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事前予約金・内金の返金トラブル

はじめに

成人式に向けたヘアメイク・着付けの予約では、事前予約金(内金)を受け取るサロンが多くあります。これは、キャンセル防止や施術枠の確保などの目的がありますが、一方で「クーリングオフは適用されるのか」「キャンセルした場合、返金はどうなるのか」といった疑問やトラブルも生じやすいです。

特に成人式は一年で最も混雑するイベントのひとつですから、サロン側も事前に支払いを受けることで準備を進めたい反面、お客様からすると「予想外の事情でキャンセルせざるを得ない」「直前に体調不良になった」など、さまざまなケースが考えられます。こうした状況で返金をめぐるトラブルに発展すると、お客様との関係だけでなく、サロンの評判にも大きく影響します。

本記事では、内金や事前予約金に関する法的リスクと、適切なキャンセルポリシーの設定方法、返金トラブルを回避するためのポイントについて解説します。

Q&A

事前予約金は必ず受け取らなければならないのでしょうか?

法律で義務付けられているわけではありません。多くのサロンでは、成人式シーズンの予約殺到や無断キャンセルを防止するために事前予約金を採用しています。実際に受け取るかどうかはサロンの判断次第です。

クーリングオフは適用されますか?

原則として、店頭やサロン内で契約を締結する場合は、クーリングオフの対象にはなりません(訪問販売など特定の販売形態に適用される制度です)。ただし、通信販売に近い形態や電話勧誘など、契約形態によっては例外があり得るので、契約書の取り交わし方と販売形態を確認する必要があります。

お客様からキャンセルされた場合、内金は返金しなくてもいいのでしょうか?

返金の可否や条件は契約書やキャンセルポリシーで定めるのが原則です。例えば「○日前までのキャンセルは全額返金、×日前からは返金なし」といった具体的ルールを明記していれば、その範囲で対応が可能です。ただし、あまりにも一方的な条件は消費者契約法等で無効とされるおそれがあるため注意が必要です。

施術当日を無断キャンセルされたらどう対応すればいいですか?

キャンセルポリシーで「当日キャンセルは全額請求」と定めていた場合でも、実際に全額請求が認められるかはケースバイケースです。裁判で争われると、損害額との関係や契約書上の規定が適切かどうかを判断されます。まずはお客様に理由を確認し、誠意ある話し合いの中で解決を図るとよいでしょう。

事前予約金の返金をめぐるトラブルを防ぐための具体策はありますか?

「契約書・規約の整備」「返金条件の明文化」「丁寧な説明と周知」がポイントです。口頭だけでなく、書面やウェブページに明記しておくとトラブル予防に役立ちます。

解説

事前予約金・内金とは

サロンが成人式のヘアメイクや着付けの予約を受ける際に、お客様から一部金額を前払いしてもらうシステムです。

キャンセルポリシーの設定

  1. キャンセル時期ごとの返金率
    • 施術日から〇日前までのキャンセルは全額返金
    • それ以降は一部返金または返金なし
  2. 例外規定
    • 天災や交通機関の大幅な遅延など、不可抗力の場合の取り扱い
    • 急病や怪我といったやむを得ない事情の場合の特別対応
  3. 契約書での明確化
    • 口頭説明だけでなく、書面(契約書や規約)で明示し、両者が署名・捺印または同意ボタンを押すなどの同意プロセスを踏む。

返金トラブルの事例

法的視点:消費者契約法との関係

キャンセル規定が一方的にサロン側のみ有利になる場合、消費者契約法に違反して無効と判断されるリスクがあります。

ポイント

弁護士に相談するメリット

  1. キャンセルポリシー・契約書のリーガルチェック
    消費者契約法や民法改正などの法令を踏まえ、適切な文言や返金条件を設定できる。
  2. 紛争発生時の対応サポート
    返金をめぐるトラブルが深刻化した場合、弁護士のアドバイスにより円滑な解決を図れる。
  3. 実際の損害算定や証拠保全の方法
    施術予約に対する損害額を正確に見積もることで、無理のないキャンセル料を設定可能。
  4. 長期的リスク管理
    毎年の成人式だけでなく、通常営業におけるキャンセルや予約金の運用も安定させられる。

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、美容業界の事前予約金・キャンセルポリシーに関する豊富な知見を有し、トラブル防止のための契約整備や紛争解決を幅広くサポートしております。

まとめ

成人式シーズンは、一年の中でも特にサロンの施術が集中する時期です。予約が重なるからこそ、事前予約金や内金をめぐる返金トラブルが起こりやすいといえます。

トラブルを未然に防ぐためには、キャンセルポリシーの明確化契約書への記載が不可欠です。加えて、消費者契約法などのルールに反しない形でルールを設定し、お客様に丁寧に説明することで、クレームリスクを大きく減らすことができます。万が一トラブルが発生した場合は、早めに弁護士へ相談し、適切な解決を図ることが重要です。


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