ポイント
- 個人情報(社内情報)は、社内であれば一定の公開も許される
- 個人情報(社内情報)は、当該会社ごとで管理することが原則である
- 個人情報(社内情報)は、どの範囲で公開が許されているかを理解する必要がある
個人情報(社内情報)の位置付け
これまで情報の分類及び法規制の分類についてみてきましたが、ここでは個人情報(社内情報)管理上の留意点について、相談事例をふまえて検討します。
個人情報(社内情報)管理に関する相談例
- 甲株式会社の部長Aは、部下の社員Bが好成績を挙げて昇給したことを自分のことのように喜んでいた。Aは、他の社員の発奮材料になると思い、Bの昇給額や賞与額を他の社員にも伝えて、Bを見習うよう話した。
- Aは、新しく配属された新入社員Cが1日でも早く職場に馴染むよう、社内で公開されているイントラネットに掲載されているCの家族構成や趣味などを他の社員に話した。
- Aは、新入社員Cが関連会社とも早く打ち解けることができるよう、甲株式会社の子会社である株式会社乙の従業員に、Cの家族構成や趣味などを伝えた。
- Aは部下との親睦を深めるために懇親会に参加したところ、懇親会は大いに盛り上がった。Aはその時の様子を写真で撮影し、SNSにアップした。なお、写真撮影時に嫌がる様子の社員はいなかった。
相談例に関する対応
相談例1
相談例1では、AがBの昇給額や賞与額を話したことへの情報管理上の問題の有無が問われています。
この点、上司である部長A自身は、Bが好成績を挙げて昇給したことを喜んでおり、Bにとっても肯定的な情報であることから、問題がないと考えているかもしれません。
しかしながら、昇給・賞与額等の人事評価に関する情報はプライバシー性が高い情報といえます。したがって、AがBに無断で Bの昇給や賞与額等を他の社員に話すことは、Bのプライバシーを侵害する行為となります。
なお、相談例1ではBの昇給や賞与額を取り上げていますが、Bの病歴等の情報に関してもプライバシー性が高い情報に当たりますので、Aが無断で第三者に話すことは同様にBのプライバシーを侵害する行為となります。
相談例2
相談例2では、AがCの家族構成や趣味などを甲社で話したことへの情報管理上の問題の有無が問われています。
Cの家族構成や趣味なども、相談例1における昇給や賞与額同様にCのプライバシー性の高い情報といえます。
もっとも、相談例2の場合には、家族構成や趣味などはC自ら甲社の社内イントラネットで公開しているため、少なくとも甲社の内部で話す限りでは、Cも公開に同意していると考えられますので、AがCの家族構成や趣味などを甲社で話したことには問題がないといえます。
ただし、Aが甲社で話したことが甲社のイントラネットに公開されている範囲を超えている場合には、Cが公開に同意していないプライバシー情報を第三者に漏洩したとして、プライバシーを侵害する行為となる可能性があることには留意しなければなりません。
相談例3
相談例3では、AがCの家族構成や趣味などを乙社の従業員に話したことへの情報管理上の問題の有無が問われています。
この点、Aが話したことは相談例2と同じ内容であり、しかも乙社は甲社の関連子会社であることから問題はないようにも思われるかもしれません。
しかしながら、Cの家族構成や趣味などは、甲社の社内イントラネットで公開されていますが、これはあくまでも甲社内部で話す限りでの公開に同意しているにすぎません。
そして、乙社は、甲社の関連子会社であるとはいえ、あくまでも甲社とは別の法人です。個人情報保護法においても、乙社の位置付けはグループ会社であっても「第三者」に該当するとされていますので、第三者である乙社の従業員にまでAが話したことは、情報管理上問題があると言わざるを得ません。
相談例4
相談例4では、Aが懇親会の様子を写真で撮影し、SNSにアップした行為への情報管理上の問題の有無が問われています。
この点、Aが懇親会の様子を写真で撮影する際に嫌がっている様子の社員は誰もいなかったことからすれば、同意があると考えるかもしれません。
しかしながら、被撮影者が同意したことは、あくまでもAの写真撮影までであり、Aが写真をSNSにアップすることにまで同意したわけではありません。このため、Aが被撮影者に無断で写真をSNSにアップしたことは、被撮影者の肖像権、プライバシー権侵害にあたるおそれがあるといえます。
個人情報(社内情報)管理の留意点
相談事例の解説からも、個人情報(社内情報)であっても、個人情報保護法やプライバシー権、肖像権等の法的保護の対象となるものであり、その取扱は慎重に行う必要があるということがわかります。
また、社内で共有されている個人情報であっても、共有・公開できる範囲が設定されている場合には、問題となっている行為がその範囲内での利用といえるかどうかも考える必要があります。
さらに、個人情報の開示者が外形上は共有・公開に同意しているように思われたとしても、実際にはどの範囲までの共有・公開に同意しているのかということも慎重に考えなければなりません。
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