はじめに
ネット上の口コミやレビューは、企業や店舗の評判を大きく左右する重要な情報源です。しかし、中には「根拠のない誹謗中傷」や「明らかに事実誤認の書き込み」が含まれることもあり、それらが放置されると大きな被害につながりかねません。そこで必要になるのが削除依頼という手段ですが、どのように依頼すれば削除に応じてもらえるのか、具体的な手続きはどうなっているのか、わかりづらい部分も多いのではないでしょうか。
本稿では、口コミサイト・レビューサイトに対して削除依頼を行う際の一般的な手順と、法的根拠となる「プロバイダ責任制限法」について解説します。削除依頼が成功しやすくなるためのポイントや、どのような準備をすればスムーズに進められるかも取り上げますので、ぜひ参考になれば幸いです。
Q&A
Q1:なぜ口コミサイトやレビューサイトに削除依頼を出す必要があるのですか?
中には誹謗中傷や事実無根の情報が書き込まれており、それを放置すると企業・店舗の評判や売上に大きなダメージを与える可能性があるためです。速やかに削除対応を行うことで、被害の拡大を抑えられます。
Q2:削除依頼を出しても、サイト運営会社がすぐに対応してくれるとは限らないのでは?
サイト独自のガイドラインに違反していないと判断されたり、「正当なクレームの範囲内」と見なされた場合、削除を拒否されることもあります。明らかに違法性がある、または名誉毀損などの要件を満たす場合は、法的な根拠を示して交渉すると対応してもらえる可能性が高まります。
Q3:削除依頼する際に必要な書面や情報は何ですか?
一般的には、「問題となる投稿のURLやスクリーンショット」「投稿がいつ書き込まれたか」「投稿内容のどの部分が事実と異なるか、または違法であるかを示す理由」「削除を求める理由」などを整理しておく必要があります。弁護士に相談すると、適切な書面作成をサポートしてもらえます。
Q4:匿名の投稿者を特定したい場合は、削除依頼だけでなく他の手続きを行う必要がありますか?
はい、投稿者を特定したい場合には「プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求」を行う必要があります。まずはサイト管理者やプロバイダに削除を依頼したうえで、必要に応じて別途裁判手続きを進めるケースが多いです。
Q5:削除依頼を出すタイミングはいつが適切でしょうか?
基本的には「有害な投稿を発見したら、なるべく早い段階で」出すことが望ましいです。放置すればするほど情報が拡散され、被害が大きくなる可能性があります。証拠をきちんと確保したうえで、迅速に対応しましょう。
解説
削除依頼の流れとポイント
- 投稿内容の確認・証拠保全
- まず問題となる口コミのURLや投稿日時、スクリーンショットなどを確保し、誹謗中傷や事実無根の情報がどこに該当するか明確にする。
- 必要に応じて印刷やPDF保存など、証拠として後で提出できる形を用意しておく。
- サイトのガイドラインや削除ポリシーを確認
- 多くの口コミサイト・レビューサイトには「投稿ガイドライン」や「利用規約」が存在する。
- 誹謗中傷や名誉毀損にあたる書き込みは禁止されているケースが多いので、規約違反を指摘できれば削除に応じてもらいやすい。
- 削除依頼を出す
- サイト運営会社の専用フォームや問い合わせ窓口から依頼を行う。
- 具体的な投稿URLと、削除を求める理由(どの部分がどのように名誉や信用を毀損しているのか)を明確に伝える。
- 法的根拠や「プロバイダ責任制限法に基づき要請している」旨を示すと効果的。
- 運営会社の判断・対応
- 運営会社が削除要否を検討。利用規約や社内判断により「削除」「非表示」「対応不可」といった結論に至る。
- もし削除されない場合は、追加で書面を送付したり、仮処分など裁判手続きを検討する。
- 再発防止・モニタリングの継続
削除依頼後も、同様の悪質な投稿が新たに発生する可能性があるため、定期的にモニタリングを行う。
プロバイダ責任制限法の概要
- 法律の目的
ネット上の投稿について、サイト運営者(プロバイダ)にどこまで責任を負わせるのかを定めた法律。投稿が違法・有害であるとき、被害者が運営会社に対して削除依頼や発信者情報開示を請求できるルールを整備している。 - 削除依頼の根拠
