相談事例

当社は、事務職員Aを1年間の有期契約で雇用しています。これまでにAとの契約は更新を繰り返しており、通算で6年間勤務してもらっています。

ですが、最近になり、Aが他の社員との間でトラブルを起こすようになったため、これ以上は契約を更新しないことにしたいと考えています。

6年間と比較的長期にわたって勤務してもらっていましたが、有期契約ですから契約を更新せずに終了することは特に問題ないと考えていますが、いかがでしょうか。

解説

雇い止めとは

雇止めとは、期間を定めた労働契約の期間満了に際し、使用者が契約の更新を拒絶することをいいます。

雇い止めが認められない場合

有期雇用契約であっても、雇用契約の継続に関する労働者の期待が法的保護に値する場合、労働契約法19条によって、有期雇用契約の更新が認められる場合があります。

労働契約法19条が適用される要件は、以下のとおりです。

① 契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合

② 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること

又は

当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること

③ 使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき

雇い止めを適法に行うための対応

雇い止めを検討している企業が、労働契約法19条の適用を回避するためには、「契約を更新しない」旨の不更新条項を設定することが考えられます。

不更新条項の規定例は以下のとおりです。

(契約更新の上限)

第●条 会社は個別の労働契約書により、更新の上限(最長3年)を設けることがある。この場合、当該上限を超えた契約更新は行わない。

2 個別の労働契約書で更新の上限を設けない場合でも、満60歳を超えた契約更新は行わない。

なお、不更新条項を設定しておくことで、雇い止めは有効になりやすいとはいえますが、必ずしもすべての雇い止めが有効になるとまでは言い切れないことには留意が必要です。

当初の雇用契約締結時からすでに不更新条項が設定されている場合には雇い止めは有効とされやすいといえますが、契約更新時に不更新条項を設定した場合、雇用継続への期待は慎重に判断されることになります。

無期転換制度

なお、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約 (無期労働契約)に転換できるルールがあります(労働契約法18条)。

仮に有期契約社員が5年以上にわたって勤務していた場合、社員から会社に対し、無期転換申込権が発生することになるため、雇い止め自体ができなくなる可能性があることに留意が必要です。

ご相談のケースについて

ご相談のケースでは、Aが通算で6年間勤務しているとのことであり、無期転換申込権が発生していることになります。仮にAが無期転換申込権を行使した場合には、そもそも有期雇用契約ではなく無期雇用契約ではなくなることから、雇い止めはできないことになります。

また、会社がAを6年間にわたって契約更新を繰り返してきたことからすれば、労働契約法19条が適用される可能性もあるため、雇い止めが認められない可能性があることに留意が必要です。

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