ポイント

  1. 契約書作成日≠契約書締結日
  2. バックデートを行うこともあるが、契約の効力発生日には注意を要する
  3. 契約書の効力発生時期に関する条項を活用することも検討する

契約書作成日の意味

契約書作成日は、実際に契約書を作成した日を明らかにするために記載されることが通常です。

契約書作成日と契約締結日が同日である場合は、契約の内容を構成する場合もあります(たとえば、契約の有効期間として、「本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とする。」旨規定する場合など)。

ですが、後述のとおり、契約書作成日と、契約締結日が異なる場合も実務上は起こり得ます。例えば、契約書を作成した日は2020年1月1日だとしても、実際に当事者間で契約書を締結した日は2020年2月1日になってしまうようなケースです。

このような問題が生じてしまう背景には、契約書の成立時期をいつとみるかで、解釈が分かれてしまうことにあります。契約書の成立時期をいつとみるかについては、概ね以下の3つの場合が考えられます。

  • ① 契約書の作成日付を記入した日にちに契約が成立したとする考え方
  • ② 当事者間で事実上合意が成立したと考えられる日にちとする考え方(書面上には出てこない日にちになる場合もあります)
  • ③ 当事者それぞれの社内承認完了日のうち、もっとも遅い日とする考え方

バックデートの可否

契約の方式自由の原則(改正民法522条2項)の下、契約は口頭の合意でも成立するため、実際の契約締結日よりも後で契約書が作成されることは少なくありません。こうした場合に、契約書の作成日や効力発生日を過去に遡らせること(バックデート)は、実務上しばしば行われています。

もっとも、口頭での合意に基づき既に取引はスタートしているにもかかわらず、契約書の作成日を取引の実態に合わせて遡らせてしまうと、後日紛争になった場合に、口頭での合意当時、契約書締結権者にその権限があったのか、契約書に規定されている内容と取引の実態にズレがあったのではないか等が問題となる可能性があります。

そこで、基本的には、契約作成日はあくまで全当事者が実際に記名・捺印した日として、契約の効力発生日(契約の有効期間の開始日)を過去の日に遡らせるべきといえます。

契約書の効力発生時期に関する条項の設定

また、契約書作成日と契約書締結日が異なる場合には、契約書に基づく法的効力の発生時期をいずれの時点とするかで悩んでしまうこともあります。

このような場合には、契約書の中に、契約書に基づく法的効力の発生時期を明記した条項を盛り込むことが考えられます。

一例を上げれば、以下のような条項となります。

(効力発生期間)

第●条 本契約は、契約締結日にかかわらず、●年●月●日より遡及的に適用するものとする。

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