法人破産における取締役の責任とは?
Q: 会社が破産した場合、取締役はどのような責任を負うことになるのでしょうか?
A: 会社が破産すると、経営者である取締役は「自分のせいだ」と感じるかもしれませんが、法律上、取締役個人が直ちに責任を問われるケースは多くありません。会社と取締役個人は別人格であるため、会社の破産がそのまま取締役の法的責任には直結しません。ただし、いくつかの例外や注意すべき点がありますのでご注意ください。
取締役の一般的な責任
1. 取締役が法的責任を負うことは稀
会社が破産した場合でも、取締役が直接法的責任を負うケースは稀です。破産しても、取締役個人に対する損害賠償請求や刑事告訴に発展することはあまりありません。これは、会社と取締役個人が法律上別の人格であるためです。ただし、取締役としての行為が会社法に反する場合や、違法行為があった場合には責任を追及される可能性があります。
2. 取締役が連帯保証人である場合の影響
多くの場合、会社の代表者は会社の借入に対する連帯保証人となっています。会社が破産すると、代表者としての取締役は、その連帯保証債務を支払う責任が生じることがあります。このため、取締役が自己破産に追い込まれるケースも少なくありません。特に、法人破産時に連帯保証債務がある場合には、個人としての資産を守るためにも弁護士への相談が重要です。
取締役が損害賠償請求を受ける場合
1. 善管注意義務と忠実義務
取締役には、会社法第423条・第429条に基づく「善管注意義務」および「忠実義務」が課されています。これらは、取締役が法に基づいた適切な判断を行い、会社の利益のために行動することを求めるものです。この義務に違反した場合、会社や第三者に対する損害賠償責任を負う可能性があります。
2. 経営判断の原則
取締役には広い裁量権が認められており、経営判断のミスだけでは通常、責任を問われることはありません。裁判所は「経営判断の原則」に従い、取締役の判断が常識的であったかどうかを評価します。しかし、粉飾決算や財産隠しなどの重大な違法行為があれば、破産手続の中で「役員責任査定」によって損害賠償請求がなされる場合があります(破産法第178条)。
取締役が刑事罰を受ける可能性
1. 詐欺破産罪や特定の債権者に対する担保供与等の罪
法人破産に際して取締役が刑事罰に問われる場合もあります。破産法第265条には「詐欺破産罪」、第266条には「特定の債権者に対する担保供与等の罪」が規定されています。
2. 弁護士の早期相談の重要性
これらの刑事罰に問われないためにも、破産手続においては取締役が慎重に行動することが求められます。破産に伴う会社財産の処分や支払いについては、事前に弁護士に相談し、違法行為とならないよう注意を払いましょう。
弁護士に相談するメリット
会社が破産する際、取締役としての責任を明確にし、トラブルを未然に防ぐためには弁護士のアドバイスが非常に重要です。以下のようなメリットがあります。
- 法律の専門知識によるサポート: 取締役の責任が発生するかどうかについて、法的に正確な判断を受けることができます。
- 破産手続の円滑な進行: 破産手続が複雑化しないよう、弁護士がスムーズに進行させるサポートを行います。
- トラブルの回避: 詐欺破産罪などの刑事罰に問われないよう、事前に適切な指導を受けられます。
まとめ
会社が破産した場合でも、取締役個人が直ちに責任を負うケースは多くありません。しかし、取締役の行動や判断によっては、損害賠償請求や刑事罰に発展する可能性があります。特に連帯保証債務が絡む場合や、不適切な財産処分を行った場合は注意が必要です。取締役としての責任を果たすためにも、破産手続前後に弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
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