ポイント

  1. コンプライアンスリスクの発生原因は、ガバナンス面、マネジメント面、プロセス面に分類される
  2. コンプライアンスリスクを防止するためには、組織体制を多面的に見直す必要がある

コンプライアンスリスクの発生原因やその影響は多面化してきている一方、コンプライアンスリスクの予防策も多面的な視点から取り組むことが求められます。

また、コンプライアンスリスクの予防策は、企業の法務部など、一部門のみで対策を講じれば足りるというものではなく、組織全体で取り組まなければ効果を挙げることができないものです。

公的規格又は顧客仕様を満たさない製品等(不適合製品)について検査結果の改ざん又はねつ造等を行い、基準を満たすかのようにして顧客に出荷又は提供する行為を繰り返していた大手鉄鋼メーカーの事例では、不祥事が起きた原因と、その再発防止策を以下のように公表しています。

【不適切行為の原因】

  1. 収益偏重の経営と不十分な組織体制
  2. バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
  3. 本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続

【本件不適切行為に対する再発防止策】

  1. ガバナンス面
    • (1)グループ企業理念の浸透
    • (2)取締役会のあり方
    • (3)リスク管理体制の見直し
    • (4)組織の閉鎖性の改善
    • (5)品質保証体制の見直し
  2. マネジメント面
    • (1)品質マネジメントの対策
    • (2)品質保証人材の教育・育成
  3. プロセス面
    • (1)品質管理プロセスの見直し
    • (2)新規受注時の承認プロセスの見直し
    • (3)製造プロセス変更時の承認プロセスの見直し

多くのコンプライアンスリスク発生事例では、その原因と再発防止策を検討すると、上記の事例のように①ガバナンス面、②マネジメント面、③プロセス面、の3つで改善を試みる必要があると整理することができます。これら3つの視点でコンプライアンスリスクの再発防止策を講じるためには、組織全体で改善に取り組む必要があります。

したがって、コンプライアンスリスクの予防策を講じるためには、一部門の取り組みだけでは足りず、組織全体で取り組む必要があるといえます。

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