はじめに
土地を分割して売りたい、相続人で分けたい、あるいは複数の地番をまとめたい――そんなとき必要になるのが「分筆登記」や「合筆登記」の手続きです。いずれも法務局に申請することで、登記簿上の土地の区画や面積を再編できる制度となっています。本稿では、土地分筆・合筆登記の基本的な流れや注意点、登記申請に伴う測量などを解説します。
Q&A
Q1.土地分筆登記とは?
土地分筆登記は、1つの土地(筆)を複数に区分する手続きです。具体的には「Aという土地(1筆)を、道路部分と宅地部分の2筆に分ける」といったイメージで、分筆した土地にはそれぞれ新たな地番が付与されます。売買や相続で部分的に処分・分割する際などに行われます。
Q2.土地合筆登記とは?
複数の隣接する土地(地番が異なるが実質的に同じ所有者が保有)を1つの筆にまとめる手続きです。例えば、2筆の宅地を1筆に合体させたい場合、合筆登記を行えば一括管理が容易になります。ただし、地目が同一であることなど、合筆には一定の要件があります。
Q3.分筆・合筆を行うにはどんな手順が必要ですか?
一般的には以下の流れとなります。
- 事前調査
土地家屋調査士などが登記簿・公図・測量図を確認し、現況を把握。 - 測量・境界確認
隣地との境界を確定し、正確な面積と境界線を測量で示す。 - 登記申請書の作成
地積や地番の新旧対照表などの書類を作り、法務局へ提出。 - 法務局審査
審査を経て分筆・合筆が認められ、新しい登記記録が完成。
Q4.分筆や合筆をするとき、隣地所有者の承諾が必要でしょうか?
原則として分筆・合筆登記は、「同じ所有者の土地をどう分けるか」または「まとめるか」の問題なので、隣地の承諾は不要です。ただし、境界線に変動が生じたり、地積更正を伴う場合には、隣地立会いなどで境界を確認する工程が必要になります。結果的に周辺土地との境界を曖昧なままにしないためにも、境界確定を行うケースが多いです。
Q5.分筆登記にはどれくらい費用や期間がかかりますか?
費用・期間は測量の複雑さや隣地所有者との協議状況によって異なります。
- 費用
数十万円~100万円程度が目安になることも。土地家屋調査士報酬、測量費、登録免許税などが含まれます。 - 期間
隣地との境界が決まっているか、面積が広いかなどで変動。一般的には数ヶ月程度。複雑なケースでは半年~1年かかる場合もあります。
解説
分筆登記を行う主な理由
- 売買や相続で一部だけを切り出す
相続人ごとに土地を分けたり、土地の一部分だけを売りたい場合、分筆して個別の地番を設定します。これにより、権利処分が容易になります。 - 共同名義を解消
共有状態の土地を分筆し、共有者各自が単独所有できる形にするケース。相続問題などでよく見られます。 - 宅地と農地など地目が異なる部分を分けたい
同じ筆内で地目が異なる場合、別々に分筆して法務局の登記と実際の現況を一致させるメリットがあります。
合筆登記を行う主な理由
- 管理の簡略化
連続する複数筆の土地を1つにまとめると、地番が1つだけになるため税務申告や管理面がスッキリします。 - 課税や経理処理を一本化
固定資産税や不動産取得税など、筆ごとの計算が不要になり、経理処理をまとめられます。ただし、合筆後に部分的売却したい場合は再度分筆が必要になる点に注意。 - 合筆の要件
- 地目が同じであること
- 所有者が同一であること
- 接している土地であること
これらを満たさないと合筆できません。
登記申請における注意点
- 測量図が必要
分筆登記では土地家屋調査士の測量が必須となり、新たに分筆される筆ごとの地積が正確に記載された地積測量図を法務局に提出します。 - 登録免許税
分筆・合筆それぞれに登録免許税が課税されますが、計算方法が異なります。- 分筆登記:1筆ごとの定額方式があり、法務省の規定を確認。
- 合筆登記:同じく法務局で定める税率や定額が適用されます。
- 地積更正登記との関係
公図や登記情報と実際の地積が相違している場合、地積更正登記も同時に行うことがあります。境界紛争を回避するため、必要に応じて境界確定を先に実施。
弁護士に相談するメリット
- 紛争リスクの調整
分筆や合筆をめぐって、相続人間や共有者、隣地所有者とのトラブルが起きることがある。弁護士が交渉や調停をサポートし、円満な解決を導く。 - 契約書・合意書の作成
分筆後に売買や相続分割を行う場合、弁護士が売買契約書や遺産分割協議書を作成し、法的に確実な手続きを進められる。 - 境界紛争の手配
分筆にともない境界線を明確化する際、隣地所有者が異議を述べるケースがある。弁護士と土地家屋調査士が連携し、測量結果と法的主張で紛争を解消できる。 - 弁護士法人長瀬総合法律事務所の強み
当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、分筆・合筆を含む不動産登記手続きでの紛争や協議の実績を有し、土地家屋調査士との協働により安心・スムーズな登記を実現可能です。
まとめ
- 分筆登記
1つの土地を複数に区割り。売買や相続で部分的な処分をしたい場合に必須。 - 合筆登記
複数の隣接土地を1筆にまとめる。管理や課税がシンプルになるが要件あり。 - 測量と登記
分筆時には土地家屋調査士の測量が必須。合筆も隣接条件や地目統一が必要。 - トラブル防止
隣地との境界問題や相続人との共有問題が絡む場合、弁護士や調査士の助言が円滑化に貢献。 - 正確な登記こそが安全な取引の土台
分筆後の売買や合筆後の管理において、法的リスクを抑えるためにも専門家と連携して正確な手続きを踏むことが大切。
分筆・合筆登記は不動産取引や財産管理の自由度を高める一方で、境界確定や共有者同意といった問題がつきまとうため、専門家の協力が有用です。適切な測量と登記があってこそ、安全な財産処分・活用が実現します。
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