はじめに

ネット上の口コミやレビューに対し、企業や店舗がどのように返信・謝罪文を出すかは、ユーザーの印象を大きく左右するポイントです。特に、ネガティブな口コミに誠実かつ冷静に対応することで、クレームをポジティブに転換したり、他の潜在顧客へ「この企業はきちんと対応している」という安心感を与えたりする効果が期待できます。

しかし、一歩間違えば、「対応が冷たい」「言い訳ばかり」と受け取られ、逆に印象を悪化させるリスクもはらんでいます。そこで本稿では、口コミ・レビューに対する誠実な返信・謝罪文を書く際のポイントや、実際の文章例を示しながら、企業や店舗が心がけるべき注意点を解説します。ネット上でのコミュニケーションが苦手な方にも役立つ具体的な内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

Q&A

Q1:なぜ口コミへの返信が重要なのですか?

返信することで、「お客様の声を大切にしている」「迅速かつ誠実に対応している」という姿勢をアピールできます。クレームや低評価に対して逃げずに向き合うことで、他の閲覧者からの印象も良くなる可能性があります。

Q2:ネガティブな口コミに対しては、謝罪文を書かなければいけないのでしょうか?

不備や過失が実際にあった場合はしっかり謝罪すべきです。ただし、事実無根の内容である場合は、事実関係を冷静に説明しつつ、誹謗中傷や不当な書き込みに対しては毅然とした対応をとっても問題ありません。

Q3:謝罪文で具体的に何を書けばよいか分かりません。

一般的には「お詑びの言葉」「問題点の認識と改善策」「今後の方針」を含めると効果的です。謝罪に加えて、どのように問題を解決・防止するかを明確に示すことで、真摯な姿勢が伝わります。

Q4:どんな言葉遣いに気をつければよいのでしょうか?

丁寧な敬語を使いつつも、型通りのテンプレート文だけでは「本当に反省しているのか?」と疑問を抱かれかねません。具体的な状況やお客様の不満点に寄り添う言葉選びが重要です。

Q5:謝罪で終わらずに、逆にユーザーを納得させるような説明をしたいのですが大丈夫ですか?

根拠ある事実説明は必要ですが、言い訳に聞こえないように配慮しましょう。「言い分を押し付ける」のではなく、「事情を丁寧に説明し、今後は改善する」というバランスが大切です。

解説

誠実な返信・謝罪文を書くための基本ステップ

  1. 状況把握と事実関係の確認
    • 口コミの内容が事実か、誤解や事実無根ではないかを社内で調査。
    • 特に飲食店や宿泊施設の場合、いつ・どの従業員が担当し、何が問題になったのかを具体的に把握する。
  2. 謝罪の姿勢を示す
    • 不備や過失があったなら、まずは謝罪の言葉を最初に述べる。「申し訳ございませんでした」「深くお詫び申し上げます」などのフレーズを明確にする。
    • 単なる礼儀的な言葉にならないよう、できるだけ具体的に何に対して謝罪しているのかを明言。
  3. 問題点の認識と説明
    • どの部分がどのように問題だったか、具体的に説明。
    • ただし、ユーザーの主張が誤解や事実無根の場合は、冷静に事実関係を提示する。「当店では○○な対応を基本としていますが、今回の事例で何か至らない点があった可能性があるため詳しく確認します」といった形。
  4. 改善策や再発防止策の提示
    • 同様の問題が起きないよう、社内でどのように対策するかを簡潔に伝える。
    • 改善後の状況を報告するとなお良い(「このように変更しました」など)。
  5. 感謝と今後のフォロー
    • クレームを通じて改善のヒントをくれた顧客に感謝を伝えたり、またの機会があれば利用してほしいという希望を添えるなど、前向きなメッセージを盛り込む。

想定文章例

ケース1:飲食店で料理の味に対する不満が書かれた場合

例文

このたびは、当店の料理がご期待に沿えず、大変申し訳ございませんでした。具体的に「味付けが濃すぎた」とご指摘いただき、貴重なご意見として受け止めております。
早速キッチンスタッフと協議し、レシピを再点検のうえ味のバランスを改善いたしました。次回ご来店いただける機会がございましたら、ご満足いただけるよう尽力いたします。改めまして、この度はご不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。貴重なご意見、ありがとうございました。

