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団体交渉について1

はじめに

最近、会社と従業員との間のトラブルについて、「ユニオン」(合同労組)と呼ばれる会社外部の団体から、突然、団体交渉の申し入れがなされるというケースが増えており、この点について会社の経営者の方からのご相談も多くなってきています。今回は、このユニオンから団体交渉の申し入れがなされた場合における、会社としての注意点をご説明したいと思います。

ユニオン(合同労組)とは

ユニオンとは、合同労組(合同労働組合)と呼ばれる会社の外部の組織です。どこの会社に勤めているかということとは無関係に、労働者であれば誰でも加入することのできる労働組合です。

会社と従業員との間で労働トラブルが発生した場合に、従業員がユニオンに加入して、ユニオンから団体交渉の申し入れがなされることになります。残業代の未払いや不当解雇、最近ではパワハラに伴うメンタルヘルスの問題をめぐるトラブルをめぐってユニオンが介入することが多いといえます。

団体交渉とは

そもそも団体交渉とは何でしょうか。

団体交渉とは、労働者が労働組合を結成して、会社(経営者)と労働問題について交渉を行うことをいいます。労働者個人の力だけでは会社と交渉しても力が弱いため、労働組合を結成して、会社と対等に交渉を行うことが認められているのです。労働者が労働組合を結成して団体交渉を行う権利は憲法で保障されており、その裏返しとして、会社には団体交渉に応じる義務があることが労働組合法という法律で規定されています。

これまでに団体交渉を行ったことがある経営者の方であればともかく、普通の経営者の方は、団体交渉の経験などない方が圧倒的に多いことでしょう。そのため、ある日突然、見知らぬユニオンなる団体から「組合加入通知」「団体交渉の申し入れ」をされて驚き、慌ててしまうというケースが多く見受けられます。

しかし、以下に述べるとおり、ユニオンから団体交渉の申し入れをされたとしても、決してユニオンの言いなりにならなければならないわけではありません。よく考えずに焦ってしまうことは一番避けなくてはなりません。

以下の内容をご覧いただき、間違った対応をしたため会社に不利益な事態となってしまうことを避けるようにしてください。

ユニオン(組合)加入通知書

会社と労働トラブルを抱えた従業員の方がユニオンに加入すると、まずユニオンから会社宛てに「労働組合加入通知書」が送付されてきます。

これには当該従業員の方がユニオンに加入したこと、および、今後、会社は当該従業員に対して直接交渉や不利益取扱いなど(このことを「不当労働行為」といいます)をしないよう要求する内容が書かれています。

ユニオン加入の経緯を問いただす行為は避ける

多くの経営者の方は、まずこの通知書を見て、慌てて従業員の方に電話してしまい、「なんで勝手にこんな団体に入るんだ」「何も聞いていないぞ」「どういうつもりだ」などと、従業員の方に対して詰問したりすることが非常に多く見受けられますが、これは絶対に禁物です。

このようなことを行うと、あとでユニオンから「不当労働行為だ」と主張され、会社が不利な立場に追い込まれてしまいます。とくに会社内に労働組合など存在しない会社の経営者の方は知識がないため、とくにこのような行動に走りがちですので注意してください。

あとから「従業員を威圧するつもりや、直接交渉するつもりなどはなかった、単に事情を聞こうと思っただけだ」と弁解しても、このような主張はまず認められません。従業員が見知らぬ団体に加入したことで一瞬、焦ってしまう気持ちも分かりますが、このような対応は後になって会社にとって不利になりますので、ユニオンから通知が届いたあとは、従業員に対して個別に連絡を取り、ユニオン加入の経緯を問いただすなどの行為は避けてください。

団体交渉要求書

先に述べた「組合加入通知書」とともに、ユニオンから「団体交渉要求書」が送付されてくるのが通常です。ここではユニオン側から会社に対する要求事項がいくつも列記され、また団体交渉の日時・場所が指定されています。

ここでも焦ってしまう経営者の方も多くいらっしゃいます。要求事項を読んで、ユニオンの要求が納得できないとして怒り出す方も多いのですが、決してユニオンからの要求事項をすべて受け入れなければならないわけではありません。ひとまず落ち着いて、「これは単にユニオン側の言い分に過ぎない」と考えてください。

日時の検討をする

また、団体交渉の日時・場所が一方的に指定されてきますが、これも従わなくてはいけないものではありません。指定された日時が会社にとって都合が悪いこともあるでしょうし、当然、会社側の準備期間も必要です。開催の日時としては、準備期間も考慮したうえで、会社の業務の差し支えとならないように、就業時間は外して設定すべきです。

開催場所を検討する

また団体交渉の開催場所も、ユニオン側に有利な場所が一方的に指定されてくるのが通常ですので、会社側にとって距離的に有利な、近場の有料の貸し会議室などを借りておくことが良いです。

この点で「従業員が勝手にユニオンに入ったのに、なんで団体交渉の場所を会社側で費用を負担しなければならないんだ」として、会社側が場所を借りることに違和感を持つ経営者の方もいらっしゃいますが、開催場所を会社側で決定することでイニシアチブを取るメリットがありますし、貸し会議室等を借りる費用もさほど高額ではありませんので、ここはぜひ会社の費用で場所を確保しましょう。時間としては2時間程度の予約がおすすめです。

回答書を送付する

このように、日時・場所については会社側で検討させてほしいとして、回答猶予を求める回答書を送付することが良いでしょう。

ユニオンが申し入れてきた団体交渉要求書に対しては、このように「検討させてほしい」という回答猶予の回答書をすみやかに送付したうえで、具体的な開催の日時・場所については、会社側で別途、専門家に相談して決めていくのがよいでしょう。

ただ、誤解してはいけないのですが、確かに、一方的にユニオンが指定してきた団体交渉要求書の内容をすべて受け入れる必要がないことはそのとおりですが、他方で、会社にはユニオンと誠実に交渉する義務があります。そのため、団体交渉の日時・場所については、会社側はすみやかに回答すべきですし、またユニオンからの質問事項に対しては、可能な限り資料等の裏付けとともに、具体的に回答を行う必要があります。

そのようなきちんとした対応を行わず、「ユニオンの言い分は勝手すぎる。納得できない」などとして、ユニオンとの交渉を拒絶して返事もせずに無視していると、ユニオンから都道府県の労働委員会にあっせんを申し立てられてしまい、かえって解決までの費用も時間もかかることになりますので、そのような対応は絶対に避けてください。

まとめ

このように、ユニオンとの交渉は、すべて受け入れる必要はない反面、誠実に交渉していかなければならないという、難しい舵取りを求められます。そのため、ユニオンから団体交渉要求書が届いた場合には、ユニオンとの交渉の経験の豊富な弁護士にご相談することをおすすめいたします。

当事務所は多数のユニオンとの交渉経験がありますので、ぜひご相談ください。

引用

こちらは2019年9月に発行したニュースレター「NS NEWS LETTER vol.33」に掲載されたものと同内容です。

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