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ネット誹謗中傷の加害者が未成年者だった!親権者の責任や少年事件の扱いなど法的責任を弁護士が解説

はじめに

近年、スマートフォンの普及やSNSの低年齢化に伴い、インターネット上の誹謗中傷トラブルにおいて「加害者が未成年者(子ども)だった」というケースが急増しています。

「匿名掲示板でひどい悪口を書かれたので、発信者情報開示請求をして相手を特定したら、なんと中学生だった」
「SNSで執拗な嫌がらせをしてきた相手が、見ず知らずの高校生だった」

このような事態に直面した被害者の方は、「相手が子どもなら、慰謝料を請求しても無駄なのではないか」「親に責任をとってもらえるのだろうか」と、大きな戸惑いと不安を感じることでしょう。成人が相手の場合とは異なり、未成年者が加害者である場合、民法や少年法といった特殊な法律上のルールが絡んでくるため、対応には専門的な知識が必要となります。

しかし、結論から申し上げますと、加害者が未成年者であっても、泣き寝入りをする必要は全くありません。一定の条件を満たせば、未成年者本人、あるいはその親権者に対して、法的な責任を追及し、損害賠償を請求することは十分に可能です。

この記事では、未成年者によるネット誹謗中傷被害において、誰にどのような「法的責任」を問えるのか、「親権者の責任」の追及方法、そして警察に相談した場合の「少年事件」としての扱いについて、分かりやすく解説いたします。

Q&A

Q1. ネット誹謗中傷の加害者が未成年者だと分かりました。本人に慰謝料を請求することはできますか?

未成年者本人に「責任能力(自分の行為が法的にどのような責任を生じさせるかを理解する能力)」が認められる年齢であれば、本人に対して直接慰謝料(損害賠償)を請求することが可能です。過去の裁判例から、民事上の責任能力は概ね「12歳〜13歳(小学校高学年から中学生)」前後で備わるとされています。したがって、中学生以上の加害者であれば、原則として本人に法的責任を問うことができます。

Q2. 未成年者本人はお金を持っていません。親権者(親)に責任をとってもらい、親から慰謝料を払ってもらうことは可能ですか?

可能です。ただし、加害者本人の年齢(責任能力の有無)によって法律上の構成が異なります。

加害者が小学生以下で本人に「責任能力がない」場合、法律上当然に親権者が「監督義務者の責任」として賠償責任を負います(民法714条)。

一方、加害者が中学生以上で本人に「責任能力がある」場合、原則として親権者は責任を負いません。しかし、例外として、親権者がスマホの適切な使用ルールを指導していなかったなど、親の「監督義務違反」と「子どもの誹謗中傷」との間に相当因果関係があることを被害者側が証明できれば、親権者に対しても損害賠償請求(民法709条の共同不法行為責任など)が認められる可能性があります。実務上は、親権者を巻き込んで示談交渉を行い、親に立て替えて支払ってもらうケースが一般的です。

Q3. 悪質な誹謗中傷なので警察に被害届を出そうと思います。未成年者の場合、逮捕されたり前科がついたりするのでしょうか?

未成年者が犯罪(名誉毀損罪や侮辱罪など)を犯した場合、成人のような刑事裁判による刑罰(前科)ではなく、少年法に基づく「少年事件」として扱われます。警察等の捜査の後、事件は家庭裁判所に送致され、「少年審判」によって保護観察や少年院送致などの「保護処分」が決定されます。これは処罰よりも少年の更生を目的とした手続きです。ただし、14歳未満の「触法少年」の場合は、刑事責任を問えないため、児童相談所等の措置が優先されます。

解説

未成年者による誹謗中傷の「法的責任」と実務上の対応

インターネット上の誹謗中傷において、加害者が未成年者であった場合の「民事上の損害賠償責任」と「刑事上の責任(少年事件)」について、さらに深く解説します。

1. 未成年者本人の「法的責任(民事責任)」と責任能力

他人の名誉を傷つけたり、プライバシーを侵害したりした場合、加害者は不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。しかし、加害者が未成年者の場合、常に本人に責任を問えるわけではありません。民法には「責任能力」という考え方があるためです。

責任能力とは?

