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契約用語解説「この限りではない・準用」などの意味

解説動画

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質問

契約書の用語も法令用語にならって厳密に使い分けるべきだということはわかりました。
その他、注意すべき用語があれば教えてください。

回答

前回解説しましたとおり、契約書において、法律上、「必ずこの用語・用語ルールに従わなければならない」といった決まりはありませんが、当事者間で契約内容の解釈にズレが生じないよう、法令用語のルールに則って契約書も作成することをお勧めします。

特に注意すべき用語については後記「解説」の項目をご参照ください。

解説

(本記事は「契約法概論⑤—契約用語2」の続きです)

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前項、前●項、前各項

前項」「前●項」「前各項」の関係についても紛らわしいため、以下の条項をサンプルとしてそれぞれの違いを簡単に説明します。

(例)
第●条
第1項 ・・・・
第2項 ・・・・
第3項 ・・・・
第4項 「前項に定める」/「前2項に定める」/「前各項に定める」

上記例において、第4項に規定する「前項」「前2項」「前各項」とは、それぞれ下記のように意味しています。

なお、「第1項から第3項まで」のように、連続する場合は「乃至(ないし)」を使用します。この記載方法は、「項」だけでなく、「条」、「号」、「編」、「章」、「節」などにおいても同様です。

以上、超える、以下、未満

これは日常用語としても使用されており、比較的理解しやすいかと思います。

以上」「以下」については、基準となる数値を含む場合に使用します。
これに対して、「超える」「未満」については、基準となる数値を含まない場合に使用します。

たとえば、「一万円以上」といえば1万円ちょうどを含みますが、「一万円を超える」と言った場合には、1万円ちょうどを含まず、1万1円以上を意味することになります。

以前、前、以後、後

これも日常用語としても使用されており、比較的理解しやすいかと思います。

以前」「以後」については、基準となる時点を含む場合に使用します。
これに対して、「」「」については、基準となる時点を含まない場合に使用します。

たとえば、「平成28年4月1日以前」といえば、4月1日を含んでそれより前の期間を意味するのに対して、「4月1日前」といえば、4月1日を含まず、3月31日より前ということになります(すなわち、「3月31日以前」と同じ意味となります)。

ものとする

契約書をレビューしていますと、「・・・する。」「・・・しなければならない。」「・・・ものとする。」「・・・するものとする。」といった用語が同一の契約書中で混在しているケースを頻繁に見受けます。これらの用語については、その時々の語感によって使い分けている例が多いのではないかと思います。

実際、法令においても、「ものとする。」「するものとする。」という用語は頻繁に登場しますが、その用法は必ずしも一様ではありません。

意味合いとしては、「・・・しなければならない。」又は「・・・する。」というような、一定の作為義務を表そうとする場合や一定の事実を断定的に表そうとする場合と近いといえます。

もっとも、これらの用語を使うとニュアンスが少しどぎつく出過ぎるため、もう少し緩和した表現を用いたい場合に、この「ものとする。」という表現が使われることが多いと言えます。

この限りでない、妨げない

この限りでない」や「妨げない」については、あまり違いを意識せずになんとなくの語感で使用されている場合もあるかと思いますが、両者は厳密には意味合いが異なります。

この限りでない」とは、前に出てきている規定の全部又は一部を、特定の場合に除外することを意味します。

これに対して、「妨げない」とは、ある事項について一定の規定の適用があるかが不明確な場合に、当該規定の適用が排除されないことを明らかにすることをいいます。

適用する、準用する

適用」と「準用」については、あまり契約書中で使用することはないかと思いますが、法令の読み方としては非常に重要なのでご参考までに簡単に説明しておきます。

適用する」とは、法令の規定を特定の事項に対してそのまま当てはめることをいいます。

これに対して、「準用する」とは、ある事項に関する規定を、他の類似する事項に必要な修正を加えてあてはめることをいいます。

まとめ

以上、数回にわたり契約書で頻出する用語について解説してきましたが、もちろんこれら以外にも注意すべき契約用語・法令用語は多数存在します。「良い契約書」の定義などもちろん存在しませんが、わかりやすく明快で、誰が読んでも一義的に解釈できる契約書がそれにあたることは異論がないでしょう。

本記事が契約書のドラフト・レビューに際して少しでもご参考になれば幸いです。

参考文献

林修三「法令用語の常識」(日本評論社)

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