はじめに
近年、インターネットの普及によって、私たちが何か商品を購入したり、サービスを利用したりするときに「口コミ」や「レビュー」を参考にする機会が飛躍的に増えました。ネット上の口コミサイトやレビューサイトには、一般の利用者や消費者が感じた率直な意見や評価が投稿され、それが他のユーザーの意思決定に大きな影響を与えています。
一方で、ネット上の口コミやレビューは必ずしも「客観的かつ正確」な情報ばかりではありません。誹謗中傷まがいの悪口や、意図的に良い評価をつける「やらせレビュー」などが混在しており、情報の真偽を見極めるのは容易ではありません。また、企業や店舗側にとっては、一度ついた悪評やデマが拡散されると深刻な被害につながるリスクもあります。
本記事では、ネット上の口コミやレビューがどのような特徴を持ち、どんな影響力を持つのかを明らかにするとともに、口コミサイト・レビューサイトの仕組みや課題、企業や店舗がどのように対応すればよいのかについて解説いたします。実際に口コミを活用する消費者や、それらに対処する企業・店舗、どちらにとっても有益な情報を提供できれば幸いです。
Q&A
Q1:ネット上の口コミ・レビューサイトには、どのような種類があるのですか?
飲食店専門、旅行や宿泊施設専門、ECサイト連動型など、ジャンル別に多数存在します。たとえば食べログやホットペッパーグルメといった飲食特化の口コミサイト、楽天市場やAmazonのように商品購入時にレビューを投稿できるプラットフォーム、あるいはGoogleマップのクチコミ機能などが典型例です。
Q2:口コミ・レビューは本当に信頼できる情報源でしょうか?
多くの利用者が主観的な感想や意見を投稿するため、必ずしも客観的とは限りません。ただし、口コミが多数集まれば統計的には参考になることもあります。反面、「やらせレビュー」やライバル企業・店舗が行う悪意ある投稿が混在するリスクもあり、100%鵜呑みにするのは危険です。
Q3:ネット上の口コミで悪評が広がった場合、放置していてもそのうち消えますか?
多くの場合、口コミサイトやSNSに投稿された評価は長期間残ります。また、検索エンジンにキャッシュが残ったり、スクリーンショットが拡散されたりすることもあるため、放置すれば被害が拡大する可能性が高いです。早急な対処が望まれます。
Q4:口コミやレビューを管理するサイト運営会社は、投稿内容のチェックをしているのでしょうか?
大手サイトでは一定のガイドラインやフィルタリングシステムを導入していることが多いです。ただし、投稿数が膨大であるため、すべてを完全に監視するのは困難です。明らかに規約違反とわかる内容は削除される場合もありますが、グレーゾーンの投稿が放置されることもあります。
Q5:企業や店舗は、自分たちで口コミを削除できるのでしょうか?
一般的には運営会社(サイト管理者)しか投稿を削除できません。企業や店舗が任意で削除することは不可能です。削除依頼をしても拒否されるケースもあるため、正当な法的根拠(誹謗中傷や名誉毀損に該当するなど)が必要になることもあります。
解説
ネット上の口コミ・レビューの基本的な仕組み
ネット上の口コミ・レビューは、多くの場合「ユーザーが利用した商品やサービスについて自由に評価を投稿する」という形で成立しています。サイトやプラットフォームによっては、5段階評価や星の数、コメント欄などさまざまな方式があります。ユーザーは実際の感想をシェアすることができるため、多くの人が参考にしやすいというメリットがあります。
主な投稿形態
- テキストのコメント:感想・評価を文章で記述
- 星や点数による数値評価:5段階や10段階など
- 写真や動画の添付:店内の様子や商品外観など視覚情報を補強
口コミ・レビューサイトの影響力
ポジティブな影響
- 認知度向上
良い口コミが拡散されると、新規顧客の獲得につながる - 信頼感の醸成
多数の高評価がある企業や店舗は、多くのユーザーから「安心して利用できる」と判断されやすい - マーケティングへの活用
企業が口コミを分析することで、商品改善や新サービス開発に生かせる
ネガティブな影響
- 悪評拡散による売上ダウン
