種類株式—単元株式数の異動と複数議決権株式

【質問】

当社では、自社に友好的な株主に対しては1株で1議決権を有する株式を発行するとともに、それ以外の株主に対しては議決権の保有割合を薄めるべく、10株で1議決権の株式を発行することを検討しています。

このように、単元株式数だけを変えた2種類の種類株式を発行することは可能でしょうか。

また、単元株式数だけを変えた種類株式を発行できないのであれば、たとえば、剰余金の配当について優劣を規定した2種類の種類株式を発行した上で、一方の単元株式数を1とし、他方を10とする種類株式を発行することは可能でしょうか。

 

【回答】

会社法上、株式の権利内容について異なる定めを設けることができる事項は限定列挙されており、限定列挙されていない事項である単元株式数のみ異なる種類株式を発行することはできません。

これに対して、剰余金の配当について優劣のある種類株式を発行しつつ、両者で単元株式数を変えることによって、事実上、複数議決権株式を発行することは認められています。

ただし、かかる株式を発行する必要性を合理的に説明できない場合は、当該株主による議決権の行使は、株主総会決議取消事由該当性において一事情として考慮される可能性があります。

 

【解説】

1. 種類株式として定めうる権利内容

種類株式とは、会社法の定める一定の事項について権利内容の異なる株式として発行が認められた株式をいいます(会社法107条、108条)。

当該事項については、会社法上、一定の事項に限定されており(会社法108条1項各号)、明文の規定がある場合(会社法164条1項、322条2項等)を除いて、これら以外の事項について権利内容の異なる株式は認められていません

会社法上規定されている一定の事項とは、以下のとおりです。

優先株式・劣後株式

剰余金の配当又は残余財産の分配について異なる定めをしたもの(会社法108条1項1号・2号)

議決権制限株式

株主総会において議決権を行使することができる事項について異なる定めをしたもの(会社法108条1項3号)

譲渡制限種類株式

譲渡による株式の取得について会社の承認を要するもの(会社法108条1項4号)

取得請求権付種類株式

株主が会社に対してその取得を請求することができるもの(会社法108条1項5号)

取得条項付種類株式

会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができるもの(会社法108条1項6号)

全部取得条項付種類株式

会社が株主総会の特別決議によって当該種類株式全部を取得することができるもの(会社法108条1項7号)

拒否権付種類株式

株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、この種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(会社法108条1項8号)

役員選任権付種類株式

この種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任することができるもの(会社法108条1項9号)

したがって、単元株式数のみ異なる内容の株式を種類株式として発行することは、上記事項に該当しないため、認められないこととなります。

 

2. 複数議決権株式

複数議決権株式とは、1株に複数の議決権を付与するといった定め方をされた株式をいいます。

もっとも、前述のとおり、単元株式数のみ異なる内容の株式を種類株式として発行することは会社法上認められていません。

また、このような株式の発行を認めると、企業価値に比例する財産的権利の保有割合の低いものが会社の支配権を獲得することが可能となってしまうことから、複数議決権株式の発行は否定されています

 

3. 疑似複数議決権株式

もっとも、種類株式発行会社が単元株制度を採用する場合、単元の数は種類株式ごとに定めることができるため(会社法188条3項)、権利内容にほとんど差のない2種類の種類株式を発行した上で、そのうちの一方の単元株式数を1とし、他方を10とすることによって、事実上、複数議決権株式を発行したのと同様の結果を達成することが可能となります(疑似複数議決権株式)。

そして、会社法の解釈として、このような疑似複数議決権株式も適法と解されています。

ただし、かかる株式を発行する必要性を合理的に説明できない場合は、当該株主による議決権の行使は、株主総会決議取消事由該当性において考慮されるべき、と考えられていることには注意が必要です。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

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