はオンライン参加の方法も通知する。
  3. 株主提案権
    • 一定の要件を満たした株主は株主提案を行う権利があり、その提案があれば議案として取り扱う義務がある場合がある。
    • 提案を取り下げてもらうためには株主と協議し、必要に応じて譲歩や情報提供を行うことも考慮。

株主総会当日の運営

  1. 議長の選任と議事進行
    • 定款や取締役会規程で議長が代表取締役や取締役会長などと定められているケースも多い。議長が議事を進行し、質問反対意見に対して適切に対応。
    • 議事の進行において、株主の質問を制限する必要がある場合、理由や制限時間を説明し、不当な規制とならないよう配慮。
  2. 採決方法
    • 挙手、投票用紙、電子投票などの方式を定める。議決権行使書面や電磁的方法による行使をどう扱うか事前にルール化。
    • 重要議案(特別決議)では2/3以上の賛成を要するなど要件が異なるので、議長は間違いなく賛否数を把握し、決議結果を宣言。
  3. 反対株主・少数株主の扱い
    • 反対意見が出た際には記録を残し、回答できる範囲で答弁を行う。紛糾しそうなら時間制限を設け、議長の権限で議事を進めるが、乱暴に打ち切ると決議取消リスク。
    • 会社法で保護される少数株主権(議案提案権・議決権行使書面の閲覧請求など)への対応も慎重に行う。

議事録作成と保存

  1. 議事録の記載事項
    • 会社法施行規則により、株主総会議事録には以下を記載しなければならない。
      • 開催日時・場所
      • 召集手続の経過
      • 議長の氏名
      • 出席株主の数、議決権数(定足数を満たすか)
      • 議事の経過と要領、質疑応答や発言概要
      • 各議案の賛否と可決・否決の結果
      • 議事録署名人(議長・取締役など)の記名押印
    • 必要に応じて電磁的記録の形で作成することも可能だが、書面交付義務を満たすには手続き要件を確認する。
  2. 保存義務(10年間)
    • 株主総会議事録は本店に10年間保存し、株主や債権者が閲覧請求できる。
    • 子会社や同族会社で軽視されがちだが、将来の紛争で決議の適法性を証明する重要資料となるため、正確に作成・保管が必須。
  3. 不備があった場合のリスク
    • 議事録に記載漏れや虚偽があると、決議取消訴訟の根拠となったり、経営上の責任追及リスクが高まる。
    • 会社法上、取締役や監査役も議事録の正確性を確認する責任がある。

弁護士に相談するメリット

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、株主総会の運営と議事録作成に関して、以下のサポートを行っています。

  1. 招集手続き・招集通知のリーガルチェック
    • 招集手続きが会社法・定款の要件を満たすか、配当の可否や役員選任の適法性などを総合的に確認し、決議取消リスクを排除。
    • 招集通知の文面作成や株主名簿整備などもアドバイスし、未通知株主の問題を防ぐ。
  2. 議事録作成と保管
    • 総会終了後、実際の議事進行や賛否数に基づき、適法な議事録を弁護士がレビューして作成。
    • 必要に応じて電磁的保存の手続きや閲覧請求対応のフローを構築し、将来の紛争予防に寄与。
  3. 決議無効・取消訴訟対応
    • もし株主から決議取消の訴訟を起こされた場合、企業代理人として適法性を主張・立証し、決議を防衛。
    • 過去の議事録や招集通知記録を整理し、手続き的にも問題なかったことを法的に証明する。

まとめ

  • 株主総会は会社の重要事項を決定する最高機関であり、その招集開催手続きが違法だと決議取消リスクが発生する。
  • 招集通知は法定期限(非公開会社:1週間前、公開会社:2週間前)内に発し、議題を明示して株主の権利行使を保証。
  • 株主総会議事録は、議事の内容や結果を正確かつ詳細に記録して10年間保存する義務があり、不備があると将来の紛争で不利となる。
  • 弁護士のサポートを活用すれば、招集段階のリーガルチェックから総会当日の議事進行、議事録作成まで、一貫して適法性と円滑な運営を確保できる。

リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、企業法務に関する様々な問題を解説したYouTubeチャンネルを公開しています。企業法務でお悩みの方は、ぜひこちらのチャンネルのご視聴・ご登録もご検討ください。 

【企業法務の動画のプレイリストはこちら】


NS News Letter|長瀬総合のメールマガジン

当事務所では最新セミナーのご案内や事務所のお知らせ等を配信するメールマガジンを運営しています。ご興味がある方は、ご登録をご検討ください。

【メールマガジン登録はこちら】


ご相談はお気軽に|全国対応

 


トラブルを未然に防ぐ|長瀬総合の顧問サービス

長瀬総合法律事務所の顧問弁護士サービス