ポイント

  1. コンプライアンスリスクは、年々増加傾向にある
  2. コンプライアンスリスクが増加する背景には、4つの事情がある
  3. コンプライアンスリスクには、継続的な対策が必要である

コンプライアンスの現状

昨今では大企業であっても不祥事を起こしてしまい、コンプライアンス違反が叫ばれることが珍しくありません。このように、コンプライアンスが注目されるようになった背景には、図表1-7のように以下の4つの事情があると考えられます。

  • ① CSR(企業の社会的責任)の重視
  • ② 業績拡大・短期的利益の優先
  • ③ 企業人の意識の閉鎖性
  • ④ 法律解釈の変遷

(1)CSR(企業の社会的責任)の重視

コンプライアンスが企業に求められるようになった背景の1つとして、CSRが重視されるようになってきたことが挙げられます。

企業は、利益を追求することが求められる組織的集団ですが、一企業の有する社会的影響力が増大することにともなって、企業に求められる社会的な責任も重視されるようになってきています。

たとえば、メーカー等が商品の製造過程において、違法な労働実態を放置していたり、海外において児童労働を行ったりしている場合には、企業の人権軽視の姿勢が咎められることも起こりえます。

このように、企業の社会的責任を求める意識の高まりの中で、企業に対するコンプライアンスの要求も高まってきているといえます。

(2)業績拡大・短期的利益の優先

一方で、やはり企業は事業活動を通じて業績を拡大するとともに、利益を追求することが求められます。

近時では、会社は株主のものであるという主張も強くなり、ともすれば短期的利益を優先することが求められることもあります。

ときには無理な業績拡大や短期的利益の追求の要求に応えるために、十分な検証もされないままに事業活動が展開され、コンプライアンスリスクを犯してしまうということも起こりえます。

(3)企業人の意識の閉鎖性

コンプライアンスリスクは、一企業独自の風土のもとで起きてしまうことが珍しくありません。社会的・道徳的にみれば問題がある行為ではと思ってはいても、企業にとって利益が上がるのであればよいのではないか、さらには当該部署にとってメリットがあるのであればよいのではないかといった閉鎖的な意識によって問題のある事業活動が展開されてしまい、コンプライアンスリスクを犯してしまうということが起こりえます。

(4)法律解釈の変遷

さらに、社会の高度化・複雑化に伴い、法律解釈も変遷を重ねています。たとえば、個人情報保護法なども近時さらなる改正が予定されており、個人情報を管理しなければならない対象企業の範囲も大幅に拡大しています。法律解釈の変遷や法改正を意識していないと、従来コンプライアンスに抵触していない行為が時代の流れとともにコンプライアンスに抵触する行為となってしまい、気付かぬうちにコンプライアンスリスクを犯すことになってしまうということもありうるのです。

コンプライアンスリスクへの対策

このように、コンプライアンスリスクは、年々増加する傾向にあります。

例えば、10年前までは自社の業界内では当たり前のように行われていた慣行が、同業他社の不祥事をきっかけに突然規制対象となってしまい、違法行為と扱われることもあり得ます。

コンプライアンス違反として規制対象へと変わってしまったにもかかわらず、従前どおりの経営を継続していては、コンプライアンス違反として処罰対象となってしまいます。

そのような事態を回避するためにも、自社内外の法務組織では、継続的に業界に対するコンプライアンスリスクがどのようになっているのかを確認し、対策を講じ続ける必要があります。

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