はじめに
従業員が病気を理由に解雇されることについて、企業経営者の方々から多くのご相談をいただきます。従業員の長期休養や職務遂行が難しくなった場合、解雇は避けられない措置と思われがちですが、労働法の観点からは注意が必要です。本稿では、病気を理由に解雇できる場合や、その際の注意点について解説します。
Q&A
Q:病気の従業員を解雇できるかどうか迷っています。法的に問題はないでしょうか?
A:病気を理由とした解雇は慎重に判断する必要があります。従業員が病気により職務を果たせない場合、一定の条件を満たせば解雇も可能です。ただし、業務外で発生した病気や業務に関連する病気かにより対応が異なり、適切な手続きを踏まなければ後のトラブルを招く恐れがあります。また、就業規則の内容や解雇前の配慮義務についても重要です。本稿では、解雇できるケースとできないケースを解説します。
病気を理由に解雇できるケース
1.業務と関係のない病気の場合
従業員の病気が業務に関連しない場合(私傷病)、解雇は可能ですが、事前に確認すべき事項があります。主に、就業規則に休職制度が設けられているか、および病気による解雇が規定されているかがポイントとなります。
- 休職期間が終了しても復職が難しい場合、規定に基づき解雇が認められることがありますが、解雇予告や手続きが必要です。
2.業務が原因の病気の場合
業務に関連して発生した病気では、労働基準法第19条により、療養中およびその後30日間は解雇が禁止されています。ただし、労働基準法第81条に基づく「打切補償」の支払いを行えば、解雇が認められる場合もあります。
病気を理由に解雇できないケース
以下のような場合、病気を理由とした解雇は無効とされる可能性が高いです。
- 休職制度があるにもかかわらず、適用せずに解雇した場合
- 業務に関連した病気の場合(療養期間中およびその後30日間の解雇制限)
- 解雇の理由や手続きが不適切な場合
労働契約法第16条に基づき、解雇が「合理的理由を欠く」または「社会通念上相当でない」と認められる場合、無効とされる可能性があります。
弁護士に相談するメリット
1.法的リスクの回避
弁護士に相談することで、解雇が法的に正当かどうか、適切な手続きを踏んでいるか確認できます。後に不当解雇として争われないための予防策を講じることができます。
2.適切な対応の指導
病気の従業員に対する対応は、感情的になりがちですが、弁護士のアドバイスにより、冷静かつ適切な対応が可能です。特に、就業規則の整備や解雇理由の適法性についてもサポートが受けられます。
3.訴訟対応の準備
万が一、解雇を巡ってトラブルとなった場合でも、弁護士が対応にあたることで、裁判や調停への準備がスムーズに進められます。
まとめ
病気を理由とした解雇は、ケースバイケースであり、慎重に進める必要があります。就業規則や法的要件を満たし、適切な手続きを踏むことで、解雇が認められる場合もありますが、不当な解雇とされないためにも、法的な助言を受けることが重要です。
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