ポイント

  1. コンプライアンスリスクに伴う責任は、法人の責任と個人の責任に大別することができる
  2. コンプライアンスリスクに伴う責任は、①民事責任、②刑事責任、③行政責任(法人)/労務責任(個人)、④社会的責任、に分類することができる
  3. コンプライアンスリスクに伴う責任の分類及び大小を整理することで、適切なコンプライアンスリスクマネジメントを行うことができる

コンプライアンスリスクに伴う法人の責任

コンプライアンスリスクに伴う法人の責任

コンプライアンスリスクが生じた場合、法人に問われる責任は、大きく次の4つに分類することができます。

(1)民事責任

民事責任とは、金銭的な賠償(損害賠償責任や債務不履行責任)のほか、名誉毀損行為に対する謝罪広告の掲載など、信用回復措置をとることが典型的なものとなります。

取引額が高額なケースや被害が甚大なケースでは、賠償すべき額も高額となるため、一つの不祥事で企業の存続自体が左右されることも起こりえます。

(2)刑事責任

企業であっても、他社の営業秘密を不正に入手した場合には不正競争防止法違反が問題となります。また、従業員に対する労務管理に問題があり、従業員に対する賃金が未払いであったり、過労死事件が発生したりした場合には、悪質な労基法違反事例として刑事責任を問われる場合も起こりえます。

(3)行政責任

企業活動は、業種ごとにさまざまな行政規制の対象となっています。企業活動が行政規制に抵触した場合には、是正勧告や、悪質な違反事例の場合には業務停止処分などの行政責任を問われることも起こりえます。

(4)社会的責任

既に述べたとおり、企業はCSRを問われる時代となっています。悪質な違反行為を行った場合には、規制当局から企業名の公表措置をとられるほか、SNSなどで一般人によって企業名や違反事例の概要をインターネット上に拡散されることも起こりえます(いわゆる「ブラック企業」と揶揄される可能性もあります)。

コンプライアンスリスクに伴う個人の責任

コンプライアンスリスクに伴う個人の責任

企業だけでなく、個人であっても、不祥事に関与した場合にはコンプライアンスリスクに晒されることになります。

コンプライアンスリスクが生じた場合、個人に問われる責任は、大きく次の4つに分類されます。

(1)民事責任

民事責任は、個人であっても企業の場合と同様に発生します。

なお、業務上に起こした不祥事(業務上横領等)である場合には、企業に対しても損害賠償責任を負うことがあります。

(2)刑事責任

個人が私生活において窃盗や傷害、盗撮などを働いた場合には、当然に刑事責任を問われることになります。

また、個人が業務に伴い、行き過ぎたパワーハラスメントや、セクシャルハラスメントをした場合、傷害罪や強制わいせつ罪などに問われることもあります。

(3)労務責任

企業と異なり、個人は勤務先企業との間で雇用契約を締結していることから、企業の設定する労務管理(就業規則や社内規程等)に服することになります。個人が企業の就業規則や社内規程等で定める労務管理に違反した場合には、懲戒処分や人事評価での消極的評価対象とされることになります。

(4)社会的責任

企業同様、悪質なコンプライアンスリスクを犯した場合には、個人も氏名等を公表され、社会的信用や地位を失うおそれがあります。

また、個人の氏名等が公表されると、インターネット上で拡散されることも起こりえます。

コンプライアンスリスクに伴う責任とリスクマネジメント

このように、コンプライアンスリスクに伴う法人及び個人の責任は、様々な種類に分類されることになります。

そして、様々な種類の責任の内、特に回避すべき責任は、法人や個人の社会的地位や不祥事の内容、各責任の重大性等によって異なってくることになります。

例えば、非常に知名度の高い企業であれば、民事責任(損害賠償請求)を追及されたとしても、それほど高額でなければ、企業の存続にはほとんど影響しないということもあるかもしれません。しかしながら、非常に知名度の高い企業であれば、損害賠償額が小さかったとしても、企業の社会的信用が毀損されれば、ブランド価値を大きく損なってしまうことになりかねないために、社会的責任はなんとしてでも回避したいということも考えられます。

企業や個人のそれぞれの置かれた状況によって、特に重大な影響を及ぼす責任の種類や、その対策も異なってくることを理解しておく必要があります。

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