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抵当権抹消登記の流れと必要書類

はじめに

住宅ローンや事業資金ローンを完済すると、不動産に設定されていた抵当権を抹消できるようになります。抵当権を抹消することで、登記簿上から担保設定が消え、不動産の処分や追加融資などがスムーズになるメリットがあります。一方、抹消に必要な書類や申請手続きがやや複雑で、うっかり放置してしまうケースも少なくありません。

本稿では、抵当権抹消登記の基本的な流れや必要書類、注意点を解説し、住宅ローン完済後の手続きを円滑に進めるためのポイントを紹介します。

Q&A

Q1.抵当権抹消登記とは何ですか?

抵当権が設定された不動産の返済が完了(弁済終わり)した際に、登記記録から抵当権設定記載を抹消する手続きです。法務局で抹消登記が完了すると、第三者から見て担保が消えていることが登記簿上で確認でき、売却や再担保設定などの自由度が増します。

Q2.抵当権抹消登記は放置していても問題ないのでしょうか?

法的に「完済後は必ず抹消しなければならない」という義務はありませんが、放置すると以下のデメリットがあります。

  1. 不動産売却や再担保設定の際に面倒
    登記簿上に抵当権が残ると、買主や金融機関に「まだ借金があるのでは?」と疑念を持たれ、不動産の処分や資金調達が遅れる。
  2. 必要書類を紛失するリスク
    金融機関が発行する「解除証書」などが紛失すると、後で抹消手続きがさらに困難に。
Q3.抹消手続きの流れはどのようになりますか?

一般的には次のステップを踏みます。

  1. 債務完済
    ローンを全額返済し、金融機関から「抵当権解除証書」や「弁済証書」などを受け取る。
  2. 必要書類の準備
    • 登記識別情報(または登記済証)
    • 金融機関発行の解除証書・委任状・印鑑証明書
    • 申請人(不動産所有者)の住民票や印鑑証明書など。
  3. 登記申請(法務局)
    書類一式を法務局に提出。登録免許税は不動産1個につき1,000円(複数土地・建物があれば×個数)。
  4. 登記完了
    法務局で審査後、抹消登記が完了し登記簿から抵当権記載が削除される。
Q4.司法書士など専門家に依頼する必要はありますか?

抵当権抹消登記は比較的手続きがシンプルであり、個人でも申請可能です。必要書類が揃っていて、法務局の窓口で教わりながら書式を作成すれば、大きな問題なく行えるケースも多いです。ただし、

など複雑な場合、司法書士や弁護士に任せることでミスや手間を省けます。

Q5.弁護士に相談するメリットは?

一般的に抹消登記だけであれば司法書士に依頼することが多いですが、弁護士が必要となるのは、

  1. 債務返済が滞納している段階
    抹消書類を受け取れず、競売や任意売却を検討せざるを得ないなど、複雑な債権整理が必要な状況。
  2. 金融機関との交渉・紛争
    完済後に金融機関が書類発行に応じない、不明な手数料を請求しているなどのトラブル。
  3. 抵当権抹消に併せて他の債務整理が必要
    自己破産や個人再生の一環で抵当権を処理するなど。

解説

抵当権抹消登記の必要書類

  1. 登記済証(登記識別情報)
    抵当権設定時の登記識別情報または書面を用意。
  2. 弁済証書・解除証書
    債権者(金融機関)が「借金を完済したので抵当権を解除してもよい」という趣旨を記載した文書。
  3. 登記原因証明情報
    「令和○年○月○日弁済により消滅」「借入金完済」など、抵当権抹消の原因を示す書面。解除証書と一体になっていることもある。
  4. 委任状
    金融機関が抹消登記申請を依頼する場合の委任状や、司法書士が代理申請する場合の委任状。
  5. 申請人の住民票・印鑑証明書
    不動産所有者個人の本人確認用。法人名義の場合、法人の登記事項証明書や代表者印鑑証明など。

登録免許税と不動産の数え方

  1. 登録免許税
    原則として不動産1個につき1,000円。土地と建物が別なら2,000円、敷地権が複数の土地に及ぶ場合、さらに増えるケースあり。
  2. 法務局への納付方法
    収入印紙で納付。ネットバンキングや電子納付ができる場合も。
  3. 不動産の数え方
    「土地」と「建物」の2つとするのが基本。登記簿で別の地番や家屋番号が付いていれば、それぞれ個数とカウント。

抹消登記後の注意点

  1. 登記完了証の受領
    • 登記が完了したら、法務局から抹消登記完了通知が発行される。
    • これによって登記簿から担保記載が削除されたことを確認できる。
  2. 契約書・完済証明書の保管
    今後、不動産を売却するときなどに「完済証明」や「解除証書」が必要になる場合がある。原本を大切に保管する。
  3. 金融機関への確認
    間違ってローンが完済処理されていなかったなどのミスを防ぐため、銀行に確認を取り、口座引落が停止されたことを確認する。

弁護士に相談するメリット

  1. 複雑な事例や紛争への対応
    ローン返済中で滞納があったり、金融機関との和解条件が絡む場合など、ただ抹消登記するだけでは解決しないケースに弁護士が介入。
  2. 二重抵当や他の差押えがあるケース
    抹消するには関係する債権者全員の同意が必要なことも。弁護士が協議をまとめ、迅速に手続きを進行。
  3. 書類紛失・金融機関が合併して連絡先不明など
    合併や統廃合で元債権者が存在しない、書類が見つからないなど特殊状況で弁護士が調査・交渉。

まとめ

抵当権は完済後に抹消しないままだと、不動産の流動性を落とす要因となり将来トラブル化する恐れがあります。適正な書類をそろえ、法務局へ申請して正しく登記を抹消すれば、不動産をスムーズに活用できる体制を確保できます。


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