はじめに
ネット上で誹謗中傷や名誉毀損の被害に遭った場合、初動が極めて重要です。被害を最小限に抑えるためにも、どのような行動を取るかによって、その後のトラブル対応が大きく左右されます。しかし、実際に中傷を受けると動揺してしまい、どこに相談すればよいのか、何から手をつければよいのか分からなくなる方も少なくありません。
本稿では、「ネット中傷・名誉毀損を受けた場合の初期対応」として、証拠保全のポイントや削除依頼の流れ、相談先の具体例などをわかりやすくご紹介します。被害に遭ったときに慌てず対応するためのマニュアルとして、ぜひご一読ください。
Q&A
Q1:ネット上の中傷を発見したら、まず何をするべきですか?
最優先で証拠を確保しましょう。書き込みのスクリーンショット、投稿URL、日時などを記録し、保存しておきます。ログや画面キャプチャを取らずに放置すると、削除・改ざんなどで証拠が失われる恐れがあるためです。
Q2:削除を依頼したい場合、どこに連絡すればいいですか?
投稿されたプラットフォーム(SNSや掲示板など)の運営会社や管理者に連絡します。多くのサービスでは、ガイドライン違反の報告フォームや問い合わせ窓口が設けられています。それでも対応が得られない場合は、プロバイダ責任制限法に基づく手続きや弁護士を通じた請求を検討します。
Q3:削除してもらえない場合、どうすればいいのでしょうか?
プロバイダ責任制限法に基づく「送信防止措置依頼書」を送るか、仮処分手続きを経て裁判所命令として削除を求める方法があります。弁護士に依頼すると、運営会社や裁判所への手続きがスムーズです。
Q4:警察にすぐ相談すべきでしょうか?
ネット上の誹謗中傷は、すぐに犯罪として捜査が開始されるケースは多くありません。ただし、脅迫や業務妨害など明らかに犯罪性が高い行為がある場合は、早期に警察への相談も検討すべきです。名誉毀損罪は親告罪なので、弁護士と相談して告訴状を出すかどうか判断します。
Q5:匿名での投稿でも特定できるのですか?
完全に匿名であっても、アクセスログなどからIPアドレスを辿り、プロバイダ責任制限法に基づく手続きで投稿者を特定できる可能性があります。ただし時間が経つとログが消去される場合もあるため、早期対応が重要です。
解説
初期対応の重要性
インターネット上の書き込みは、一度拡散されると被害が急速に広がり、取り返しがつかなくなる恐れがあります。特にSNSでは「リツイート」や「シェア」機能であっという間に多くの人の目に触れ、デマや悪評が定着してしまうことも珍しくありません。
- 証拠保全
誹謗中傷が発覚したら、まず書き込み内容のスクショや保存を行い、日時やURLを記録 - 拡散防止
削除依頼や通報を行い、二次被害を防ぐ対策を早急に進める - 心理的ダメージの軽減
相談先を確保し、一人で抱え込まないようにする
具体的な初期対応ステップ
- 証拠の確保
- スクリーンショットだけでなく、ページ全体をPDF化する、ウェブ魚拓を取るなど、さまざまな方法で保存
- 投稿者名、ID、投稿日時、URLなど細かく記録しておく
- プラットフォーム管理者への通報・問い合わせ
- 各SNSや掲示板で設置されている「違反報告フォーム」や「ヘルプセンター」を利用
- 違反行為(誹謗中傷、プライバシー侵害など)の具体的内容を明記
- 削除依頼の文書送付
- 運営会社の削除基準に従っても対応されない場合、正式な削除依頼書を送付
- プロバイダ責任制限法に則った手続きを検討
- 専門家への相談
- 早期に弁護士へ相談し、発信者情報開示請求や仮処分などの法的手続きも視野に入れる
- 悪質なケースでは刑事告訴を検討し、証拠の整理や告訴状作成を弁護士に依頼
相談先の具体例
- 弁護士
ネットトラブルに詳しい弁護士なら、削除依頼や損害賠償請求、発信者特定、刑事告訴など包括的にサポートが可能です。早期相談が望ましいです。 - 警察・サイバー犯罪相談窓口
脅迫や殺害予告など悪質性が高い場合、警察に相談することで捜査が始まる可能性が高まります。 - 公的な相談機関
地方自治体や法テラスの無料相談を利用する方法もあります。ただし、緊急性がある場合や高度な専門知識が必要なケースでは弁護士への直接依頼が望ましいです。 - プロバイダ(インターネットサービスプロバイダ)
投稿のあった掲示板やSNS運営会社が対応してくれない場合、IPアドレスなどの情報を持っているプロバイダへの問い合わせを行うケースがあります。
削除依頼と発信者情報開示請求
- 削除依頼
- プラットフォーム運営会社や管理者に対して、誹謗中傷投稿の削除を求める手続き
- 運営側が応じなければ裁判所を通じた「仮処分命令」を検討する
- 発信者情報開示請求
- 匿名の加害者を特定するため、プロバイダ責任制限法に基づき裁判手続きを行う
- IPアドレス、タイムスタンプなどから投稿者の氏名や住所、メールアドレスを開示させる
- 特定後は損害賠償請求や刑事告訴が可能
精神的ケアの重要性
誹謗中傷被害に遭うと、被害者は強いストレスや不安、ショックを受けます。一方で「自分が悪いのではないか」「騒ぐとさらに炎上するかも」と葛藤し、適切な対応が遅れてしまうケースもあります。
- 信頼できる人に相談:家族や友人、専門家とのコミュニケーションが大切
- 医療機関のサポート:精神的につらい場合はカウンセリングや心療内科の受診も視野に
弁護士に相談するメリット
証拠保全のアドバイスと実践
- 弁護士はどのような情報・資料が重要な証拠になるか熟知しています
- 初期段階で適切に証拠を収集・保全し、後の手続きを有利に進められます
削除依頼や仮処分による迅速な対応
- 弁護士名義で運営会社に連絡することで、相手方が早期に対応を検討する可能性が高まります
- 削除されない場合は、仮処分を申し立てて裁判所命令で削除を実現する手段もとれます
発信者情報開示請求・損害賠償請求
- 加害者が匿名でも、法的手段を駆使して特定し、損害賠償の請求や刑事告訴が可能
- 弁護士が全過程をサポートし、被害者の負担を軽減
精神的サポートと交渉力
- 被害者が直接やり取りすると、相手や管理者と感情的な衝突が生じるリスク
- 弁護士が代理人となることで、冷静かつ迅速に問題を解決できる見込みが高い
まとめ
中傷を受けた際の初期対応として重要なのは、証拠の確保と迅速な行動です。特にインターネット上では拡散力が強いため、削除依頼や発信者情報開示請求を早めに進めることで被害を最小限に抑えることが期待できます。
- 初期対応のステップ
- 証拠保全(スクリーンショット、URL、投稿日時)
- プラットフォームへの通報・削除依頼
- 必要に応じて仮処分や発信者情報開示請求
- 警察への相談や告訴も視野に(犯罪性が高い場合)
- 弁護士への相談で総合的な対策を検討
被害者が一人で抱え込むと、精神的にも追い詰められ、事態は悪化の一途をたどります。専門家や家族・友人に早めに相談することで、最善の解決策を見つけられるでしょう。もしお困りの方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所までご相談ください。
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