はじめに

法人破産手続きでは、企業の財産を適切に保全・管理することが重要です。破産手続きが進む中で財産が無断で処分されたり、不適切に管理されたりすると、債権者への公平な分配に影響を及ぼすだけでなく、破産免責が認められない可能性も生じます。また、違法な財産隠匿などの行為は刑事罰の対象にもなるため、各財産の特性に応じた適切な管理が不可欠です。以下では、法人破産手続きにおける財産保全の注意点を、財産の種類ごとに解説します。

Q&A形式によるご紹介

Q:会社の資金繰りが行き詰まり、破産申請を考えています。破産手続き中に財産保全について気を付けるべき点はありますか?

A:破産手続きでは、会社が所有するすべての財産を適切に管理し、全債権者のために公平に保全する義務があります。この義務を怠ると、免責不許可や破産犯罪に該当するおそれがあります。特に破産申立て前後の段階での財産処分や、特定の債権者への偏頗弁済は厳しく禁止されています。以下では、法人破産で特に問題となる財産の管理ポイントを解説しますので、注意点を把握した上で、弁護士とともに適切な財産保全を進めていきましょう。

法人破産における財産保全の類型別留意点

1.不動産の保全・管理

企業の不動産は大きな資産であり、破産手続きでは特に慎重に管理する必要があります。不動産の現状を維持し、価値を減損させないよう保全する義務が発生します。賃貸物件である場合は、賃貸人との契約内容を守りながら、破産管財人や裁判所の指示に従って適切に管理します。また、不動産の賃料収入や担保権の有無にも注意が必要です。

2.自動車の保全・管理

会社所有の自動車は、価値が高くまた第三者への流出が容易であるため、破産手続きの中で適切な管理が必要です。破産手続き開始前から車両の移動や売却は控え、車両は現状維持に努め、破産管財人の指示に従って使用する必要があります。また、車両保険の有無や契約状況も確認しておくと、後の手続きが円滑に進みます。

3.在庫商品の保全・管理

在庫商品は現金化が可能な財産であり、破産手続きでは債権者に対する分配の対象になります。在庫商品は無断で販売や処分を行わないことが基本です。また、在庫の内容や数量を詳細に把握し、破産管財人に報告できる状態にしておくことが求められます。在庫商品が劣化しやすい場合には、その対応方法についても弁護士や管財人と相談し、最善の管理方法を選びましょう。

4.リース物件の保全・管理

リース契約による設備や機器などは、リース会社の所有物です。破産申立て後にはリース契約の見直しや返却手続きを速やかに行う必要があります。契約内容に基づき、破産管財人の指示に従ってリース物件の管理を適切に行い、リース会社への返却や解約手続きを怠らないよう注意が必要です。

5.預貯金の保全・管理

会社名義の預貯金は、破産手続きにおいて債権者への分配対象となるため、不適切な出金や特定の債権者への偏頗弁済を避けることが求められます。破産申立て後は破産管財人が預貯金の管理を行うため、それまでは出金を控え、預貯金通帳や取引履歴をすべて把握し、必要書類を提出できるよう準備しておくことが重要です。

6.売掛金の保全・管理

売掛金は会社の重要な資産の一つであり、破産手続きでは債権として管理されます。破産前に特定の債権者だけに回収した売掛金を充てることは偏頗弁済に該当するおそれがあるため、売掛金の回収や処分については破産管財人の指示を仰ぐことが必要です。回収予定の売掛金についても管理を徹底し、破産申立て後に適切に分配できるよう対応しましょう。

7.貸付金の保全・管理

会社が第三者に貸し付けた資金は、破産財産として重要な債権の一つです。破産手続きでは、貸付金の回収を無断で行うことは禁じられているため、回収方法や分配は破産管財人の指示に従い、適切に進めることが求められます。無断で特定の債権者に返済した場合、免責が認められなくなる可能性があるため注意が必要です。

8.パソコン(PC)およびデジタル資産の保全・管理

パソコンやデジタル機器も会社財産の一部です。破産手続きにおいては、ハードウェアだけでなく、デジタルデータの保護も求められます。重要なデータの削除や機器の持ち出しは控え、破産管財人と相談しながら管理を行うことが適切です。特に顧客情報や機密データが含まれている場合は、情報漏洩に注意を払い、適切な管理を行いましょう。

9.携帯電話の保全・管理

会社名義の携帯電話も管理対象です。破産手続き中は契約継続の可否について確認が必要で、契約の解除や管理方法については破産管財人の指示に従う必要があります。契約内容を整理し、手続きの中で適切に扱うためにも弁護士に相談しながら進めると安心です。

弁護士に相談するメリット

法人破産における財産保全は、法的手続きや財産の特性に応じた細かな対応が求められます。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、破産手続きの経験豊富な弁護士が、各財産に関する適切な管理方法をアドバイスし、債権者への公平な分配と財産の保全をサポートします。弁護士に相談することで、免責不許可事由を回避しながら円滑に破産手続きを進めることが可能となり、リスクを最小限に抑えた財産管理が実現できます。

まとめ

法人破産手続きにおいては、企業の財産ごとに適切な保全と管理が求められます。不動産からデジタル機器まで、各財産の管理方法を把握し、法的な手続きを確実に進めることが、債権者の公平な保護と企業の信用回復につながります。弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポートにより、安心して破産手続きを進め、必要な管理が行えるようにすることをおすすめします。企業の財産管理に不安がある場合は、まずはお気軽にご相談ください。

動画・メルマガのご紹介

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、企業法務に関する様々な問題を解説したYouTubeチャンネルを公開しています。企業法務でお悩みの方は、ぜひこちらのチャンネルのご視聴・ご登録もご検討ください。 

【企業法務の動画のプレイリストはこちら】

また、当事務所では最新の法務ニュースやセミナーのご案内等を配信するメールマガジンも運営しています。ご興味がある方は、ご登録をご検討ください。

【メールマガジン登録はこちら】


ご相談はお気軽に|全国対応

 


トラブルを未然に防ぐ|長瀬総合の顧問サービス

長瀬総合法律事務所の顧問弁護士サービス