はじめに
会社が破産手続に入ると、経営者や役員は「もう二度と経営に携われないのでは?」と不安を抱くことがあります。特に破産手続が終わった後、再就職や取締役・役員就任に制限があるのかは、多くの経営者にとって大きな関心事です。実際には、一定の職業における資格制限はあるものの、全ての職種で制限が掛かるわけではありません。
本記事では、破産手続後の経営陣再就職の制限について、具体的にどのような業種・職種が影響を受けるのか、そして倒産後に再起するための視点を整理します。倒産はあくまで終わりではなく、新たなスタートにつなげるために、正しい知識を持っておきましょう。
Q&A
Q1. 破産手続が終了すると、経営者や役員は取締役に二度となれないのでしょうか?
破産者が復権(免責確定など)すれば、取締役就任に法的制限はありません。以前の商法(旧商法)では破産者の取締役就任に制限がありましたが、会社法改正により、破産者が復権した後は就任できるようになっています。
Q2. 復権とは何ですか?
復権とは、破産手続が終わり、免責が確定するとともに破産者の一連の制限が解除されることを指します。破産者である期間中は一部の資格や権利に制限がかかることがありますが、復権によってそれらが解除されます。
Q3. 破産手続中に就けない職業はありますか?
破産手続が続いている間(免責確定前)は、弁護士や司法書士、税理士、公認会計士など特定の士業や、生命保険募集人など一部の職業に資格制限がかかります。また、警備業など一部業種でも、破産者が業務を行うのを制限している場合があります。
Q4. 破産後、すぐに新しく会社を起こすことは可能でしょうか?
法律上は可能です。ただし、免責確定前だと一部資格制限や信用面の問題があり、実質的に難しい場合があります。免責が下り、復権が認められた後であれば、新規起業や法人設立に法的な問題はありません。ただし、銀行融資や取引先信用など実務上の障壁は大きいといえます。
Q5. 倒産後に再就職を目指す際、破産歴を隠して採用されることは問題になりますか?
企業が破産歴を理由に採用を拒否する明確な法律上の規定はありませんが、職歴・経歴を偽る行為は倫理的・実務的に問題があります。
解説
法律上の資格制限と復権
- 破産中の資格制限
破産者(免責前の状態)は、以下の職業・資格に就くことが法律で制限される場合があります。- 弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、弁理士など士業
- 生命保険募集人、警備業など一部業種
- 一定の公職(国会議員や地方議員は除くことが多いが、法律で制限されるものがある)
- 復権の仕組み
破産手続が完了し、免責が認められれば破産者は復権します。復権後は前述の資格制限が解除され、取締役や士業としての活動が再び可能となります。 - 例外的な資格・業種
職業や業種によっては独自の規定で、復権後も何らかの制限が残る可能性がゼロではありません。例えば金融機関や保険関連業種などは独自の内規で破産歴を理由に採用を拒否することがあるため、実務上の信用面が大きなハードルになります。
倒産後の経営陣の再就職・再起状況
- 取締役・役員への再就任
会社法改正により、破産者(免責確定後)でも取締役や監査役への就任が可能となっています。ただし、取引先や金融機関の信用面でハードルは高く、新規ビジネスを起こす際にも自己資本や投資家の協力を得る必要が高まります。 - 雇用される立場での再就職
一般企業への再就職にあたっては、破産歴を採用基準に直接問う会社は多くありません。とはいえ、管理職ポジションや役員登用などの場合は信用調査を行う企業もあるため、過去の倒産・破産歴が発覚することがあります。 - 信用情報への影響
破産者は、個人信用情報(いわゆるブラックリスト)に記録され、クレジットカードやローンの利用に一定期間制限がかかります。再度経営者として融資を受けるのは困難になるケースが多いですが、時間経過や投資家との協力で新事業を立ち上げる事例もあります。
実務上のポイント
- 職業制限中の生活設計
士業や特定の業種で働いていた経営者は、破産手続の間、職業制限がかかるため、別の仕事やアルバイトで生計を立てる選択を迫られることがあります。早めに弁護士と相談し、可能な就業先を見出すのが得策です。 - 再起業への計画的アプローチ
破産が確定し免責を得れば、新たに法人を設立することは法的には問題ありません。とはいえ、金融機関融資がほぼ困難になる点を踏まえ、自己資金や出資(エクイティファイナンス)など別の調達方法を考える必要があります。 - 家族や親族の理解
経営者の破産は家族にも影響を及ぼすため、再就職や再起業のプランを共有しておくとスムーズです。新たな起業にあたり親族が役員や保証人になる場合もあり、十分にリスクを伝えることが大切です。 - 弁護士や再生コンサルタントとの連携
破産後の再起支援を得意とするコンサルタントや弁護士は事業再建・新規ビジネス立ち上げにおけるノウハウを持っています。ネットワークを活用しながら、融資以外の資金調達や販路拡大など多角的なサポートを受けるのが望ましいです。
弁護士に相談するメリット
- 破産手続前からの対策
破産による職業制限や再就職リスクを踏まえ、どの時期に破産申立を行うか、あるいは民事再生や任意整理に切り替えた方がいいかなど、最適解を見つけやすくなります。 - 個別資格に関するアドバイス
弁護士は法律の専門家として、破産者が制限される業種や免責後に就ける職業を正確に案内してくれます。士業資格を持っている場合は特に重要なポイントです。 - 再起業や雇用契約のサポート
破産者が新会社を設立する場合、定款作成や登記、法的リスク管理を弁護士が支援します。再就職で雇用契約を締結する際にも、契約条件のチェックや交渉で力を発揮できます。 - トラブル・訴訟対応
破産後も損害賠償請求や刑事告発のリスクがあるなら、弁護士が代理人として対応し、迅速な問題解決を目指せます。これにより新たな職場や事業での信用を守ることができます。
まとめ
破産手続後の経営陣再就職の制限については、以下の点を押さえておきましょう。
- 破産手続中(免責確定前)には、一部資格や職業(士業・警備業など)で制限がある
- 免責決定後(復権)であれば、取締役や監査役就任に法的制限は基本的にない
- ただし、信用情報への影響や金融機関との関係など、実務的障壁は存在
- 士業などで職業制限がある場合は、別の職種で一時的に働くか、早期に免責を得るなどを検討する
- 弁護士に相談することで、資格制限や再就職リスク、新たな事業立ち上げの可能性を総合的に検討可能
倒産による破産が人生の終わりではなく、再チャレンジに向けた一つのステップと捉えることが大切です。官報公告や信用情報に掲載される影響はあるものの、弁護士のサポートを受けることで、倒産後の再起業・再就職への準備を着実に進めることができます。
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