はじめに
会社の経営が破綻した場合、最後の手段として「破産手続」を選択することがあります。ところで、法人破産は一体「誰が」申し立てるものなのでしょうか? 破産手続の申立人には、債権者や代表者など、さまざまな立場から申立が可能です。
もっとも、実務上は代表取締役が弁護士を通じて法人破産を申し立てるケースが一般的です。そして、その過程では弁護士のサポートが欠かせません。本記事では、法人破産の申立人に関する基礎知識や、弁護士がどのように支援するのかについて解説します。倒産手続をスムーズに進めるためにも、正しい理解と準備が必要です。ぜひご一読ください。
Q&A
法人破産は代表取締役以外でも申し立てられるのですか?
破産法の規定では、会社(代表取締役)だけでなく、債権者からも申し立てることが可能です。ただし、実際には会社側(代表取締役)が自ら行うケースが大半です。債権者が強制的に破産申立をすることも可能ですが、費用や手間を考慮し、現実にはあまり多くありません。
法人破産の申立てにはどのような書類が必要になりますか?
登記事項証明書(商業登記簿謄本)や、過去の決算書類、財産目録、債権者一覧、申立書などが主な書類です。
弁護士を通さずに代表取締役が自力で申し立てることは可能ですか?
法律上は可能ですが、破産手続は煩雑で専門知識が求められます。必要書類の作成や裁判所・破産管財人との対応などをご自身が行うことはリスクが大きく、手続が長引いたり不備を指摘されたりするケースが多いため、弁護士のサポートを得ることが推奨されます。
債権者が法人破産を申し立てるメリットは何ですか?
債権者が申し立てる破産を「債権者破産」といいます。会社が明らかに支払い不能の状態にもかかわらず放置している場合、債権者は破産手続によって会社の資産を早期に清算させ、配当を得る目的があります。ただし、債権者が破産申立費用(予納金など)を負担しなければならないため、実際に行われる事例は限定的です。
弁護士がサポートすることで具体的にどんなメリットがありますか?
書類作成や裁判所対応、破産管財人とのやりとり、債権者対応など、手続全般をトータルにサポートしてもらうことが可能です。不正行為と疑われるリスクを回避するためのアドバイスや、代表者個人との連帯保証関係を踏まえた対応策の提案も受けることが期待できます。
解説
代表取締役による申立が中心
破産手続は、債権者でも行えますが、実務上は会社が主体的に申立てる「自己破産」がほとんどです。なぜなら、債権者破産などは費用も手間もかかり、その後の配当が見込めるかどうか不透明だからです。とりわけ中小企業の場合、資産がほとんど残っておらず、わざわざ債権者が費用を負担して破産を申し立てる意義が薄いケースが多いでしょう。
一方、経営者(代表取締役)としては、事業継続が困難になった段階で「自社の財産を整理し、合法的かつ公正な手段で債務を清算する」ために、破産申立を行います。これにより、連鎖倒産や訴訟リスクなどを最小限に抑えられるメリットがあります。
弁護士が果たす役割
法律実務の専門的サポート
破産手続は裁判所を通す正式な法的手続であり、多くの書類作成や厳格な手続きが要求されます。弁護士のサポートなしに進めると、不備やミスが起きやすく、手続がスムーズに進まない原因となるおそれがあります。
債権者との窓口
破産が見えてくると、金融機関や取引先などから厳しい取り立てや問い合わせを受けることが増えます。弁護士が代理人として介入すれば、基本的に債権者とのやりとりは弁護士が担当し、経営者の精神的・時間的負担が大幅に軽減されます。
偏頗弁済や資産隠しなどの違法リスク回避
破産申立前後の不適切な資産処分や特定債権者への優先支払いなどは、破産管財人から「偏頗弁済」や「不正行為」とみなされる可能性があります。弁護士のアドバイスを得ることで、こうしたリスクを最小限に抑えられます。
代表者個人破産への対応
中小企業では、代表取締役個人が連帯保証を負っていることが多いといえます。法人破産と同時に個人破産や個人再生を検討する必要があり、両者を一体的に進めることで手続や費用を効率化できます。
実務における申立手続の流れ
- 弁護士への相談・受任
会社の財務状況や債権者の数などをヒアリングし、弁護士が受任。 - 書類準備
債権者一覧、財産目録、過去の決算書類、法人税申告書、登記情報などを整理。 - 申立書の作成・提出
弁護士が裁判所に提出。予納金や印紙・郵券代などを納付する。 - 破産手続開始決定
裁判所が申立内容を審査し、要件を満たしていれば破産手続開始決定が下る。破産管財人が選任される。 - 破産管財人による調査・換価
会社の財産を換価し、債権者に配当する準備を進める。債権者集会が開かれる場合もある。 - 配当・手続終了
配当可能な財産があれば分配し、最終的に破産手続が終了。会社は法的に消滅する。
弁護士に相談するメリット
改めて、法人破産の申立において弁護士へ相談するメリットを整理してみましょう。
- 手続の的確な進行
書類不備や提出期限の遅れなどによる手続遅延を最小限に抑え、スピーディに破産申立を完了できます。 - 債権者対応のストレス軽減
破産申立を検討している段階で債権者からの取り立てが激化するケースも少なくありません。弁護士が代理人になれば、経営者個人への直接的な連絡を遮断できます。 - 不正リスクの回避
偏頗弁済や財産隠しなど、知らず知らずのうちに違法行為をしてしまうリスクを弁護士が指摘し、適切に是正することで、破産管財人や裁判所からの追及を防げます。 - 法人・個人のサポート
代表者が連帯保証をしている場合には、個人の債務整理も同時に検討する必要があります。弁護士が両面から対応を一元管理することで、スムーズな手続を実現できます。 - 将来の再スタートに向けたアドバイス
会社を破産させた後の代表者の再起や新たな事業チャレンジなど、アフターケアも含めて相談できます。
まとめ
法人破産の申立人は、会社(代表取締役)や債権者などがなり得ますが、実務上は会社側が自主的に申立を行うケースが圧倒的に多いといえます。その際、法律の専門家である弁護士の関与があるかないかで、手続の円滑さやリスク回避の度合いは大きく変わります。
- 代表取締役が申立人となるのが一般的
- 弁護士は書類作成・裁判所対応・債権者対応・不正リスク回避などで重要な役割を果たす
- 連帯保証のある場合は法人と個人を一体的に対応
破産は会社が消滅するため、経営者にとって非常につらい決断かと思います。ですが、適切な時期に正しい手続を踏むことで、従業員や取引先への影響を抑え、自身の再起を早めることにもつながります。決断が揺らいだときこそ、お早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所など専門家へ相談し、最良の道筋を模索しましょう。
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