解説動画
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- 00:00:ごあいさつ
- 00:43:本動画でお伝えしたいこと
- 00:58:リーガルメディアのご案内
- 01:14:相談事例
- 02:18:契約とは
- 06:06:契約書とは
- 07:36:裁判実務上の取り扱い
- 09:00:参考判例:東京地裁平成17年3月28日
- 11:50:まとめ
- 12:33:弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート内容
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質問
当社では、これまで大口取引先との業務委託契約に際して、電話でのやり取りや発注書でのやり取りしかしておらず、いわゆる「業務委託契約書」というタイトルの契約書を交わしたことがありません。
先日、先方から突然「契約書がない以上、御社とは有効な契約は成立していないので、業務委託に関する費用を支払う義務はない」と言われてしまいましたが、たとえ契約書がなくても契約は成立していますよね?
回答
民法上、原則として契約書を作成しなくても契約は成立しますので、ご質問のケースでも契約の成立は否定されません。
もっとも、裁判実務上、契約書がなければ契約の成立が認められない可能性があり、また、当事者の合意内容を明確にして将来の紛争を予防する観点からも、契約書を作成しておくことをお勧めします。
解説
契約とは
「契約」そのものの定義は民法上規定されていませんが、一般に、
- ①二人以上の当事者の意思表示が、
- ② 相対立する立場で相互の意思を表示し、
- ③ これらの意思を一致させ、
- ④ 当事者間において権利・義務を発生させる合意(単なる約束との違い)
をいいます。
保証契約等を除き、契約の成立要件として書面の作成は要求されておりませんので、メールやFAXはもちろん、口頭で合意した場合であっても原則として契約は有効に成立します(諾成契約)。
たとえば、AさんがBさんに対してパソコンを「売る」、BさんはAさんからパソコンを「買う」旨の合意を電話でした場合、AさんはBさんに対してパソコンを引き渡す義務を、BさんはAさんに対してパソコン代金を支払う義務を負うこととなり、「二人以上の当事者の意思表示が、相対立する立場で相互の意思を表示し、これらの意思を一致させ、当事者間において権利・義務を発生させる合意」として、とくに書面を作成していなかったとしても、A・B間でパソコンの売買契約が成立します。
契約書とは
前述のとおり、基本的に「契約」自体は契約「書」を作成しなくても有効に成立します。それでは、なぜ「契約書」を作成する必要があるのでしょうか。
「契約書」とは、文字通り、契約の内容を書面にしたものですが、契約書を作成する目的とは、概要以下のとおり整理することができます。
- ① 当事者間の合意内容等を明確にし、将来の紛争を予防する
- ② 将来の訴訟における証拠として用意する
- ③ 当事者間におけるリスク配分を合意する(免責条項や信用リスクに関する条項の規定等)
裁判実務上の取扱い
もっとも、民法上、口頭の合意であって契約の成立が認められるものとされていますが、日本の裁判実務上、契約書がない状況では、たとえ諸般の事情が考慮されても契約の成立が認められる可能性は低いため、紛争を予防する観点からは、書面、少なくともメール等によるやり取りを残しておくことが重要となります。
たとえば、システム開発会社(ベンダ。原告)が、システムの導入を検討し、ベンダを含む3社に対して見積書の提出を求め、主にベンダと交渉を継続してきたユーザ(被告)に対して、「契約書はないものの、①キックオフミーティング議事録にユーザが押印しており、また、②有償作業へ移行したことをユーザは了承していたのであるから、口頭であっても請負契約は成立しており、システム導入を断念するのであればこれまでにかかった費用合計1935万円を支払え」と主張して損害賠償請求を求めた事案において、裁判所は、被告ユーザの主張を全面的に認め、「①議題が『キックオフミーティング』となっているだけで、単なる打ち合わせであること、②ユーザから契約締結の3条件を提示しているものの、当ミーティング時点になってベンダはその条件が満たされたのか確認しなかった」ことを理由に、請負契約は成立していなかったとして、原告ベンダの請求を棄却しています。(東京地裁平成17年3月28日)
この裁判例からも明らかなとおり、当事者の一方にとってはたとえ契約書そのものは存在しなくても、それまでの交渉の経緯等から契約は有効に成立していると考えていても、裁判で争いになった場合、必ずしも裁判所がそのとおりに認定してくれるわけではありませんので、重要な契約ほど契約書を取り交わすようことが大切です。
以上のとおり、民法上、原則として契約書を作成しなくても契約書を作成しなくても契約の成立自体は認められますが、将来の紛争防止、裁判において契約成立を否定されるリスクを軽減する観点からは、たとえ長年取引を継続してきた大口取引先との間であっても、契約書を取り交わすことをお勧めします。
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