「権利侵害情報が掲載されている場合、サービス提供者がこれを削除しても損害賠償責任を負わない」ことを定める。つまり、運営会社が適切に投稿を削除するための免責規定があり、被害者としてはこの法律を根拠に「削除してほしい」と依頼しやすくなる。 - 発信者情報開示請求
削除だけでなく、投稿者を特定する手段を提供する規定も含まれる。誹謗中傷が深刻な場合、投稿者に損害賠償を求めるために必要な手続きとなる。
削除依頼が通らない場合の対処法
- 追加交渉・異議申立て
サイト運営会社から「ガイドライン違反とまではいえない」と判断されても、追加証拠や法的観点から再度検討を要請することで対応が変わる場合がある。 - 仮処分の申し立て
- 裁判所に「掲載情報を差し止める仮処分」を申し立て、強制的に削除を実現する手段。
- 弁護士に依頼すると書面作成や手続きがスムーズに進む。
- 発信者情報開示請求 → 損害賠償訴訟
投稿内容が名誉毀損等に該当すると判断される場合、加害者に対して損害賠償を請求するため、投稿者を特定する手続きを並行して行う。 - 専門家(弁護士)への相談
削除依頼だけでは解決できない、もしくは運営会社との交渉が難航する場合、弁護士を通じて法的アプローチを検討することが望ましい。
削除依頼成功率を高めるポイント
- 具体的な証拠と理由
「どの記載がどのように事実に反するか」「どのような被害が発生しているか」を論理的かつ具体的に示す。 - 法的根拠を示す
プロバイダ責任制限法を含む関連法規を参照し、名誉毀損や侮辱、業務妨害に該当する可能性がある旨を明確に伝える。 - 冷静な対応
感情的な表現や過剰な要求は逆効果。運営会社も慎重に判断する立場であるため、冷静かつ理性的に主張する姿勢が大切。
弁護士に相談するメリット
法的観点からの削除依頼書面の作成
弁護士であれば、「どのような法的観点で、その投稿が違法または権利侵害にあたるのか」を的確に整理し、説得力の高い文書を作成できます。サイト運営会社が「違法性がある」と判断しやすい根拠を示すことで、スピーディーに削除対応してもらえる可能性が高まります。
仮処分・訴訟手続きの代行
削除依頼が拒否された場合、仮処分や訴訟に移行することがあります。これらの手続きには専門的な知識と経験が欠かせません。弁護士を通じて行うことで、書類不備や手続きのミスを防ぎ、短期間での解決を目指せます。
発信者情報開示請求も一括対応
誹謗中傷の書き込みが深刻な場合、投稿者に対して損害賠償を請求するための「発信者情報開示請求」も必要となるケースがあります。弁護士は削除依頼だけでなく、この開示手続きも一貫してサポートできます。
トラブル拡大のリスクを回避
企業や店舗が自力で運営会社と交渉すると、やり取りが感情的になったり、法的論点が曖昧なまま突き進んでしまうリスクもあります。弁護士が代理人となることで、冷静かつ適切な交渉を行い、トラブルの拡大を回避することが可能です。
まとめ
- 削除依頼の目的
誹謗中傷や事実誤認の情報が拡散するのを防ぎ、企業・店舗の信用や売上への悪影響を最小限に抑える。 - 手順のポイント
- 証拠保全(URL、スクリーンショットなど)
- サイトのガイドライン確認
- 削除依頼の送付(具体的な理由と法的根拠を示す)
- 運営会社の判断
- 必要に応じた追加対応(仮処分、発信者情報開示請求など)
- プロバイダ責任制限法の活用
-
- サイト運営会社に削除を促す法的根拠
- 発信者情報開示請求にも対応
- 弁護士への相談の意義
-
- 専門的な書面作成で成功率アップ
- 仮処分・訴訟手続きの代理
- トラブル拡大のリスク回避
不当な書き込みや誹謗中傷は、放置しておくと企業や店舗にとって深刻な被害へと発展しかねません。いち早く対処することで被害を最小限にとどめ、安心してビジネスを続けるためにも、適切な削除依頼の手順を把握しておくことが大切です。もし対応方法に迷ったり、削除依頼に応じてもらえない場合は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。
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