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残業代の割増賃金とその計算方法

はじめに

本稿では、残業代の発生する仕組みや割増賃金の計算方法について、企業経営者の皆様からよくいただく質問に基づき、詳しく解説します。労働基準法に定められたルールを理解し、適切な対応を取ることで、労働トラブルを未然に防ぐことが可能です。

Q&A:企業経営者からの質問

Q1: うちの会社では、従業員がよく残業をしていますが、残業代を必ず支払う必要がありますか?

A: はい、従業員が法定労働時間を超えて働いた場合、残業代を支払う義務があります。法律で定められた「36協定(さぶろくきょうてい)」が締結されている場合でも、残業には割増賃金が発生します。法定労働時間を超えた時間外労働、深夜労働、休日労働など、それぞれに異なる割増率が適用されますので、正確に計算することが重要です。

Q2: 残業代の割増賃金の計算方法が分かりません。どうやって計算すれば良いですか?

A: 残業代の計算は、通常の賃金に一定の割増率を乗じて算出します。たとえば、法定時間外労働には1.25倍、深夜労働には1.25倍、休日労働には1.35倍の割増率が適用されます。これらを正確に計算するためには、まず従業員の通常の賃金を基に計算を行います。具体例や詳細な計算式は後述します。

残業代が発生する仕組み

法定労働時間の理解

日本の労働基準法では、労働時間は1日8時間、1週間で40時間を超えないように制限されています。この基準を超えて働いた場合、企業は従業員に対して割増賃金を支払う義務があります。 

例外的に、常時10人未満の事業所では、1週間44時間まで認められるケースもあります。

36協定(労使協定)

企業が法定労働時間を超えて従業員に働いてもらうためには、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。この協定により、法定労働時間を超える残業が可能になりますが、適切な割増賃金を支払わなければならないことに変わりはありません。

割増賃金が発生するタイミング

法定時間外労働と割増賃金の適用

残業代は、以下のケースで発生します。

たとえば、従業員が月曜日に9時間、火曜日に7時間、木曜日に10時間働いた場合、月曜日に1時間、木曜日に2時間が法定時間外労働に該当します。この3時間分については、通常の賃金に1.25倍の割増率を適用します。

割増賃金の計算方法

割増率の計算

法定時間外労働や休日労働に対しては、次の割増率が適用されます。

労働時間 割増率
法定時間外労働 1.25倍
休日労働 1.35倍
深夜労働(22時~5時) 1.25倍
時間外労働 + 深夜労働 1.5倍
法定休日労働 + 深夜労働 1.6倍

具体例として、月給30万円の従業員(1日所定労働時間8時間、1ヶ月所定勤務日数20日)が月に5時間の時間外労働を行った場合、次のように計算されます。 

時間外労働でも割増賃金が不要なケースはある?

変形労働時間制や裁量労働制の活用

特定の業種や職種においては、変形労働時間制や裁量労働制が採用できるケースがあります。これにより、特定の期間に労働時間を調整することが可能です。たとえば、繁忙期に労働時間を延ばし、閑散期に短縮するなどして、法定時間外労働を抑制することができます。

固定残業代制の注意点

固定残業代制とは? 

一部の企業では、固定残業代制を採用しています。これは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含める制度ですが、従業員が見込みを超える残業をした場合、超過分の割増賃金を支払う必要があります。

残業代請求を未然に防ぐための対策

残業代請求を防ぐためには、次の対策が有効です。

  1. 適切な労働時間管理
    労働時間を厳密に管理し、従業員の労働時間を正確に把握することが重要です。
  2. 無駄な残業を抑制
    変形労働時間制の導入や、業務効率を向上させることで、不要な残業を減らすことが可能です。
  3. 労働契約の明確化
    就業規則や労働契約を明確にし、残業代に関する規定を従業員に周知徹底しましょう。

まとめ

残業代や労働時間に関するルールを遵守することは、企業にとって重要なリスク管理の一環です。適切に対応することで、トラブルを未然に防ぎ、従業員のモチベーションを保つことができます。万が一、残業代請求が発生した場合は、速やかに弁護士に相談し、法的に適切な対応を取ることもご検討ください。

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