責任能力とは、自分の行った行為が法律上許されないことであり、損害賠償などの責任を負うことになるということを理解できるだけの知能のことです。民法第712条は、未成年者が他人に損害を与えた場合において、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えていなかったときは、その賠償の責任を負わないと定めています。

何歳から責任能力が認められるのか?

法律上、「〇歳から責任能力がある」という明確な基準はありません。個別の事案ごとに、加害者の年齢、発達の程度、行った行為の性質などを総合的に考慮して裁判所が判断します。

しかし、過去の裁判例の蓄積から、一般的には「12歳〜13歳(小学校高学年〜中学校1年生)程度」であれば責任能力が備わっていると判断される傾向にあります。

したがって、インターネットで文字を入力し、特定の人物を誹謗中傷する書き込みができるような中学生や高校生であれば、原則として本人に責任能力が認められ、本人に対する損害賠償請求が可能となります。

2. 「親権者の責任」は問えるか?(民事上の責任)

被害者にとって最も現実的な問題は、「未成年者本人は慰謝料を支払うお金(資力)を持っていない」ということです。そのため、「親(親権者)に払ってほしい」と考えるのが当然です。親権者の責任を追及できるかどうかは、前述の「子どもの責任能力の有無」によって大きく2つのパターンに分かれます。

パターン①:子どもに「責任能力がない」場合(概ね小学生以下)

加害者が幼く、責任能力がないと判断される場合、子ども本人は損害賠償責任を負いません。その代わり、子どもを監督する法的な義務を負っている者(通常は親権者である両親)が、被害者に対して損害賠償責任を負うことになります(民法第714条:監督義務者の責任)。

この場合、親権者が「自分は監督義務を怠っていなかった」ことを証明しない限り責任を免れることはできないため、被害者としては親権者に対する慰謝料請求が認められやすくなります。

パターン②:子どもに「責任能力がある」場合(概ね中学生以上)

問題になりやすいのはこちらのケースです。子ども本人に責任能力が認められる場合(中学生や高校生など)、原則として、不法行為責任を負うのは子ども「本人だけ」であり、親権者は当然には責任を負いません。

しかし、これでは被害者はお金のない子ども本人からしか回収できず、泣き寝入りを強いられてしまいます。そこで、過去の最高裁判例(最判昭和49年3月22日など)では、子どもに責任能力がある場合であっても、「親の監督義務違反」と「子どもの不法行為(誹謗中傷)」との間に「相当因果関係」が認められれば、親自身も民法第709条に基づく不法行為責任を負うという見解が示されています。

【親の監督義務違反が問われるケースとは?】

ネット誹謗中傷において、親の監督義務違反(親権者自身の不法行為責任)を問うためのハードルは決して低くありません。単に「親だから責任をとれ」という主張は裁判では通用しません。

例えば、以下のような事実を被害者側が主張・立証できれば、親権者の責任を問える可能性があります。

3. 実務上の対応:示談交渉における親権者の巻き込み

裁判においては上記のように厳密な法律論が展開されますが、実務上の「示談交渉(裁判外での話し合い)」の段階では、アプローチが異なります。

加害者が未成年者(中学生・高校生など)であると判明した場合、弁護士は通常、本人宛てではなく、法定代理人である「親権者(両親)」宛てに内容証明郵便等で慰謝料の請求や書き込みの削除を求める通知を送ります。

未成年者は単独で有効な示談契約を結ぶことができないため、必ず親権者の同意と関与が必要となるからです。

多くの場合、内容証明郵便を受け取った親権者は、我が子が他人に多大な迷惑をかけた事実を知り、事態の重大性に驚き、示談交渉に応じてきます。そして、法的な「親自身の賠償責任」の有無にかかわらず、道義的責任や子どもを裁判沙汰にしないため(解決のため)に、親が子どもの代わりに慰謝料を支払うという形で示談が成立することが大半です。

