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無断欠勤を繰り返す社員に対する処分

無断欠勤を繰り返す社員に対する処分

解説動画

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この動画の視聴にかかる時間:約9分
  • 00:00:ごあいさつ
  • 00:45:本動画でお伝えしたいこと
  • 01:11:相談事例
  • 01:59:社員の誠実労働義務
  • 02:31:無断欠勤に関する就業規則の策定
  • 03:40:合理的な理由のない無断欠勤に対する懲戒処分
  • 05:34:相談事例への回答
  • 07:12:まとめ
  • 07:32:リーガルメディアのご案内
  • 07:47:弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート内容

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相談事例

五月病なのか、無断で欠勤を繰り返す社員がいて困っています。

本人は周囲に対して、「被害妄想なのかもしれないが、心のバランスが崩れているようで調子が悪い」と漏らしてはいましたが、上司に対してはとくに欠勤の理由を説明していません。出社した際はいつもどおりに仕事をしていますし、被害妄想というのも作り話に思えます。

他の社員への示しの問題もありますし、この社員には当社就業規則の「正当な理由のない無断欠勤」に該当するものとして諭旨解雇しようと思いますが、何か問題があるでしょうか。

回答

裁判例に照らすと、「正当な理由のない無断欠勤」を就業規則に規定していたとしても、無断欠勤をした社員を直ちに諭旨解雇することは無効と判断される可能性があります。

ご相談のケースでは、まず無断欠勤の理由を社員から確認し、精神科医による健康診断等を実施する等した上で改善指導を行い、それでも無断欠勤が続く場合に、軽い懲戒処分から徐々に重い懲戒処分をくだすことを検討していくことになろうかと思います。

解説

社員の誠実労働義務

「業務の遂行—勤務成績不良社員への対応」で解説したとおり、社員は、労働契約の合意内容の枠内で、会社に対して誠実に労務を提供する義務(誠実労働義務)を負います。

したがって、社員が合理的な理由なく無断欠勤を繰り返す場合、誠実労働義務の不完全履行となり、就業規則上の懲戒事由に該当すれば懲戒処分の対象となり得ます。

無断欠勤に関する就業規則の策定

欠勤理由の合理性については、会社と社員との労働契約の内容を規律する就業規則等に照らして判断されるため、無断欠勤を懲戒事由として就業規則等に規定していない場合、合理的な理由のない無断欠勤であっても懲戒処分をすることができないと判断される可能性があります(フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日労判861号))。

そのため、就業規則等に無断欠勤を懲戒事由とする旨の規定がない場合は、まずかかる規定を整備する必要があります。

合理的な理由のない無断欠勤に対する懲戒処分

前述のとおり、無断欠勤に対する懲戒処分について就業規則等に定めがあり、当該内容が合理的なものである場合は、合理的な理由なく無断欠勤を繰り返した社員は懲戒処分の対象となり得ますが、その場合であっても、当該社員に対して改善の機会を与えずにいきなり懲戒処分や解雇処分を行った場合、当該処分は懲戒権の濫用ないし解雇権の濫用として無効と判断される可能性があります(日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁平成24年4月27日労判1055号))。

そのため、無断欠勤を繰り返す社員に対しては、まずは改善の機会を与えることとなりますが、たとえ無断欠勤が改善されなかったとしても、それで直ちに懲戒処分ないし解雇が認められるわけではなく、懲戒処分ないし解雇に「客観的に合理的な理由」が必要となることに注意が必要です(労働契約法15条、16条参照)。

したがって、改善指導の効果が見られず、懲戒処分に踏み切る場合であっても、軽い処分から重い処分(懲戒解雇)へと段階的に移行していくことが大切です。

ご相談のケースについて

ご相談のケースに類似した裁判例として、前述の日本ヒューレット・パッカード事件が挙げられます。

この事件では、被害妄想等の精神的不調により欠勤を続けている社員に対して、「使用者」は「精神科医による健康診断を実施するなどした上で」「その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべき」であったとした上で、かかる対応を採らずに社員の被害妄想が事実に基づかないことから直ちにその欠勤を無断欠勤であるとして諭旨解雇したことについて、当該欠勤は就業規則上の懲戒事由である「正当な理由のない無断欠勤」には該当しない、と判示しています。

かかる裁判例を踏まえると、ご相談のケースでも、まず無断欠勤の理由を社員から確認し、精神科医による健康診断等を実施する等した上で改善指導を行い、それでも無断欠勤が続く場合に、軽い懲戒処分から徐々に重い懲戒処分を下すことを検討していくことになろうかと思います。

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