はじめに

企業経営者の方から、次のような質問を受けることが増えています。

Q:従業員に退職を勧める際、どのように進めれば良いのでしょうか？また、退職勧奨と解雇は何が違うのでしょうか？

A:退職勧奨とは、従業員との話し合いを通じて退職を促す手法です。解雇のように一方的に雇用契約を終了させるのではなく、合意による退職を目指す点が特徴です。ただし、退職勧奨の進め方を誤ると、従業員から不当な圧力を受けたとみなされ、法的リスクが生じる可能性があるため、慎重な対応が求められます。この記事では、退職勧奨の流れ、法的注意点、企業と従業員双方のメリットとデメリットについて解説します。

退職勧奨とは？

退職勧奨（たいしょくかんしょう）とは、会社が従業員に対して自主的な退職を促す行為です。企業の経営方針の変更や人員整理が必要となった際に、従業員と対話し、円満な形で退職してもらうことを目的とします。

退職勧奨の特徴

  • 合意退職を目指す：解雇とは異なり、双方の話し合いによる合意に基づいて退職が行われる。
  • 対話重視：従業員の意見や希望を尊重しながら、退職を促すため、企業と従業員の関係が比較的円満に保たれる。
  • 法的リスクの軽減：退職が合意のもとに行われるため、解雇のような不当解雇のリスクが低い。

退職勧奨と解雇の違い

退職勧奨と解雇はどちらも雇用契約を終了させる手段ですが、根本的な違いがあります。

退職勧奨

  • 話し合いの結果に基づく：従業員と企業が合意に至った場合のみ退職が成立します。
  • 会社都合退職となる可能性：退職勧奨の結果、従業員が退職すれば、通常は「会社都合退職」となります。これにより、失業保険を受給できる期間が早まります。

解雇

  • 一方的な終了：企業が一方的に雇用契約を終了させる行為です。正当な理由がない場合、従業員から「不当解雇」として訴えられるリスクが高まります。

退職勧奨のメリットとデメリット

企業側のメリット

  • 法的リスクの低減：解雇に比べて、従業員との法的なトラブルに発展するリスクが低い。
  • スムーズな退職プロセス：対話を通じて合意を得るため、従業員との関係が悪化しにくい。

企業側のデメリット

  • 従業員が応じない場合：従業員が退職勧奨に応じなければ、合意退職は成立しないため、次の手段を検討する必要があります。
  • 強要と見なされるリスク：執拗に退職を促すと、退職強要とみなされ、損害賠償請求のリスクが発生する可能性があります。

従業員側のメリット

  • 条件交渉が可能：退職に応じる際に、金銭的な補償や再就職支援などの条件交渉ができます。
  • 失業保険の受給が早い：退職勧奨による退職は、会社都合退職といえ、自己都合退職に比べて失業保険を早く受給できます。

従業員側のデメリット

  • 職を失う不安：合意の上で退職に至った場合でも、再就職が必ずしも保証されているわけではないため、将来的な不安が残ります。

退職勧奨の進め方

退職勧奨は、慎重に進める必要があります。ここでは、一般的な流れを紹介します。

1.社内での方針決定

まずは退職勧奨を行う方針を固め、人事部門や経営層が合意の上で進めます。

2.勧奨理由の整理

従業員に対して明確な理由を伝えるため、事前に理由を整理します。曖昧な表現ではなく、具体的なトラブルや業務上の問題点を示すことが重要です。

3.従業員との面談

事前準備を整えた上で、対象の従業員に退職を勧める面談を行います。従業員が録音している可能性を考慮し、冷静かつ客観的な態度で話し合いを進めましょう。

4.回答期限の設定と条件のすり合わせ

従業員に即答を求めるのは得策ではありません。一定の回答期限を設け、双方で条件を調整する余地を残します。

5.合意書の作成

退職に関して合意に至った場合、合意書や退職届を提出してもらい、法的に問題のない形で終了します。

退職勧奨を行う際の注意点

  • 不当な圧力をかけない：退職勧奨はあくまで話し合いの一環であり、従業員に圧力をかけることは厳禁です。
  • 法的なサポートを受ける：弁護士など専門家のアドバイスを受けながら進めることが、企業にとってリスクを減らす手段となります。

弁護士に相談するメリット

退職勧奨の進め方に不安を感じた場合や、法的なリスクを最小限に抑えたい場合は、弁護士に相談することが有効です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労働問題に精通した弁護士が以下のようなサポートを提供しています。

  • 法的リスクの診断：退職勧奨が適法かどうか、事前にチェックします。
  • 退職合意書の作成：法的に有効な退職合意書の作成をサポートします。
  • トラブル時の対応：従業員とのトラブルが発生した際、迅速かつ的確に対応します。

まとめ

退職勧奨は、従業員と企業の双方にとって円満な退職を実現するための有効な手段です。ただし、進め方を誤ると法的リスクが伴うため、適切なプロセスを踏むことが不可欠です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、企業が抱える退職勧奨に関する悩みに対し、法的なサポートを提供しています。ぜひご相談ください。

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