はじめに

家賃滞納者への督促、売買代金の請求、契約解除の通知など、不動産取引においては、相手方に対してこちらの意思を明確に、かつ、証拠が残る形で伝えることが重要となる場面が多々あります。その際に活用されるのが「内容証明郵便」です。

内容証明郵便は、ご自身で作成して送付することも可能です。しかし、法的な紛争に発展する可能性のある重要な局面では、法律の専門家である弁護士に作成・送付を依頼することをお勧めします。弁護士名で送付される内容証明郵便は、ご自身で送付するものとは異なる効果を発揮することがあるからです。

この記事では、内容証明郵便とは何か、その基本的な効力から、弁護士に依頼した場合の費用と具体的なメリット(効果)について、弁護士法人長瀬総合法律事務所が詳しく解説します。

Q&A

Q1. 内容証明郵便とは、どのような郵便ですか?法的な強制力はありますか?

内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛てに差し出したか」を日本郵便が証明してくれるサービスです。しかし、明確に理解すべきは、内容証明郵便自体に、支払いを強制したり、退去を強制したりするような法的な強制力はないということです。その力は、否定できない「証拠」を創出し、裁判手続きへ移行する「意思」を相手に明確に示す点にあります。

Q2. 内容証明郵便の作成・送付を弁護士に依頼すると、費用はいくらかかりますか?

法律事務所によって異なりますが、一般的には5万円~10万円程度(実費別)が相場です。費用は、事案の複雑さや、文書作成のために必要な調査の程度によって変動します。当事務所では、ご依頼いただく前に必ず費用について明確にご説明いたします。

Q3. 自分で作成する場合と、弁護士に依頼する場合とでは、何が違うのですか?

主な違いは「法的効果の確実性」と「相手への影響力」です。弁護士が作成する文書は、後の訴訟も見据えた戦略的な内容になります。また、「弁護士法人〇〇法律事務所 弁護士〇〇」という差出人名義は、相手に対し「法的手続きの準備が整った」という本気度を伝え、自主的な支払いや交渉に応じさせる心理的効果が期待できます。

1.法的な仕組み:単なる手紙ではない理由

内容証明郵便が持つ法的な役割は、主に以下の3点です。

法的要件の充足

賃貸借契約の解除など、法律上の効果を発生させるためには、「相当の期間を定めて催告した」といった事実(法律要件)が必要になる場合があります。内容証明郵便は、この「催告」という行為を公的に証明する、確実な手段の一つです。

時効の完成猶予・更新

債権には消滅時効があります。時効完成が間近に迫っている場合でも、内容証明郵便で「催告」を行うと、民法第150条の規定により、時効の完成を6ヶ月間猶予させることができます。この6ヶ月の間に訴訟を提起するなどの次の手を打つための、時間を稼ぐことができます。

証拠能力

将来、裁判になった場合、内容証明郵便は「特定の日に、特定の主張・要求を相手方に通知した」という事実を証明する証拠となります。「そんな手紙は受け取っていない」「そんな内容は書かれていなかった」といった相手の言い逃れを封じることができます。

2.「弁護士効果」:差出人名が変わると全てが変わる理由

ご自身で作成・送付することも可能ですが、弁護士に依頼することで、以下のような効果が期待できます。

心理的圧力

これは大きな効果の一つかもしれません。個人名で届く督促状は無視していても、法律事務所の角印が押され、弁護士の名前で届いた文書となると、受け取った相手の態度は変わることがあります。「これは単なるお願いではない」「無視すれば次は裁判になる」というプレッシャーを感じ、それまで不誠実な対応をしていた相手方が、支払いや交渉に応じてくるケースは少なくありません。

法的正確性

ご自身で作成した場合、感情的な表現が入ってしまったり、法的に不適切な要求を記載してしまったり、逆に記載すべき重要な事項が抜けてしまったりするリスクがあります。弁護士は、請求の根拠となる事実と法律を的確に整理し、感情を排した冷静かつ論理的で、法的に非の打ち所のない文書を作成します。これにより、相手に反論の隙を与えにくくなります。

交渉窓口の一本化

弁護士名で文書を送付する際には、通常「本書面に関するご連絡は、当職(弁護士)までお願いいたします」という一文を入れます。これにより、以降の相手方からの連絡は全て弁護士が受けることになります。あなたは、相手方と直接やり取りをする精神的なストレスから解放され、冷静な対応が可能になります。

3.具体的な活用例

不動産取引において、内容証明郵便が効果を発揮する典型的な場面は以下の通りです。

  • 滞納家賃の支払い請求
  • 賃借人の契約違反(無断転貸など)を理由とする契約解除通知
  • 購入した不動産の欠陥(契約不適合)に対する修補または損害賠償請求
  • 隣地からの騒音や越境など、迷惑行為の差止請求
  • 相手方から提示された不当な示談案に対する正式な拒絶通知

まとめ

内容証明郵便は、単なる「手紙」ではありません。それは、こちらの法的な意思を明確に伝え、紛争解決への第一歩を刻む、戦略的なツールです。そして、その効果を高めるのが、弁護士による作成・送付です。

家賃滞納、契約違反、代金未払いなど、不動産に関する問題で相手方の不誠実な対応にお困りの方は、それを費用対効果の高い「最初の攻撃」と位置づけて、弁護士に相談することを検討してみてください。弁護士名での一通の内容証明郵便が、膠着した状況を打開するきっかけになるかもしれません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、内容証明郵便の作成に関するご相談も承っております。費用や期待できる効果について詳しくご説明いたしますので、お気軽にお問い合わせください。


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