はじめに
高齢者や障がいがある方など、判断能力が十分でない方が不動産を相続したり、所有するケースでは、「成年後見制度」を活用することで適切な財産管理を進められます。後見人(保佐人・補助人)が代理や支援を行い、売却や賃貸などの重要な手続きを安全に実施できる仕組みです。しかし、制度を使うには家庭裁判所での手続きが必要であり、不動産取引にも独特のルールが適用されます。
本稿では、成年後見制度の概要や不動産管理における留意点、実際の活用法などを解説します。
Q&A
Q1.成年後見制度とは何ですか?
成年後見制度は、精神上の障害などで判断能力が不十分な方(被後見人)の利益を守るため、家庭裁判所が後見人(保佐人・補助人)を選任し、その人が財産管理や法律行為の代理・支援を行う仕組みです。大きく分けて、
- 法定後見(後見・保佐・補助の3類型)
- 任意後見(本人が判断能力があるうちに「任意後見契約」を結ぶ)
があります。
Q2.後見人は不動産をどう管理するのでしょうか?
後見人は被後見人の財産全体を保護・管理する責任を負い、不動産もその一部となります。具体的には、賃貸や修繕、売却などを、被後見人の利益になるよう行います。
ただし、処分や担保設定の際には家庭裁判所の許可が必要な場合があり、勝手に売却したり貸し出すことはできません。
Q3.不動産を相続した後見人が売りたい場合、どんな手続きが必要ですか?
後見人が被後見人の不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3など)。なぜなら、不動産売却は被後見人に大きな影響を与える重要行為であり、裁判所が売却目的や価格、条件を審査して「被後見人にとって適切か」を確認します。
Q4.任意後見制度とはどんな違いがあるのでしょうか?
任意後見制度は、判断能力が十分なうちに、将来に備えて「自分の代理人になってほしい人(任意後見人)」と契約を結ぶ仕組みです。契約内容を公証役場で公正証書にし、本人の判断能力が低下したときに効力が発生します。これにより、
- 自分の希望に沿った後見人を選べる。
- 必要が生じるまで正式に後見がスタートしない。
といったメリットがあります。
Q5.成年後見制度を利用した場合の注意点はありますか?
以下の点に注意が必要です。
- 財産管理に制限がかかる
後見人が必要な契約や管理を行うため、被後見人本人や家族の自由にできない部分が増える。 - 裁判所の監督
後見人には収支報告や重要行為の許可申請が求められる。 - 費用負担
後見人への報酬や、裁判所への手続き費用がかかる。 - 被後見人の意思尊重
後見人は被後見人の利益を最優先すべきであり、後見人個人の利益にならないよう厳しく監督される。
解説
法定後見(後見・保佐・補助)の違い
- 後見(全部後見)
- 被後見人が判断能力を欠く常況(認知症など重度)にある場合に選任。
- 後見人が原則すべての法律行為を代理できる。財産管理権も包括的。
- 不動産処分や賃貸など重要行為には家庭裁判所の許可が必要。
- 保佐
- 被保佐人が判断能力が著しく不十分な状態。一定の行為(重要財産処分など)について、保佐人の同意が必要になる。
- 家庭裁判所が定めた行為について代理権を付与できる。
- 補助
- 判断能力が不十分ではあるが、後見や保佐ほど重くない状態。必要な範囲だけを補助人が支援する。
- 代理権や同意権の範囲は家庭裁判所が特定。
成年後見人が不動産を管理・処分する流れ
- 家庭裁判所への選任申立
- 親族や利害関係人(市区町村長など)が申立てし、審判で後見人(保佐人・補助人)が決定。
- 後見人は家庭裁判所に定期報告の義務がある。
- 財産目録作成
- 後見人は被後見人の財産を調査し、預貯金や不動産を含む財産目録を作成、裁判所に提出。
- 不動産処分(売却・賃貸・担保設定など)
- 後見人が判断し、被後見人の利益になると考えられる場合に行う。
- 家庭裁判所の許可を得て、売買契約などを締結。
- 受け取った売却代金は被後見人のために管理する。
- 管理・維持
- 不動産を所有し続ける場合、固定資産税や維持費の支払い、修繕計画などを後見人が行う。支出や収入を定期的に報告する。
成年後見制度を活用した不動産相続の事例
- 高齢者が相続した実家を売却して施設入所資金に充てる
- 本人が認知症で判断能力が足りず、売却契約を結べない。
- 家族が後見申立てし、選任された後見人が裁判所許可のもとで売却し、売却資金を介護施設の入所費に充当。
- 後見人が賃貸を管理し、家賃収入で被後見人の生活費を確保
- 被相続人から受け継いだアパートを被後見人が所有。
- 後見人が契約更新や修繕管理を行い、家賃収入を被後見人の医療費・介護費に充てる。
- 任意後見契約でスムーズな引き継ぎ
- 事前に「任意後見契約」を結んでいた高齢オーナーが、判断能力低下後に想定した後見人が登場し、工場や不動産の管理を継続。
弁護士に相談するメリット
- 適切な後見類型の選択
「後見・保佐・補助」どれが妥当か、あるいは「任意後見」が良いか、弁護士が法的観点からアドバイス。財産規模や家族構成なども踏まえた最適策を提示。 - 後見人が関わる不動産売買の手続き
不動産売却・賃貸には裁判所の許可申請が必要で、契約書や申立書類が複雑。弁護士が書類作成や交渉を代行することで、安全に手続きを進められる。 - 相続・遺留分問題との調整
後見制度を利用しているケースでは、他の相続人との意見対立や遺留分請求が絡むことがある。弁護士が総合的に紛争リスクを判断し、協議をまとめる。 - 弁護士法人長瀬総合法律事務所の強み
当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、成年後見制度を活用した不動産管理や相続手続きの多くの事例を解決してきました。後見申立てから不動産処分、報告書作成までサポート可能です。
まとめ
- 成年後見制度
判断能力が不十分な方の財産を保護するため、後見人が管理・代理を行う仕組み。 - 不動産管理
後見人が被後見人の不動産を売却・賃貸するには原則として家庭裁判所の許可が必要。 - 任意後見
事前に契約を結ぶ方式で、判断能力があるうちに自分で後見人を選べるメリットがある。 - 相続での活用
認知症の高齢者が不動産を相続した場合、後見人が手続き代理し、売却や賃貸収益を医療・介護費に充当可能。 - 弁護士との連携
後見人による不動産処分、相続紛争、遺留分など法的に複雑な案件でも、弁護士が調整や手続きを支援することで安全性・迅速性が高まる。
高齢化が進む中、成年後見制度の需要はますます増大しています。判断能力が低下した人が不動産を相続する可能性が高まる現代において、お早めに制度を理解し、家族や専門家と連携して財産管理を計画することが重要です。
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