解説動画
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相談事例
新入社員から、上司の口調が乱暴でとても怖い、パワーハラスメントに当たるのではないかという苦情が増えてきました。このままでは職場の雰囲気が悪化する上、離職率も増加するのではないかと危惧しています。
最近、パワハラ防止法が成立したと聞いています。まずは管理職にパワハラ防止法の概要を理解してもらい、部下に対する接し方を改めてもらいたいと思いますが、パワハラ防止法のポイントは何になるのでしょうか。
解説
パワーハラスメントのコンプライアンスリスク
パワーハラスメントが行われた場合、加害者個人が被害者に対して責任を負うだけでなく、使用者である会社も以下のような責任・リスクを負う場合があります。
深刻なパワーハラスメント事案が発生した場合、被害者本人にも多大な精神的・肉体的苦痛が及ぶだけでなく、加害者の懲戒処分や刑事処分、さらには企業の信用リスク等にも発展する可能性があります。
パワーハラスメントを未然に防ぐとともに、万が一深刻なパワーハラスメント事案が発生した場合には、適切に解決する必要があります。
不法行為責任
会社は、使用する労働者が職務遂行中に第三者に損害を与えた場合、使用者責任として損害賠償責任を負います(民法715条)。
債務不履行責任
使用者である会社は、労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)ため、パワハラが生じた場合、職場環境整備義務及び職場環境調整義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合があり得ます。
なお、従業員が派遣労働者であった場合、上記職場環境の維持は、派遣会社(派遣元)だけでなく、派遣先会社の責任でもありますから、派遣先でパワハラが生じた場合、派遣先も責任を負う可能性があることに注意が必要です。
行政責任
パワハラ防止法の成立に伴い、今後はパワハラが生じた場合、行政処分の対象になることも考えられます。
レピュテーションリスク
その他、パワハラが生じ、訴訟等に発展した場合、取引先等から「コンプライアンス(法令遵守)のできていない未熟な会社」と見られ、最悪の場合取引が打ち切られたり、職場環境が劣悪であるとの評判が立ち、リクルート活動等においても不利になったりするといったリスクも生じ得ます。
パワハラ防止法の成立
このように、パワーハラスメントのコンプライアンスリスクを踏まえ、2019年5月29日、職場におけるパワハラ防止措置を企業に義務付ける「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立しました。同法は、大企業で2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から施行されます。
上記法律の成立に伴い、改正された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称「労働施策総合推進法」)において、パワハラが法規制の対象となることが明確化されました。
なお、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立した際、様々なメディアで、「パワハラ防止法」、「ハラスメント規制法」などの表現で喧伝されていましたが、いずれも正式名称ではないことにご留意ください(今回の法改正の対象となった法律自体は、非常に長い名称となっています)。
本稿では、便宜上、「パワハラ防止法」という名称を使用しますが、予めご了承ください。
パワハラ防止法のポイント
今回成立したパワハラ防止法のポイントは、日本で初めて法律上パワーハラスメントについて規定するとともに、その防止をするための措置を講じる義務を企業に課したこと、にあります。
これまではパワーハラスメントの定義自体が明確には規定されていなかった中、パワハラ防止法によってパワーハラスメントの定義が法律上も明記された意義は、「どこまでが許される注意・指導で、どこからが違法なパワーハラスメントなのか」を判断・検討する上で、一定の目安となります。
もっとも、以下に詳述しますが、今回成立したパワハラ防止法によっても、すべてのパワーハラスメントの問題が解決できることは期待し難いところもあるため、今後もパワーハラスメントに関する厚労省をはじめとした行政運用や各種裁判例を注視していく必要があります。
パワーハラスメント防止法の概要
パワハラ防止法の概要は以下のとおりです。
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事業主の義務の明確化
職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務であることが明確に規定されました。
行政処分の対象
適切な措置を講じていない場合には是正指導等、行政処分の対象となることが規定されました。
これまでは、パワーハラスメントに対しては、民事責任や刑事責任が問われたものの、行政責任までは問われることがありませんでした。
今回のパワハラ防止法の成立によって、今後は行政責任の対応についても検討する必要があることになります。
企業にとっては、適切なパワハラ防止措置を講じることができない場合、加害者・被害者という当事者限りの問題にはとどまらないことになります。
紛争解決方法の制定
パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。
職場のパワーハラスメントの定義
令和2年1月15日、厚生労働省告示第五号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」[1](以下「パワハラ指針」といいます)が公表されました。
事業主が講ずべき措置の具体的内容
パワハラ指針では、パワハラ防止のために事業主が講ずべき措置の具体的内容を提示しています。企業としてパワハラ対策に取り組む際には、パワハラ指針で示された措置の内容を確認しておきましょう。
以下では、パワハラ指針に示されている事業主が講ずべき措置の一部を紹介します。
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ご相談のケースについて
パワーハラスメントのコンプライアンスリスクが高まる現状において、パワハラ防止法の概要を押さえておくことは必須といえます。
パワハラ防止法の概要は、パワハラ指針に紹介されていることから、まずはパワハラ指針を確認し、事業主として着手できるところから順次対策を講じていきましょう。
引用・出典
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