ケース2:ホテルでの接客に関するクレーム

例文

このたびは、スタッフの対応に至らない点があり、ご不快な思いをさせてしまい深くお詫び申し上げます。○月○日にご利用いただいた際、フロントでの説明が不十分だったことを確認し、本人にも注意と指導を行いました。
当ホテルでは、お客様に快適にお過ごしいただくことを最優先に考えておりますが、今回はその理念に反する結果となり、申し訳ございませんでした。今後、スタッフ研修を見直し、より丁寧かつ親切な対応を徹底いたします。ご指摘いただいたことを糧に改善へ取り組んでまいります。

ケース3:ECサイトで商品不良を指摘された場合

例文

このたびは弊社商品に不備があったとのことで、大変ご迷惑をおかけいたしました。品質管理には細心の注意を払っておりますが、結果としてご不安やご不快な思いをさせてしまい、心よりお詫び申し上げます。

早速、在庫商品を再検品し、不良原因を特定するために生産ラインにも調査を依頼いたしました。万が一不良品が混在している場合は早急に交換対応を実施いたします。今後は検品体制をより強化し、再発防止に努めてまいります。貴重なご指摘をいただきありがとうございました。

誤解や事実無根の場合の対処

事実を示す

  1. 感情的に否定するのではなく、客観的なデータや証拠を含めて説明。
  2. 「当社としては○○の手順を踏んでおり、不正行為は確認されておりません。もし具体的な事例があれば調査いたしますのでご連絡ください」など。

不毛な争いを避ける

公開の場で応酬するのは逆効果。誹謗中傷の域に達している場合は、法的対応を視野に入れる。

口コミ返信・謝罪文作成の注意点

  1. 感情的にならない
    攻撃的な口コミに対し、感情的に反論すると炎上リスクが高まる。あくまで冷静に事実を整理して応じる。
  2. 長文になりすぎない
    細かすぎる経緯や言い訳は読み手が離れてしまう。必要な情報を簡潔にまとめる。
  3. 個人情報や社内秘密の記載に注意
    公開の場で詳細な個人データや社内情報を書いてしまうと、プライバシー・守秘義務等の問題が生じる可能性がある。
  4. テンプレートだけでは気持ちが伝わらない
    ある程度の定型文は必要だが、投稿の内容に合わせたカスタマイズを行わないと「機械的な対応」と思われてしまう。

弁護士に相談するメリット

投稿内容の違法性判断と削除対応

「侮辱罪や名誉毀損に該当する恐れがあるか」を法的に判断し、必要に応じて運営会社への削除依頼を行うかどうかの方針を決められます。謝罪や返信だけで解決できない場合、弁護士の見解が欠かせません。

発信者情報開示請求・損害賠償請求

悪質な誹謗中傷の場合、ただ謝罪文を出すだけでは済まないケースも。弁護士と連携することで、裁判所を通じた発信者情報開示請求や損害賠償手続きをスムーズに進められます。

企業の危機管理マニュアル整備

ネット上のクレームや悪評が増加する時代、企業としては危機管理マニュアルが必須です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、法的リスクを踏まえた初動対応や社内教育のサポートを行っています。

二次被害防止

返信や謝罪文で火に油を注いでしまうこともあります。弁護士の助言を得て言葉選びを慎重に行うことで、二次被害(さらなる炎上)を防止できます。

まとめ

誠実な返信・謝罪文作成のポイント

  1. 問題点をまず謝罪し、真摯に受け止める姿勢を示す
  2. 具体的な事実関係と改善策を提示し、再発防止に努める
  3. 感謝やフォローの言葉で締めくくり、顧客との良好な関係を目指す

注意点

  1. 感情的・攻撃的な表現は避ける
  2. テンプレートだけではなく、投稿内容に応じてカスタマイズ
  3. 個人情報・社内秘密の取り扱いに注意

弁護士との連携メリット

  • 違法性が疑われる投稿への削除依頼・法的措置
  • 危機管理マニュアルの整備と社内教育
  • 二次被害(炎上拡大)の防止

口コミやレビューへの誠実な返信・謝罪文は、企業や店舗の印象を改善し、長期的な信頼獲得につなげる大きなチャンスでもあります。一方で、誹謗中傷や違法投稿への対応は、謝罪だけで解決しない場合もあるため、弁護士などの専門家へ早めに相談し、適切なリスクマネジメントを行うことが大切です。


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