相談事例
新たに友人とともに新規ビジネスを始めようと思い、会社の設立を検討しています。
もっとも、ベンチャービジネスを起業するにあたり、どのような会社形態を採用するのが適しているのか、見当がつきません。ベンチャー企業に適した会社形態と、そのポイントを教えてください。
回答
ベンチャー企業設立に際しては、株式会社形態を採用するケースが一般的ですが、合同会社形態を採用するケースも少なくありません。
株式会社に比べると、社会的知名度に劣るといったデメリットがありますが、合同会社の方が設立時のコストが低額であり、機関設計も自由で決算公告も不要であるなど、設立に際しての負担は軽微であるといった小さくないメリットもあるため、「小さく始めて大きくする」など、スモールビジネスとして運営していく観点からは最適な会社形態といえます。
解説
ベンチャー企業の設立と会社形態
ベンチャー企業等、小規模な事業をスタートする場合、最初期段階では少人数でスタートせざるを得ず、また資金に余裕がないため、できる限り設立コストを抑えつつ、柔軟な機関設計を採用できることが重要となります。
また、仮にビジネスが失敗に終わったとしても、出資者が出資の範囲を超えて無限に責任を追及されることがないよう、出資の範囲でしか責任を負わない(=有限責任)ことが担保されている必要があります。
以上の観点から、ベンチャー企業設立に際しては、有限責任であることが担保されている株式会社形態及び合同会社形態のいずれかが採用されることが一般的です。
株式会社のメリット・デメリット
株式会社は、有限責任の範囲内で出資した出資者等によって構成される会社形態であり、会社の所有者(出資者=株主)と経営者(取締役=社長)は分離していることが特徴の一つです。もっとも、ベンチャーで採用される株式会社では、株主と取締役が同一人物になっていることがほとんどです。
株式会社は、社会的認知度が高く、間接有限責任であるというメリットがある一方、合同会社に比べると設立時に要する登録免許税が高い、機関設計が緩和されたとはいえ会社法上の制約を受ける、役員の任期が決められており定期的に改選が必要になる、決算公告が必要になるといったデメリットがあります。
平成26年度に新たに設立された会社のうち、株式会社形態を採用した会社は約8万6000件であり、合同会社形態を採用した会社が約2万件であることからすると、設立時のコスト負担や機関設計上の負担があるものの、依然として株式会社形態を採用するケースが主流といえます。
【スタートアップと株式会社形態のメリット・デメリット】
メリット | デメリット |
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合同会社のメリット・デメリット
合同会社は、会社法で新たに設立が認められた持分会社の一形態であり、社員は前任、有限責任社員で構成され、社員の責任範囲は出資額に限定されます。
また、定款に定めれば出資金の比率に関係なく利益の分配比率が自由に決められるため、出資比率が小さくても会社への貢献度合いが高かった社員に出資比率以上の利益を配当することが可能です。
このように、合同会社は、設立時のコストが低額で済み、また、運営に際しても機関設計が自由で役員の改選も義務づけられておらず、決算公告も不要である等、融通が利くため、スモールビジネスとして運営していく観点からは最適な会社形態ということができます。
一方で、合同会社にもApple Japanのような大規模な会社もありますが、株式会社に比べて社会的知名度が低い、という大きなデメリットがあります。
ただし、合同会社から株式会社へ会社形態を変更することが可能ですので、まずは合同会社で小さく軽くスタートし、事業が軌道に乗ったら株式会社へ移行するという選択は可能です。
【スタートアップと合同会社形態のメリット・デメリット】
メリット | デメリット |
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株式会社と合同会社の比較
以上を整理し、株式会社形態と合同会社形態のポイントを比較すると以下のとおりです。
株式会社(譲渡制限会社を前提) | 合同会社 | |
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法人格の有無 | あり | あり |
出資者の人数 | 1名以上 | 1名以上 |
出資者の責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
設立コスト | 高い 約26万円 | 低い 約10万円〜12万円 |
機関設計 | 株主総会及び取締役1名以上が必要 | 制約なし |
役員の任期 | あり 改選が必要 | なし 改選不要 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
利益配分 | 株式数に応じて配分 | 定款で自由に定められる |
社会的知名度 | 高い | 低い |
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