相談事例
当社は、正社員だけでなく、契約期間を1年として更新を繰り返している、アルバイトやパートなどの有期契約社員もいます。有期契約社員を雇用する上で注意すべき点があれば教えてください。
解説
有期契約労働者とは
有期契約労働者とは、期間の定めのある雇用契約を締結している労働者をいいます。
有期契約労働者は、短時間・有期契約労働者と、フルタイム・有期契約労働者に分類できます。なお、短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者に比べ短い労働者をいいます。
労働者を契約期間及び労働時間の長短で分類すれば、以下のように整理できます。
期間の定めがない | 期間の定めがある | |
---|---|---|
フルタイム | 雇用期間の定めのないフルタイム労働者 (通常の労働者) |
フルタイム有期契約労働者 |
短時間 | 雇用期間の定めのない短時間労働者 | 短時間有期契約労働者 |
有期契約労働者の雇用における注意点
有期契約労働者は、いわゆる正社員と異なり、雇用契約期間が限定されていることから、その立場は正社員に比べて不安定といえます。
そこで、労働諸法では、有期契約労働者を保護するために様々な規定を設定しています。
有期契約労働者保護の観点から規定されている主な制度は、以下のとおりです。
- 無期転換制度(労働契約法18条)
- 雇い止め規制(労働契約法19条)
- 同一労働同一賃金(パートタイム有期雇用労働法8条、9条)
無期転換制度(労働契約法18条)
なお、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールがあります(労働契約法18条)。
仮に有期契約社員が5年以上にわたって勤務していた場合、社員から会社に対し、無期転換申込権が発生することになるため、雇い止め自体ができなくなる可能性があることに留意が必要です。
したがって、会社として、経営状況次第では雇用契約を解消しようとしても、5年以上にわたって更新が繰り返されていた場合、無期転換申込権が発生し、雇い止めはできない上、解雇しようとしても解雇権濫用法理が適用され、原則として認められないことになります。
雇い止め規制(労働契約法19条)
雇止めとは、期間を定めた労働契約の期間満了に際し、使用者が契約の更新を拒絶することをいいます。雇い止めの留意点については、「雇い止めの留意点」をご参照ください。
同一労働同一賃金(パートタイム有期雇用労働法8条、9条)
「同一労働同一賃金」とは、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることを禁止するという考え方です。
同一労働同一賃金の留意点については、下記のコラム「弁護士が解説 37の裁判例からみる同一労働同一賃金の原則 実務と対策」をご参照ください。
[blogcard url=”https://houmu.nagasesogo.com/media/column/column-1723/”]
ご相談のケースについて
ご相談のケースでは、有期契約労働者が通算で5年間を超えて勤務する場合には、無期転換申込権が発生します。仮に対象従業員が無期転換申込権を行使した場合には、そもそも有期雇用契約ではなく無期雇用契約になることから、雇い止めはできないことになります。
また、会社が契約更新を繰り返した場合には、労働契約法19条が適用される可能性もあるため、雇い止めが認められない可能性もあります。
有期労働者との雇用契約の終了の場面では、雇い止め規制に抵触しないかどうかを検討する必要がある点にご留意ください。
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