はじめに
近年、多くの企業が自社の公式SNSアカウント(ビジネスアカウント)を運用し、顧客とのコミュニケーションやブランドPRに活用しています。しかしながら、SNSならではの拡散力や匿名性から、企業公式アカウントが誹謗中傷やクレームの矢面に立たされるケース、あるいは担当者の不注意による炎上や情報漏洩などのトラブル事例も増え続けています。
こうしたトラブルは、企業の信用やブランドイメージを一瞬で損なうリスクがあるだけでなく、対応を誤ると二次被害・三次被害を招く可能性もあるのが特徴です。本稿では、ビジネスアカウント・企業公式SNSで起こり得るトラブル事例を紹介し、その背景や具体的な被害、さらには適切な対策や対応策について解説します。
Q&A
Q1:企業が公式SNSを運用するメリットは何ですか?
顧客との距離感を縮め、リアルタイムでのやりとりやファンコミュニティの醸成が図れるのが最大のメリットです。商品やサービスの情報を効果的に拡散でき、新規顧客を獲得しやすいという利点もあります。
Q2:企業公式SNSでよくあるトラブルにはどんなものがありますか?
代表例として、「担当者の不適切投稿による炎上」「クレーム対応の失敗による更なる批判」「なりすましアカウントによる詐欺行為」「誹謗中傷コメントの大量発生」などが挙げられます。
Q3:不当な批判や誹謗中傷コメントが殺到した場合、どう対処すればいいですか?
まずは落ち着いて、事実関係の確認と必要に応じた謝罪・説明を行いましょう。明らかな名誉毀損や侮辱に該当する投稿はSNS運営会社へ報告し、削除依頼を検討します。悪質な場合は弁護士に相談し、発信者情報開示請求などを行うのが有効です。
Q4:企業アカウント運営担当者が個人の意見を誤って公式見解として投稿してしまうことはありますか?
はい、少なくありません。担当者が個人アカウントと公式アカウントを切り替えずに誤投稿したり、感情的な発言を公式アカウントで行ってしまうなど、オペレーションミスで大きな炎上を招く事例もあります。
Q5:企業公式SNS運用でリスクを最小化するにはどうすればいいですか?
社内SNSポリシーや投稿ルール、承認フローを明確に定めて守ることが大切です。担当者教育も必要であり、万が一炎上した際の初動マニュアルを作成しておくとよいでしょう。法的トラブルが想定される場合は弁護士に相談し、危機管理体制を整えておくのが理想的です。
解説
ビジネスアカウント・企業公式SNSでの代表的トラブル事例
- 担当者の誤投稿・炎上
- 個人アカウントとの切り替えミス、感情的な発言や差別的表現が公式アカウントで投稿され、一気に炎上
- 企業アカウントにそぐわない不適切コンテンツ(プライベート写真など)の投稿
- クレーム対応ミスからの二次炎上
- 顧客から寄せられたクレームに対して挑発的な対応をしてしまい、さらに批判が殺到
- クレーム内容を真摯に扱わず、すぐ削除やブロックを行ったため「企業は隠蔽体質だ」と炎上が拡大
- 誹謗中傷コメントの大量発生
- ライバル企業やアンチユーザーによる組織的な攻撃で、企業公式SNSのコメント欄が荒らされる
- デマや根拠のない悪評が蔓延し、取引先や顧客が混乱
- なりすましアカウント・詐欺行為
- 企業公式アカウントを装った第三者がユーザーにDMで「キャンペーンに当選した」などと詐欺を働く
- 偽アカウントによる誤情報拡散でブランドイメージが毀損
トラブルが深刻化する背景
- SNS特有の拡散力
- 閲覧者が多く、リツイートやシェアで一気に数万人へ広がる
- 面白がって拡散するユーザーが多数出現する
- 匿名性・炎上助長
- 批判的コメントが殺到しやすく、正当な企業弁明がかき消される
- 匿名ユーザーが誹謗中傷や荒らし行為を激化させる
- 企業公式=信頼度が高い分、影響も大きい
- 「公式の発言」として受け取られるため、一度のミスで取り返しのつかないブランド損害を被る
- 情報の半永久的残存
- 運営会社が投稿を削除しても、スクリーンショットやまとめサイトに残る可能性が高い