したがって、「加害者が中高生だから親の法的責任を証明するのは難しそう」と諦める必要はありません。適切な手順を踏んで親権者と交渉することで、実質的な被害回復(損害回収)を図ることは十分に可能です。

4. 刑事責任と「少年事件」としての扱い

誹謗中傷の内容が極めて悪質で、名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪などに該当する場合、警察に被害届や告訴状を提出し、刑事責任を追及することも考えられます。

加害者が未成年者である場合、事件は成人の刑事事件とは異なり、少年法に基づき「少年事件」として扱われます。

(1)少年事件の流れと目的

少年法は、非行を犯した少年の「健全な育成(更生)」を主目的としています。そのため、警察による捜査の後、事件は原則としてすべて家庭裁判所に送致されます(全件送致主義)。

家庭裁判所では、裁判官や家庭裁判所調査官が、少年が非行に至った背景(家庭環境、交友関係、性格など)を詳しく調査します。その結果に基づき「少年審判」が開かれ、最終的な処分が決定されます。

(2)決定される「処分」の内容

成人のような懲役や罰金といった「刑罰」が科されることは原則としてなく(※重大犯罪等の例外を除く)、「前科」もつきません。その代わり、以下のような「保護処分」等が言い渡されます。

(3)年齢による扱いの違い

【被害者としての関わり方】

少年事件の手続きは非公開が原則であり、被害者であっても蚊帳の外に置かれがちだという批判がありました。しかし現在では、少年法の改正等により、被害者が家庭裁判所に対して事件の記録の閲覧・謄写を申し出たり、審判の状況についての説明を受けたり、被害に関する心情の意見陳述を行ったりする権利が拡充されています。

弁護士に相談するメリット

ネット誹謗中傷の加害者が未成年者であるケースは、特有の難しさがあります。早期に弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談いただくことで、以下のようなメリットがあります。

1. 親権者との交渉を冷静かつ有利に進められる

被害者ご自身が加害者の親と直接交渉しようとすると、「うちの子に限ってそんなことをするはずがない」「そっちにも落ち度があるのではないか」などと親が子どもをかばい、感情的なトラブルに発展するリスクが非常に高いです。弁護士が代理人として介入することで、法的な根拠と客観的な証拠(開示請求の結果など)を突きつけ、冷静に事態の深刻さを認識させ、適切な示談(親による慰謝料の支払い)へと導くことができます。

2. 複雑な法的責任の構成(立証)を任せられる

万が一、親権者が示談に応じず裁判となった場合、中高生が相手の事案において「親の監督義務違反」を主張・立証することは、一般の方には極めて困難です。弁護士は、過去の裁判例を踏まえ、どのような事実関係を調査・主張すれば親の責任を認めさせることができるか、専門的な見地から緻密な訴訟活動を行います。

3. 少年事件手続きにおける被害者参加のサポート

刑事告訴を行い、事件が少年事件として扱われた場合、弁護士は被害者の代理人として、家庭裁判所への記録閲覧申請や、審判での意見陳述のサポートなどを行います。被害者の処罰感情や受けた苦痛を正当に手続きに反映させ、加害少年に自らの行為の重大さをしっかりと自覚させるための活動をサポートします。

まとめ

インターネット上の誹謗中傷において、発信者情報開示請求の結果、加害者が未成年者(子ども)であると判明するケースは近年珍しくありません。

相手が未成年者だからといって、法的な責任を免れるわけではありません。中学生程度以上であれば本人に民事上の損害賠償責任が認められますし、交渉次第、あるいは親の監督義務違反を立証することによって、親権者から慰謝料を回収することも十分に可能です。また、悪質なケースでは警察に告訴し、少年事件として更生と反省を促す手続きをとることもできます。

しかし、未成年者やその親を相手とする対応は、成人が相手の場合以上に感情的になりやすく、法的な立証のハードルも存在します。一人で抱え込み、直接相手方と接触してトラブルを悪化させる前に、まずはネット法務に精通した弁護士にご相談ください。

泣き寝入りすることなく、適正な被害回復を図るための最適な戦略をご提案いたしますので、お早めにご相談ください。

 


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