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賃金台帳・勤怠記録の整備

はじめに

労働基準法上、賃金台帳の作成・保存は事業主に義務付けられています。同様に、従業員の勤怠情報を客観的かつ正確に管理することも、残業代請求リスクを防ぐうえで欠かせません。これらが不備だと、未払い残業代をめぐるトラブルが起きた際に企業側が不利な立場に立たされるだけでなく、労働基準監督署の調査で是正勧告を受ける可能性もあります。

本記事では、賃金台帳の正しい記載事項や勤怠記録の整備方法、電子化・クラウド管理の注意点などを解説します。労務担当者の皆さまのご参考となれば幸いです。

Q&A

Q1. 賃金台帳って、具体的にどのような項目を記載すべきですか?

労働基準法施行規則により、氏名や賃金計算期間、労働日数・労働時間数、賃金の種類・金額、控除額などを記載する必要があります。給与明細を発行している企業でも、正式な「賃金台帳」を別途作成・保存しなければいけない点に注意が必要です。

Q2. 勤怠記録は紙のタイムカードじゃなくてもいいのですか?

労働時間を客観的に記録できれば、電子的な打刻システムやICカード、パソコンのログ、スマホ打刻なども認められます。ただし、従業員が自由に修正できる仕組みだと信頼性が損なわれるため、改ざん防止措置を講じることが大切です。

Q3. 賃金台帳はどのくらい保管すればいいですか?

賃金台帳の保存期間は、労働基準法では5年(当面の間は3年)と規定されています。但し、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は、7年間の保管が必要になります。

Q4. 電子化してデータ保存している場合、紙での保存も必要ですか?

労働基準法上は、電子的に保存している場合でも法的要件(改ざん防止・容易に出力可能など)を満たせば紙の保存義務はありません。ただし、労働基準監督署の調査や裁判に備えて、すぐに出力できる形で保持しておくことが望ましいです。

Q5. もし賃金台帳や勤怠記録が不十分だとどうなるのですか?

労働基準監督署の調査で是正勧告を受けたり、未払い残業代をめぐる紛争で企業側が不利になるなど、深刻なリスクがあります。最悪の場合、刑事罰(罰金)を科される可能性もあるため、注意が必要です。

解説

賃金台帳の法的要件

  1. 労働基準法第108条
    賃金台帳は、事業場ごとに作成し、労働者ごとに整理する。
  2. 施行規則で定める必要記載事項
  1. 労働者の氏名
  2. 賃金計算期間
  3. 労働日数、労働時間数(時間外・休日・深夜労働の別を含む)
  4. 賃金の種類・金額(基本給、手当、控除額など)
  5. 賃金支払日
  1. 保存義務
    5年(当面の間は3年)の保存が必要。改ざん防止やバックアップを確実に行う。

勤怠記録の整備

電子化・クラウド管理のメリットと注意点

メリット

  1. データの検索・集計が容易。
  2. 紙よりも管理コストを削減しやすい。
  3. 災害リスクや紛失リスクが低減。

注意点

  1. 改ざん防止策(ログイン権限の限定、編集履歴の保存など)を確立する。
  2. バックアップを定期的に取り、サーバートラブル時に備える。
  3. 労働基準監督署や裁判所から求められた場合、迅速に出力できるようにしておく。

労働基準監督署の調査と対応

弁護士に相談するメリット

賃金台帳や勤怠記録の整備は、企業経営の基本でありながら、日常業務に追われる中で後回しにされがちです。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 法令遵守のアドバイス
    記載事項や保存期間など、労基法や関連規則に定められた要件を満たす形で整備するサポート。
  2. 勤怠システム導入・改訂の支援
    自社に適した客観的管理システムの選定ポイントや運用ルールを提案。
  3. 監督署調査や紛争時の対応
    是正勧告を受けた際の報告書作成や、従業員からの未払い残業代請求などに対する法的防御策の立案。
  4. 労務監査の実施
    第三者的視点で企業の賃金台帳・勤怠記録を点検し、未然にリスクを発見・是正する。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、企業の労務管理体制構築におけるアドバイザリーを含め、多角的なサポートを提供しています。

まとめ

今一度、自社の賃金台帳や勤怠管理の方法を再チェックし、法的リスクを最小限に抑える体制を整えましょう。


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