不評や批判的コメントが集まると、顧客離れが起きる - ブランドイメージの毀損
悪い口コミが検索上位に表示されると、長期的なイメージダウンにつながる - 誹謗中傷やデマの拡散
根拠のない情報やライバル企業の工作などが拡大すると、法的トラブルへ発展する恐れも
口コミ・レビューにおける問題点
- やらせ・ステマの存在
報酬や割引クーポンなどを提供して、良い評価を書かせる不正レビューが一定数存在。利用者は口コミを過信すると誤った判断を下す可能性がある。 - 匿名性の悪用
投稿者が匿名であるため、誹謗中傷的な内容が投稿されても発信者特定が難しい場合がある。 - 対応の遅れ
企業や店舗が口コミを放置していると、誤情報が長期間残ってしまう。事実と異なる悪評が拡散され、社会的信用を大きく損なうリスクが高まる。
口コミ・レビューをめぐる法的リスク
- 名誉毀損
事実無根の悪評によって社会的評価を下げられた場合、企業や個人は損害賠償請求を検討できる。 - 業務妨害
虚偽の書き込みを通じて売上や営業に著しい損害を与えた場合、刑事事件(偽計業務妨害)になる可能性もある。 - 信用毀損罪
法人などの「信用」を毀損する虚偽の情報拡散は、刑法上の信用毀損罪(刑法233条)に該当しうる。
企業・店舗にとっての対策
- 定期的なモニタリング
自社のサービス名や店舗名、商品名などを定期的に検索し、悪質な口コミの早期発見に努める。 - 真摯なコミュニケーション
軽度のクレームや批判ならば、迅速に謝罪や説明を行うことで状況を改善できる場合もある。 - 削除依頼や法的措置
明らかに誹謗中傷や名誉毀損に当たる投稿がある場合は、サイト管理者への削除依頼や発信者情報開示請求、損害賠償請求などを検討する。
弁護士に相談するメリット
誹謗中傷やデマへの迅速対応
誹謗中傷的な口コミが拡散されると、企業や店舗は大きな打撃を受けます。弁護士に相談すれば、サイト管理者への削除依頼文書作成、発信者情報開示請求などを迅速に進められ、被害を最小限に抑えることが可能です。
削除依頼と法的手続きのノウハウ
サイト運営会社や口コミサイトに削除依頼を行う際、法的根拠や具体的証拠の提示が求められます。弁護士が代理で手続きすることで、「どのように書面を作成すれば最も効果的か」を的確に判断でき、交渉が有利に進むでしょう。
示談交渉や訴訟手続きへの対応
投稿者が判明した場合、示談交渉を行ったり、損害賠償請求の裁判を起こすことを検討できます。弁護士を通じた交渉なら、感情的なもつれを避けつつ、適切な賠償金や謝罪文の獲得を期待できます。
企業リスクマネジメントの支援
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、ネットリスク対策やSNSポリシーの策定、社員教育など、企業のリスクマネジメントをサポートしています。口コミ対策だけでなく、広範囲の法務リスクを俯瞰してアドバイスを行うため、長期的な企業防衛が可能になります。
まとめ
ネット上の口コミ・レビューは、企業や店舗のイメージや売上を左右する大きな力を持っています。ポジティブな評価が集まれば大きな宣伝効果が期待できますが、ネガティブな評価や誹謗中傷が放置されると甚大な被害に発展することも少なくありません。
- 口コミ・レビューサイトの特徴を理解
- ユーザーの投稿や評価が他の利用者の意思決定に直接影響
- 誤情報や悪意ある口コミが混在するリスクを念頭に置く
- 法的リスクを把握
- 名誉毀損や信用毀損、業務妨害などに該当するケースを見極める
- 削除依頼や発信者情報開示請求、損害賠償請求などの手段を知る
- 適切な対応策の確立
- モニタリング体制の構築、誠実なクレーム対応、弁護士との連携を通じて被害拡大を防ぐ
企業や店舗がネット上の口コミ・レビューと上手に向き合うためには、リスク管理と法的知識の両面からのアプローチが必要です。気になる悪評や明らかな誹謗中傷を発見したら、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談いただき、適切な対応を取ることをおすすめします。
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