はじめに

サロンスタッフの退職は、避けて通れないイベントのひとつです。円満退職であれば特に問題はありませんが、中には解雇退職勧奨が関係するケースもあります。法的手続きを誤ると、不当解雇として労働審判や裁判に発展し、サロンに大きなリスクとコストがのしかかる可能性があります。

本記事では、スタッフ退職時の対応について、解雇・退職勧奨・円満退職の3パターンを整理し、適切な手順や注意点を解説します。

Q&A

Q1. 解雇をする場合、どんな手続きが必要ですか?

解雇は労働基準法や判例上、非常に厳格に判断されます。解雇前に30日前の解雇予告(または解雇予告手当の支給)や、解雇理由の説明が必要です。就業規則で定める解雇事由に該当しない限り、正当な解雇とは認められにくいでしょう。

Q2. 退職勧奨と解雇はどう違うのですか?

退職勧奨は、サロン側が自主的退職を促す行為であり、従業員の同意が得られなければ成立しません。一方、解雇は会社の一方的な意思表示で、従業員の同意がなくても効果を生じます。退職勧奨が行き過ぎると実質的な解雇とみなされる場合があります。

Q3. スタッフが円満退職を希望している場合、何に気をつけるべきでしょうか?

引継ぎの有無在職中の貸与物の返却最終給与・退職金の支払いなどを明確にし、円滑に手続きを進めることが大切です。口頭だけで済まさず、書面で退職日や業務引継ぎ事項を確認するとトラブルを防ぎやすいです。

Q4. 解雇予告手当とは何ですか?

労働基準法上、30日以上の解雇予告期間を設けずに即時解雇する場合、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。これを解雇予告手当といい、解雇の厳格性を補う制度です。

Q5. 競合サロンへの転職を防ぐ方法はありますか?

就業規則や雇用契約書に競業避止義務を定めるケースがありますが、過度に広範な制限は無効と判断される可能性があります。地域や期間、業種などを限定し、スタッフに不当に負担をかけない範囲で設定しましょう。

解説

解雇の種類と手順

  1. 懲戒解雇
    重大な違反行為(横領、暴力など)に対して行われる。就業規則に懲戒事由と処分を明記し、適正な手順を踏まないと不当解雇となる。
  2. 普通解雇
    能力不足や業務適性が合わないなどを理由とするが、合理的な証拠と再三の指導・改善要求が必須。
  3. 整理解雇
    経営不振などで人員整理を行う場合。整理解雇4要件(経営上の必要性、解雇回避努力、解雇対象者の合理的選定、手続きの妥当性)を満たす必要がある。

退職勧奨の注意点

  • 強要にならないように
    「辞めろ」「退職届を書け」など、一方的に迫ると実質的な解雇とみなされる恐れがある。
  • 面談記録の作成
    話し合った経緯を記録し、従業員が自主的に同意した事実を明確にする。
  • 希望を尊重
    従業員が退職を拒否した場合は、解雇理由がない限り退職させることはできない。

円満退職のポイント

  1. 退職日の確定
    引継ぎや有給休暇消化のスケジュールを確認し、両者の合意のもとで退職日を決定。
  2. 最終賃金の支払
    退職後でも給料や残業代、退職金の支払いは法律上の期限を守り、遅延や不足がないようにする。
  3. 貸与物や顧客情報の取り扱い
    ユニフォームや機材、PC、顧客データなどを返却し、秘密保持義務を守らせる。
  4. 離職票の交付
    雇用保険の手続きとして、必要書類(離職票)を速やかに発行。

弁護士に相談するメリット

  1. 解雇手順・退職勧奨の適法性チェック
    解雇する際の理由や証拠、手続きが法的に正当かどうかを助言し、不当解雇のリスクを回避。
  2. トラブル発生時の交渉サポート
    従業員が「解雇は不当」と主張してきた場合や、退職金の額をめぐって紛争化した場合、法的観点から解決策を提案。
  3. 労働審判・裁判での対応
    もし紛争が深刻化し労働審判や裁判に進む場合、弁護士が代理人となりサロンの主張を整理・立証。
  4. 退職時の書面作成
    円満退職合意書、競業避止条項の同意書など、必要な書面を法的に適正な形で作成。

まとめ

スタッフの退職はサロン経営にとって人材の入れ替え時であり、業務やお客様対応にも影響が出る場面です。正当な手順を踏めば円満に退職できる一方、解雇や退職勧奨の進め方を誤ると不当解雇として争われたり、労働審判裁判で大きなコストと信用問題が生じるリスクがあります。

サロンとしては、就業規則で解雇事由や手続きを明記し、退職時のチェックリストを設け、退職者と円滑に合意形成することが大切です。万が一トラブルが起こりそうな場合は、弁護士に早めに相談し、法的に適切な対応を取ることが賢明です。


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