この記事は、労災事故が発生した会社の経営者・担当者に向けたものです。被災された方向けの情報は、労災の専門サイトで説明しています。
社内で労災事故が起きたら、会社は、救護と二次災害の防止を最優先にしたうえで、行政への報告、事故の記録と原因の調査、被災者への対応、再発防止を進めます。法令上必要な事故の報告を怠ったり、事実と異なる報告をしたりすることは法令違反になり、被災者が行う労災保険の請求にも協力する義務があります。初動の対応は、後の被災者との関係や、会社の責任の判断にも影響します。
この記事では、会社が行う初動の対応を、段階ごとに説明します。
救護と二次災害の防止
事故が起きたら、まず被災者の救護を行い、必要に応じて救急車を呼びます。機械が関わる事故であれば機械を停止し、周囲の立入りを制限して、二次災害を防ぎます。
安全を確保したうえで、事故の現場の状況をできるだけそのままの状態で保ち、写真を撮影しておきます。重大な事故の場合は、労働基準監督署や警察が調査を行うため、指示があるまで現場を変更しないよう注意します。
報告・記録・調査
労働者が労働災害等によって死亡し、または休業した場合には、労働安全衛生規則97条に従って労働者死傷病報告を提出します。死亡または休業4日以上の場合は遅滞なく、休業1〜3日の場合は四半期ごとに取りまとめ、各四半期の翌月末までに報告します。一般の通勤災害と労災保険の請求は別に整理します。2025年1月1日から電子申請が義務化されていますが、電子申請が困難な場合は当分の間、書面による報告も認められます。報告義務があるのに提出しない、または虚偽報告をする行為は、いわゆる労災隠しとして処罰の対象になります。
社内では、事故の発生時刻、場所、作業の内容、被災者の状態、関係者の説明を記録し、原因を調査します。記録は、後に被災者との間で紛争になった場合にも重要な資料になるため、正確に作成し、保存します。業務災害の場合、休業の最初の3日間は、労災保険の給付がないため、会社が休業補償を行う必要があります。各段階の対応と担当、資料を整理すると次のとおりです。
| 段階 | 主な対応 | 担当の例 | 資料 |
| 初動 | 救護、通報、二次災害の防止、現場の保全 | 現場の責任者 | 発生時刻と対応の記録、写真 |
| 行政への対応 | 労働者死傷病報告、労働基準監督署の調査への協力 | 総務・安全衛生の担当 | 報告書の控え、調査への回答の記録 |
| 被災者への対応 | 家族への連絡、労災保険の請求への協力、休業中の連絡 | 人事の担当 | 請求書の写し、連絡の記録 |
| 再発防止 | 原因の分析、対策の実施、従業員への周知 | 安全衛生委員会など | 調査報告書、対策の記録 |
被災者との連絡
被災者が労災保険を請求する際、会社は請求書の証明欄に事故の状況などを記入して協力します。事故の原因について会社の見解が被災者と異なる場合でも、証明を拒んで手続を妨げるのではなく、事実を正確に記載したうえで、必要に応じて労働基準監督署に意見を述べる方法をとります。
被災者と家族には、事故の状況と会社の対応を誠実に説明し、休業中も定期的に連絡をとります。業務上のけがで療養のために休業している期間とその後30日間は、原則として解雇が禁止されています。会社が労災保険とは別の民間の保険に加入している場合は、保険会社への連絡も必要です。
責任の検討と再発防止
事故について会社の安全配慮義務違反が問題になる場合、被災者から損害賠償を求められることがあります。事故の原因と会社の安全対策の状況を早めに整理し、必要に応じて弁護士に相談します。被災者との示談を検討する場合は、労災保険の給付との関係や、合意の範囲を慎重に確認します。
再発防止のためには、原因を分析して設備や作業手順を見直し、従業員に周知します。安全衛生委員会などの場で対策を検討し、実施した内容を記録します。
よくある質問
Q 軽いけがで、本人も労災にしなくてよいと言っています。
業務上のけがは労災保険の対象であり、健康保険は使えません。また、休業を伴う場合の労働者死傷病報告の義務は、本人の意向にかかわらず会社に課されています。
Q 被災者から損害賠償を求められました。
事故の事実関係と会社の安全対策の状況を整理し、加入している保険の内容を確認します。回答の前に弁護士に相談することをお勧めします。
Q 他社の作業員が当社の現場でけがをしました。
報告や労災保険の手続を誰が行うかは、業種や契約関係(元請・下請、派遣など)によって異なります。関係する会社と連絡をとり、労働基準監督署に確認してください。
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