解説動画
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- 00:39:リーガルメディアのご案内
- 00:53:相談事例
- 01:18:従業員に対する損害賠償請求の法的根拠
- 03:02:責任制限の法理
- 04:08:責任制限の法理に関する裁判例① 茨城石炭商事事件(最判昭51年7月8日)
- 04:56:責任制限の法理に関する裁判例② ガリバーインターナショナル事件(東京地判平15年12月12日)
- 06:11:給与との相殺
- 07:06:まとめ
- 08:00:弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート内容
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会社から従業員への損害賠償請求
自社の従業員が業務で使用する車両で事故を起こした場合や、第三者に損害を与えた場合など、従業員の行為がもとになって会社に損害が発生することがあります。
そのような場合、会社はその従業員に損害賠償の請求をすることができるのでしょうか。
法律上の整理
上記のような場合に、会社としては従業員にどのような請求ができるのか、法律上の整理をしてみましょう。
『民法第415条』
従業員の行為が、労働契約上の労務提供義務等に違反するものである場合には、「債務不履行」にあたり、以下の民法第415条において示されるように、会社は従業員に対して債務不履行に基づく損害賠償請求権を取得します。
民法第415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
『民法第709条』
従業員の行為が「不法行為」に該当するのであれば、会社は従業員に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を取得します。但し、会社は従業員の労働によって利益を得られる存在であるため、従業員の行為によって損害が発生したからといって、全責任を従業員に負わせることも適当とは言えません。
民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
『民法第715条』
従業員の不法行為により第三者に損害が発生した場合、使用者である会社が第三者に対して賠償を行うことがあります。その場合には、会社は従業員に対して損害賠償についての求償権を行使することができます。
民法第715条
第1項 本文
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。第3項
前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
責任制限の法理
上記のように従業員の行為で会社が損害を被った場合には、会社は従業員に対して、民法に基づいて損害賠償請求等をすることができます。しかし、これをそのまま適用してしまうと、会社に比べて資力の乏しい従業員を経済的な窮地に追い込むことになりかません。また、会社は従業員の使用により利益を得るのですから、従業員のミスについて従業員にだけ責任を負わせるのは不公平であるといえます。
そのため、判例では、たとえ従業員のミスによって損害が発生した場合であっても、従業員は会社の指揮命令を受けている点や従業員のミスは業務に内在している点を考慮し、従業員の責任を信義則により制限するという「責任制限の法理」がとられています。
以下、具体的な判例を二つご紹介いたします。
茨城石炭商事事件(最判昭51年7月8日)
業務で車両を運転していた従業員が、前方不注意で事故を起こし、会社の車両と相手の車両を破損した事件で、会社が従業員に対して修理代の全額を請求。判決では、信義則の観点から労働者の責任が制限され、会社側の請求額の4分の1のみ支払いが命じられました。
ガリバーインターナショナル事件(東京地判平15年12月12日)
本来は取引先からの入金後に車両の引き渡しをするルールになっているにも関わらず、従業員が取引先に騙されて入金前に車両の引き渡しをしてしまい多額の損害が発生。判決では、店長である従業員の重過失を認めつつ、損害賠償については請求額の2分の1としました。
給与との相殺
会社から従業員に対する損害賠償請求する場合でも、労働基準法第24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められていることから、給与と相殺はすることは原則できません。
また、賃金の相殺については、労働基準法第17条に「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」として前借金のみについて触れていますが、判例によって損害賠償金についても相殺禁止とされています。
まとめ
会社活動の中での従業員のミスはある程度やむを得ないものでもありますが、損害が重大である場合、従業員に対して賠償請求を検討することもあるかもしれません。
実際にどれくらい請求できるかについては、会社の事業内容、規模、従業員の業務内容、労働条件、勤務態度、行為態様、事故や事件の予防に対する取り組み等を考慮して決定されることになりますが、算定には専門的な知識も必要になります。
従業員が損害を発生させた場合の対応策でお困りのことがあればぜひ当事務所にご相談ください。
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