はじめに

不動産取引や境界確定の際、「公図」と「地積測量図」という言葉をよく目にします。どちらも法務局が管理する地図関係の資料ですが、その内容や精度、作成の目的が異なります。公図と地積測量図の違いを理解しておくことは、境界トラブルや登記申請をスムーズに進めるうえで重要です。

本稿では、公図と地積測量図それぞれの特徴や使い方、注意点を解説します。

Q&A

Q1.「公図」とは何でしょうか?

公図(こうず)とは、法務局が管理する土地の区画を示す地図のことです。元は旧土地台帳附属地図などがベースとなっており、境界線や地番の配置を概略的に示しています。ただし、古い公図は測量精度が低く、現況と大きく食い違うことがあります。

Q2.「地積測量図」とは何ですか?

地積測量図は、土地家屋調査士などが分筆登記や地積更正登記を行う際に正確な測量をした結果を図面化したものです。測量点や座標、測線の長さなどが詳細に記載されており、公図と比べると精度が高いことが特徴です。法務局に登記申請の添付書類として提出され、認められると登記簿に備え付けられます。

Q3.公図と地積測量図はどのように取得できますか?

どちらも法務局で閲覧・取得が可能です。以下の方法があります。

  • 法務局窓口
    地番を指定して請求し、閲覧または写しを取得。
  • オンライン(登記情報提供サービス)
    公図や測量図がデータ化されている場合、インターネットで閲覧できる。

ただし、オンライン公開されていない測量図も多いので、現地法務局で確認が必要な場合があります。

Q4.どちらを使えば境界がわかるのでしょうか?

一般的には、地積測量図のほうが精度が高いとされています。公図は単なる概略図に過ぎない場合が多く、境界の正確な位置を知るには不十分なことがあります。あくまでも公図は「参考」程度に考え、実際には測量士や土地家屋調査士が作成した地積測量図をベースに境界確定を行うケースが多いといえます。

Q5.公図と現況が大きく異なる場合はどうすればいいでしょうか?

公図が古い測量に基づいているため、現実の境界や地形と合わないことがあります。こういう場合は、地積更正登記などを検討し、正確な測量図を作成して法務局に登記し直す必要があります。隣地所有者との協議や筆界特定制度の活用なども合わせて検討するのが望ましいです。

解説

公図の特徴・注意点

  1. 作成の由来
    公図は、明治期以降の地租改正や旧土地台帳で作成された地図がベースになっており、測量精度があまり高くないことが少なくありません。また、縮尺や座標参照が不正確なため、現況とのずれが生じることもあります。
  2. 閲覧方法
    法務局で「公図」を請求し、地番を基にして該当箇所の写しを取得します。オンラインで取得できる場合も増えていますが、古い地図はデジタル化されていないこともあります。
  3. 役割
    地番の配置を大まかに確認する。

    • 筆界の概略を把握する。
    • 登記情報で把握しきれない土地の繋がりを俯瞰する。
    • あくまで参考資料として利用し、境界確定などの正確な検証には別途測量や地積測量図が必要です。

地積測量図の特徴・注意点

  1. 作成目的
    地積測量図は、不動産登記法に基づき、分筆登記や地積更正登記で精度の高い測量が行われた際に作成されます。具体的には、土地家屋調査士が現地測量を行い、必要な境界確認を経て図面を作成する。
  2. 記載内容
    地積測量図には、測量基準点や境界点の座標や寸法、測線の長さなどが詳しく表示され、縮尺や方位なども明確に示されます。
    記載された座標等により、隣地との境界位置を客観的に確認しやすいといえます。
  3. 法務局備付
    地積測量図が法務局に備え付けられている場合は、登記簿や公図とあわせて閲覧が可能です。土地家屋調査士が提出した図面が審査を通過しているため、比較的信頼性が高いと考えられます。

実務での使い分け

  • 境界紛争や売買交渉の初期調査
    • 公図を閲覧し、大まかな区画や地番を確認する。
    • 必要に応じて登記情報提供サービスで土地の情報を取得し、所有者や権利関係を把握する。
  • 正確な境界確定、測量が必要
    • 地積測量図がある場合、それを入手し現地との整合性を確認。
    • なければ土地家屋調査士に依頼し、新たに測量図を作成してもらう。
    • 隣地所有者と協議し、合意が得られれば境界確認書を作成。
  • 登記申請への活用
    • 分筆や地積更正登記では、地積測量図が必須。
    • 公図だけでは精度が足りないため、実測結果で地積を確定させ、法務局に更新を申請する。

弁護士に相談するメリット

  1. 紛争リスクの軽減
    公図と地積測量図にギャップがある際、隣地所有者が納得しない可能性があります。弁護士が法的視点から調整し、境界線に関する合意をスムーズに導くことが期待できます。
  2. 手続き全体の調整
    弁護士が、測量士・土地家屋調査士や行政機関と連携し、境界確定や登記手続きをサポート。複数の専門家を統括し、的確な進行管理を行うことで効率的にトラブルを回避できます。
  3. 筆界特定制度・裁判対応
    合意形成が難しい場合、筆界特定制度や裁判手続きを踏むことになります。弁護士は書類作成や主張立証を担当し、最終的に法的拘束力ある解決を目指せます。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所のノウハウ
    当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、多数の境界問題・地積更正案件を手掛けた実績があり、公図や地積測量図を活用した紛争解決に精通しています。困難な事例でも、測量士との連携により最善策をご提案します。

まとめ

  • 公図
    おおまかな地番・区画を示す地図。精度が低い場合が多く、境界の確定には向かない。
  • 地積測量図
    分筆・地積更正登記の際に作成される高精度な測量図。座標や測線の長さが明記されており、境界紛争で重要な資料となる。
  • 使い分け
    初期調査には公図も参考になるが、正確な境界を把握するには地積測量図や新たな測量が必要。
  • 法的対応
    紛争や登記手続きには弁護士・土地家屋調査士のサポートを得ると安全。
  • 紛争防止
    公図と地積測量図の違いを理解し、必要なら測量士に依頼して現況と登記情報のズレを軽減することがポイント。

公図はあくまでも「概略地図」であり、地積測量図が公図よりも精度の高い情報を示すのが一般的です。境界や面積が問題となる際は、地積測量図を基に現地の実測を行い、法務局に正しい情報を登記することで、安心して土地を扱うことができるようになります。


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