はじめに
訴状を裁判所に提出してから、実際に法廷で第1回の裁判が開かれる(第1回口頭弁論期日)までには、どのくらいの時間がかかり、その間にはどのような手続きが進んでいるのでしょうか。原告にとっては、自分の訴えが相手に届き、裁判がいつ始まるのか、固唾をのんで待つ期間かもしれません。
この期間は、裁判所内で事務手続きや審査が行われると同時に、被告が訴訟の準備をするための重要な時間でもあります。この間の流れを理解しておくことは、その後の訴訟プロセス全体の見通しを立てる上で役立ちます。
この記事では、訴状の提出から第1回口頭弁論期日が開かれるまでの具体的な流れと、おおよその期間の目安について解説します。
Q&A:提訴から第1回期日までのよくある疑問
Q1. 訴状を裁判所に提出してから、最初の裁判が開かれるまで、だいたいどのくらいの期間がかかりますか?
あくまで一般的な目安ですが、訴状の提出から第1回口頭弁論期日までは、おおむね1ヶ月から1ヶ月半程度かかることが多いです。ただし、これは事案の複雑さ、裁判所の混雑具合、被告への訴状の送達がスムーズに進むか、といった要因によって変動します。例えば、被告が訴状の受け取りを拒否するなどして送達に時間がかかると、期日の指定もその分遅れます。
Q2. 訴状を送っても、相手が不在で受け取らなかったり、受け取りを拒否したりした場合は、裁判は始まらないのですか?
いいえ、そのような場合でも裁判を開始させるための手続きがあります。通常の送達(特別送達)ができない場合、裁判所はまず被告の勤務先に送達する「就業場所送達」を試みたり、それでもダメな場合は、書留郵便を発送した時点で送達が完了したとみなす「付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)」という手続きをとることができます。最終的には、裁判所の掲示板に掲示することで送達したとみなす「公示送達」という方法もあり、相手が行方不明でも裁判を進めることは可能です。
Q3. 第1回口頭弁論期日までに、原告側として何か準備しておくことはありますか?
第1回期日は、主に訴状と答弁書の陳述(内容の確認)が中心となるため、原告側に新たな準備が必須となるケースは少ないです。しかし、被告から提出される「答弁書」の内容は非常に重要です。弁護士に依頼している場合、弁護士は答弁書の内容を精査し、被告がこちらの主張を認めているのか、争っているのか、どのような反論をしてきているのかを分析します。そして、その反論に対する再反論を記載した「準備書面」の作成準備を始めるなど、第2回期日以降の戦略立案に着手します。
解説:訴状提出から第1回口頭弁論期日までの道のり
訴状を提出してから最初の裁判が開かれるまでのプロセスは、大きく4つのステップに分けることができます。
ステップ1:訴状の提出・受付・審査
まず、原告(または代理人弁護士)が管轄の裁判所に訴状を提出します。裁判所では、収入印紙や郵便切手、添付書類などに不備がないかという形式的なチェック(受付)が行われ、事件番号が付与されます。
その後、担当となった裁判官が訴状の内容を法的に審査し(訴状審査)、記載内容に不明瞭な点などがあれば、原告に修正を求める「補正」の指示が出されます。
ステップ2:被告への「訴状送達」- 裁判の始まりを告げる
訴状審査をクリアすると、いよいよ裁判所から被告に対して訴状が送られます。これを「送達(そうたつ)」と言います。
- 送達されるもの
裁判所は、原告が提出した訴状の写し(副本)と、第1回口頭弁論期日への「呼出状」、そして訴状に対する反論を記載するための「答弁書催告状」をセットにして、被告の住所地へ郵送します。 - 特別送達
この郵送は、「特別送達」という法律で定められた特殊な方法で行われます。郵便局員が名宛人に直接手渡し、受け取った旨のサイン(受領印)をもらうのが原則です。これにより、「いつ、誰が、確かに訴状を受け取ったか」が公的に証明されます。
被告がこの訴状を受け取った瞬間から、法的には訴訟に巻き込まれた当事者となり、定められた期間内に応答する義務を負うことになります。
ステップ3:期日の指定と「呼出状」の送付
被告への送達と並行して、裁判所は第1回口頭弁論期日の日時と場所(法廷の番号)を指定します。この日時は、裁判所のスケジュールや事案の内容を考慮して、裁判官が職権で決定します。そして、原告と被告の双方に、その日時と場所を記載した「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」が送付されます。
ステップ4:被告からの応答-「答弁書」の提出
呼出状を受け取った被告は、訴状に書かれた原告の請求や主張に対して、自身の言い分を記載した「答弁書(とうべんしょ)」を作成し、裁判所に提出しなければなりません。
- 答弁書の提出期限
通常、第1回口頭弁論期日の1週間前までに提出するよう求められます。 - 答弁書の内容
「請求の趣旨に対する答弁」(原告の請求を認めるか棄却を求めるか)と、「請求の原因に対する認否」(原告の主張する事実を認めるか否認するか)が記載されます。
この答弁書によって、被告が何を争うつもりなのかが初めて明らかになり、その後の訴訟の方向性が決まります。
そして、これらのステップを経て、指定された日時に第1回口頭弁論期日が開かれることになります。
【期間の目安】訴え提起から第1回期日まで
訴状提出から約1ヶ月~1ヶ月半後
この期間は、上記の各ステップにかかる時間の合計です。
- 訴状審査
数日~1週間程度(補正がなければ) - 期日指定と呼出状作成
数日 - 被告への送達
1週間程度(スムーズに進んだ場合) - 被告の答弁書作成期間
約2週間~1ヶ月程度
これらの期間はあくまで目安であり、当事者が遠隔地に住んでいる場合や、裁判所が多くの事件を抱え混雑している場合などは、2ヶ月以上かかることもあります。
弁護士に相談するメリット
この期間中、弁護士は依頼者の代理人として、以下のような重要な役割を果たします。
- 手続きの円滑な進行管理
弁護士は、訴状審査から送達、期日指定までの一連の流れを熟知しており、裁判所書記官と連携しながら、手続きが遅滞なく進むよう管理します。 - 相手方の答弁書の的確な分析
被告から答弁書が提出されると、その内容を法的な観点から詳細に分析します。相手の反論の要点や弱点を見抜き、それに対する再反論の準備を早期に開始することができます。 - 依頼者への的確な状況報告と見通しの説明
依頼者に対して、現在の進捗状況、相手方の主張内容、そして今後の審理がどのように展開していくかの見通しを分かりやすく説明します。これにより、依頼者は安心して訴訟に臨むことができます。
まとめ
訴状を提出してから第1回口頭弁論期日が開かれるまでの約1ヶ月から1ヶ月半は、水面下で裁判の準備が着々と進む重要な期間です。裁判所による審査、被告への送達、そして被告からの応答(答弁書)というステップを経て、いよいよ法廷での審理がスタートします。
この期間の流れを理解し、特に相手方から提出される答弁書の内容を分析することが、その後の訴訟を有利に進めるための鍵となります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、訴訟の開始から終結まで、依頼者と密に連携を取りながら、最善の解決を目指して伴走いたします。
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