Case Study

顧問弁護士の活用事例

高齢者雇用に関する留意点
業種 士業
お困りの問題 人事労務
企業法務一般

相談概要

士業の先生からのご相談となります。

士業の先生が顧問として関与している企業では、最近高齢者の雇用が増加しています。もっとも、高齢者雇用は、それまでの若年者の雇用とは異なる留意点があるのではないかということを気にされてご相談をいただきました。

相談事例のポイント

  1. 高齢者雇用では、①高齢者の継続雇用における雇用期間、②高齢者の労働災害等、労働安全衛生の対策が問題となります。
  2. 高齢者を雇用する企業では、上記①及び②を中心とした対策を事前に検討することが望ましいといえます。

回答概要

高齢者雇用は、今後は業種を問わず拡大していくものと思われます。高齢者雇用に伴うリスクとその対策としては、主に以下の事項が考えられます。

高齢者の雇用契約期間

定年退職後の高齢者の再雇用の場合、有期雇用契約を更新し続けて5年を経過すると、無期雇用転換申込権が生じることになります。

高齢者の無期雇用転換申込権の発生を回避するためには、「継続雇用の高齢者の特例」を用いて対応することになります。

もっとも、高齢者の無期雇用転換申込権の発生を回避したとしても、「雇い止め法理」(労働契約法19条)が適用されるリスクはあります。

高齢者に対する有期雇用契約を繰り返した場合における雇い止めが無効であると解された事例として、福岡地判令和2年3月19日があります。

福岡地判令和2年3月19日

福岡地判令和2年3月19日では、契約期間1年間の有期契約を2回更新した後、3回目に業績悪化を理由に労働条件の変更を前提とした更新を打診したところ、合意に至らなかったため更新拒絶したというものですが、結論として雇い止めは無効と解されています。

したがって、無期雇用転換の特例を利用したとしても、雇い止め法理が適用されるリスクがあることは念頭に置く必要があります。

一方、雇止め法理が適用されないと判断された事例として、「東芝ライテック事件・横浜地判平25.4.25労判1075号14頁」があります。

東芝ライテック事件・横浜地判平25.4.25労判1075号14頁

東芝ライテック事件では、3か月の有期契約を19年にわたって反復更新してきた契約社員の76回目の更新時の契約書に「今回をもって最終契約とする」と記載されていたケースで,上司から説明を受けたうえで当該不更新条項を記載した契約書に同人が署名押印していたことから、契約更新に対する期待利益の合理性の程度は高くないと評価され、雇止めが有効と判断された例になります。

このように、雇止め法理が適用されるかどうかは、事例によって判断が異なりうるため、契約更新拒絶時にどれだけ丁寧に説明をするか等に留意する必要があります。

その他の対応としては、無期転換者の定年を以下のように設定することも考えられます。

(定年等)

第107条 従業員の定年は、満60歳に達した日とし、60歳に達した日の属する年度の末日を定年退職日として退職とする。

2 無期転換者の定年は、無期転換後の労働契約の初日が属する日における年齢により、次の各号に区分し、当該各号に掲げる日とし、それぞれの年齢に達した日の属する年度の末日を定年退職日として退職とする。

(1)60歳未満…60歳に達した日

(2)60歳以上65歳未満…65歳達した日

(3)65歳以上…無期転換の日から起算して1年を経過した後に最初に到来する誕生日の前日

労働災害・労働安全衛生リスク

また、高齢者雇用の場合、若年層と異なり、肉体的な負担感が異なることから、労働災害が生じやすいというリスクが挙げられます。

「高年齢労働者の安全衛生対策」として、厚生労働省もガイドラインの策定等を行っているため、事業主側としては高齢者雇用の推移をみながら、ガイドラインを意識した対応を講じていくことが求められます。

厚生労働省|高年齢労働者の安全衛生対策について

担当弁護士からのコメント

少子高齢化に伴う人手不足は、業種や企業規模を問わず、人事労務における大きな課題の一つとなっています。

人手不足を解消する一つの方策として近年は高齢者雇用が注目されていますが、高齢者雇用にはそれに伴う留意事項があることに注意が必要です。

企業の人事労務の課題は、社会情勢や業界動向によっても左右されるため、常に注視していくようにしましょう。

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弁護士法人 長瀬総合法律事務所

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