トラブル発生時の初動対応
- 事実関係の整理
- 社内で問題投稿がなされたのか、外部からの誹謗中傷なのかなど原因を特定
- 担当者や関係部署を巻き込み、被害範囲やリスクを評価
- 公式声明・謝罪文の検討
- 不適切投稿や誹謗中傷の発生原因を確認し、必要に応じて謝罪と再発防止策を発表
- デマや虚偽情報であれば根拠を示して説明
- 削除依頼・ブロックなどのSNS機能活用
- 誹謗中傷投稿を運営会社へ報告し、ガイドライン違反を訴える
- 悪質ユーザーをブロックし、コメント欄やDMの一時停止を検討
- 弁護士に連絡し法的対応の可能性を検討
- 名誉毀損や侮辱、業務妨害などが成立しそうなら加害者特定や損害賠償請求を視野に
予防策とリスク管理
- 社内SNSポリシー・運用マニュアル
- 公式アカウントへの投稿ルール(承認フロー、文面チェック)
- 個人アカウントの利用制限や切り替えミス防止策
- 担当者教育・複数人管理
- SNS担当者が感情的な発言や個人的意見を投稿しないよう徹底
- アカウント管理権限を複数人でシェアし、ミスがないか相互チェック
- 定期的なモニタリング
- 自社名・ブランド名で検索し、悪評や誹謗中傷を早期発見
- 口コミ監視ツールの導入も検討
- 弁護士との連携
- トラブル発生前に相談し、危機管理体制を整える
- 万が一の被害発生時、迅速に法的手続きを進められる準備
弁護士に相談するメリット
法的観点からの迅速な炎上対応支援
企業SNSが炎上した際、弁護士が法的リスクを検討し、適切な謝罪文や対応方法をアドバイスします。安易な投稿や削除がさらなる炎上を招くリスクがあるため、専門家の視点は非常に重要です。
誹謗中傷投稿への削除依頼・発信者特定
企業公式アカウントが被害に遭った際、投稿内容が法に抵触するかを判断し、SNS運営会社への削除依頼、加害者の発信者情報開示請求を速やかに行います。不正アクセスやなりすまし被害があれば、不正アクセス禁止法などの適用も視野に入れます。
示談交渉・損害賠償請求で再発防止
悪質な誹謗中傷やデマ拡散を行った加害者が特定できれば、示談交渉や損害賠償請求を行うことで再発防止を図れます。弁護士が代理人として介入することで、企業担当者自身が感情的に巻き込まれずに解決を目指せます。
長期的リスクマネジメント
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、SNSポリシーやマニュアル整備、担当者教育プログラムの提案など、長期的にネットリスクを軽減する体制をサポートします。企業が安心してSNSを活用しながらブランドを守るための総合的支援が可能です。
まとめ
- ビジネスアカウント・企業公式SNSでの主なトラブル
- 担当者のミス投稿・炎上
- クレーム対応の失敗による二次炎上
- 誹謗中傷コメント・デマ拡散
- なりすましアカウントによる詐欺やブランド毀損
- トラブルが深刻化する背景
-
- SNS拡散力・匿名性
- 企業アカウントの信頼性ゆえダメージが大きい
- 情報の長期残存・炎上加速
- 初動対応と予防策
- 事実確認・迅速な謝罪や説明
- SNS運営会社への削除依頼・ブロック
- 社内SNSポリシー・承認フロー整備
- 定期モニタリング・弁護士との連携
- 弁護士に相談するメリット
-
- 炎上時の法的リスク判断と適切対応
- 削除依頼・発信者情報開示請求の迅速化
- 損害賠償・示談交渉で再発防止
- 長期的なネットリスクマネジメント支援
企業公式SNSは、ブランド強化や顧客との交流に大きな利点がありますが、トラブルリスクも同時に抱えています。適切なポリシーとマニュアルを整備し、万一の際には速やかに弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へ相談することで、被害を最小限に抑え、SNSを安全かつ有効に活用していきましょう。
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