相談事例
社内相談窓口に対して、セクハラ被害を訴える内容の通報が寄せられました。
これまでセクハラ対応の経験がないため、何を確認すればいいのか、また、どのような段取りで対応すればいいのかわかりません。
その他、聞き取りに際して注意すべき点があれば教えてください。
解説
ヒアリングの実施
セクハラの相談があったにもかかわらず、会社が迅速な対応を怠った場合、不作為を理由として損害賠償責任を負う可能性がある(横浜地裁平成16年7月8日判時1865号、大阪地裁平成21年10月16日参照)ため、迅速かつ正確なヒアリングを行う必要があります。
ヒアリングでは、主に以下の事項について確認することが一般的です。その際、5W1Hを明確にしつつ、時系列に沿ってできる限り詳細なヒアリングを実施するとともに、後の処分や紛争等に備えてヒアリング内容を書面化しておくことが大切です。
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事実関係の精査
ヒアリングにおいて確認すべき代表的な事項は上記のとおりですが、事実関係を精査するにあたっては、関係者からのヒアリングだけでなく、メールや手控えメモ等の客観的資料を収集することも検討する必要があります。
なお、事実関係を精査した後、就業規則や先例に照らして懲戒処分が必要となる場合や将来の紛争が予想される場合も少なくないため、事実関係の精査の段階から外部専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。
事実関係を調査するための主なルートとしては、以下のものが挙げられます。
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なお、可能であれば事前に①客観的資料を収集しておき、相談者・加害者の発言内容に客観的資料との矛盾がないか、不自然な点がないか等を確認しながらヒアリングに望めると、より効果的です。
また、③加害者からのヒアリングに際しては、事前に②相談者からヒアリングにおいて匿名希望の有無を確認しておき、加害者からの報復を禁止するなど未然に防止するための手当てをしておくことも大切です。
被害者のプライバシー保護
セクハラ事案においては、地位や上下関係を利用して行われることが多く非正規労働者や新入社員など、立場の弱い労働者が被害者となることが通常です。
そのため、被害者は職を失うことやトラブルメーカー扱いされること等をおそれ、加害者に迎合するような態度をとったり、相談自体をためらったりする場合もあります。
ヒアリングや事実関係の調査に際しては、被害者の心情・プライバシー保護に十分配慮し、ヒアリング等の実施自体が二次被害とならないよう注意する必要があります。
社内処分の検討
以上の流れに沿って事実関係を確認した後、相談者の希望や加害者の行為態様の程度に応じて、加害者に対する懲戒処分を検討することとなります。
その際、就業規則及び過去の処分事例を参考にしつつ、バランスを失した処分とならないよう留意する必要があります。
再発防止策の構築
社内処分の検討まで終えた後、今後同種の事案が生じないよう、再発防止策を構築することとなります。
セクハラ対策として一般に行われ、かつ効果的であるとされている対策としては、たとえば以下のものが挙げられます。
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「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」に基づく措置
なお、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615条、以下「セクハラ指針」)によれば、セクハラ防止の観点から、事業主には以下の措置を講じることが義務づけられています。
- セクハラがあってはならない旨の事業主の方針の明確化とその周知・啓発
- 相談に応じ適切に対処するために必要な体制の整備(相談窓口、担当者、人事部門との連携等)
- 事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の迅速・正確な確認、行為者・被害者に対する適正な措置、再発防止措置)
- 相談や事後対応におけるプライバシーの保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益扱い禁止の周知・啓発
なお、セクハラ指針によれば、「職場」とは、通常終業している場所に限られず、職務を遂行する場としての取引先、飲食店、出張先、車中や職務の延長としての宴会等も含まれます。
また、同指針によれば、「労働者」とは、正規労働者のみならず、パートタイム労働者、非正規労働者も含み、派遣元事業主のみならず派遣先事業主についても上記措置を講じることが必要とされていることに注意が必要です。
ご相談のケースについて
セクシュアル・ハラスメント被害を訴える通報が寄せられた場合、まずは相談内容についてヒアリングを実施するとともに、メール等の客観的な資料を収集し、問題となっているセクハラに関する事実関係を正確に把握することが大切です。
また、ヒアリングに際して特に被害者に二次被害が生じないよう、被害者のプライバシー保護に配慮することも大切です。
事実関係を精査した後、セクハラが生じていたと判断したのであれば、就業規則等に照らして懲戒処分等を検討するとともに、被害者に対する十分なケアや、再発防止策を検討することとなります。
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