はじめに

法人の経営が厳しく、破産を検討する状況においては、多くの経営者が不安を感じるでしょう。法人破産は複雑な手続きであり、事前準備や適切な対応を行わないと、手続きが遅延するだけでなく、法的な問題や追加的な責任を負う可能性があります。本記事では、「法人破産申立前に注意すべきポイント」と「適切な対策」について解説します。経営者としての判断や行動にお役立てください。

Q&A

Q: 法人破産を検討しています。何から始めればいいですか?

A: 法人破産を進める際には、まず事前にやるべきこと・やってはならないことを正確に理解する必要があります。特に重要なのは、財産の不当な処分を避けることや、早期に弁護士に相談することです。弁護士とともに手続きの流れを確認し、適切な準備を進めることで、トラブルを回避しスムーズな破産手続きが可能になります。本記事で詳しい注意点を確認してください。

法人破産とは

法人破産とは、企業の債務が支払い不能となり、裁判所を通じて財産を整理し、債権者への公平な配当を実現する法的手続きです。破産法に基づき、主に次の流れで進行します。

  1. 破産申立の準備
    財務状況の確認や必要書類の作成を行います。
  2. 裁判所への申立
    破産の事実を裁判所に認めてもらい、手続き開始決定を受けます。
  3. 破産管財人の選任
    破産管財人が財産を調査・管理し、適切な配分を行います。
  4. 債務の清算
    破産管財人が換価した資産をもとに債権者への配当を実施します。

破産手続きには、法的要件を満たす適切な準備が不可欠です。また、不適切な対応は刑事罰や追加の財務負担を招くリスクがあります。

法人破産申立前にやってはならないこと

法人破産をスムーズに進めるには、次の行為を厳格に避ける必要があります。

財産を不当に減らす行為

破産申立前に財産を処分すると、債権者に不利益を与える行為と見なされ、次のような問題を引き起こします。

  • 資産の無償または低額譲渡
    財産を無償や相場より著しく低い金額で譲渡する行為は、破産法上「否認権」に基づき破産管財人に取り消される可能性があります。
  • 財産隠匿や損壊
    財産を隠匿・破損する行為は、破産法第265条(詐欺破産罪)に該当し、刑事罰の対象となります。

特定の債権者への偏波弁済

「お世話になった人にだけ返済したい」と考えるかもしれませんが、破産手続きではすべての債権者を平等に扱う必要があります。

法的リスク

特定の債権者への返済は「偏波弁済」と見なされ、破産管財人から返還を求められる可能性があります。また、破産法により刑事罰の対象となる場合もあります。

法人破産準備中の留意点

破産準備期間中に注意すべき具体的なポイントを挙げます。

破産の事前通告を控える

破産予定を関係者に伝えることで、次のようなリスクが生じます。

  • 財産の散逸
    取引先や従業員が自らの利益を優先し、会社の財産を持ち去る可能性があります。
  • 信用の低下
    破産情報が外部に漏れることで、会社の信用が失墜し、正常な取引も困難になる場合があります。

現金を確保しておく

破産手続きには、弁護士費用や裁判所に支払う予納金が必要です。十分な現金を確保していないと、手続き自体が進行できない場合があります。

  • 予納金の目安
    管財人の報酬として、数十万円以上の費用が必要です。負債総額や事案によってはより高額になる場合もあります。

弁護士に相談するメリット

法人破産を進めるうえで、早期に弁護士に相談することが極めて重要です。

  1. 法的リスクの回避
    弁護士は、偏波弁済や財産処分など、破産における法的リスクを事前に指摘し、適切な対応策を提案します。
  2. スムーズな手続き進行
    弁護士が書類作成や裁判所とのやり取りを代行することで、煩雑な手続きを効率的に進められます。
  3. 精神的負担の軽減
    破産に伴う法的問題や関係者との調整は、経営者にとって大きなストレスです。弁護士のサポートにより負担を軽減できます。

まとめ

法人破産申立前に注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 財産を不当に減らさないこと
  • 特定の債権者だけに返済しないこと
  • 破産予定を周囲に知らせないこと
  • 弁護士へ早期に相談すること

破産は経営者にとって苦渋の決断ですが、適切な準備と弁護士の支援を受けることで、新たなスタートの準備が可能です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、法人破産に関する豊富な経験を活かし、スムーズな手続きをサポートいたします。お気軽にご相談ください。

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