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契約法概論⑤ 契約用語2

契約法概論⑤ 契約用語2

解説動画

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チャプター
    • この動画の視聴にかかる時間:約23分
    • 00:00:自己紹介・本動画でお伝えしたいこと
    • 00:50:リーガルメディアのご紹介
    • 01:11:契約書の基本的な構成
    • 02:31:契約の成立要件
    • 03:44:契約の成立時期
    • 04:57:契約締結と書面の要否
    • 08:03:契約書のタイトルと法的効果
    • 09:30:「前文」の意味
    • 10:56:条・項・号
    • 13:36:後文
    • 14:29:契約書作成日
    • 16:22:当事者名の表記
    • 17:48:契約書の署名・押印
    • 19:30:印紙の要否
    • 20:47:まとめ
    • 21:16:サポートプランのご案内
    • 22:22:メールマガジン登録のご案内
    • 22:47:お問い合わせのご案内

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質問

契約書の用語も法令用語にならって厳密に使い分けるべきだということはわかりましたが、「その他」や「その他の」といった言葉も意味が違うのでしょうか?

どれも同じような意味合いで日常的に使っているのですが……。

回答

前回解説しましたとおり、契約書において、法律上、「必ずこの用語・用語ルールに従わなければならない」といった決まりはありませんが、当事者間で契約内容の解釈にズレが生じないよう、法令用語のルールに則って契約書も作成することをお勧めします。

特に注意すべき用語については後記「解説」の項目をご参照ください。

解説

「その他」「その他の」

「その他」と「その他の」は、日常用語としては類似した言葉ですが、法令用語としては厳密に使い分けられています。

「その他」は、前後が並列関係にある場合に使用します。たとえば、「賃金、給料その他これに準ずる収入」というように、「その他」の前にある言葉と後にある言葉とは、全部対一部の関係ではなく、並列関係にあるのが原則です。すなわち、「賃金、給料」と「これに準ずる収入」とは別の観念として並列されており、賃金や給料が「これに準ずる収入」の一部の例示として掲げられている訳ではありません。

これに対して、「その他の」は、前にあるものが後にあるものの例示である場合に使用します。たとえば、「内閣総理大臣その他の国務大臣」、「俸給その他の給与」というように、「その他の」の前に出てくる言葉は、後に出てくる言葉の一層意味内容の広い言葉の一部をなすものとして、その例示的な役割を果たす趣旨で使われます。

「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」

「直ちに」は、時間的即時性が最も強く、一切の遅れは許されません。意味合いとしては、即時に・間を置かずに、といったイメージです。

これに対して、「速やかに」は、できるだけ早く、という意味であり、「直ちに」「遅滞なく」と異なり、訓示的な意味で使われる場合が多いと言えます。

「遅滞なく」は、事情の許す限り、最も早く、という意味です。合理的な理由があれば、その限りでの遅れは許されると解釈することができます。

いずれも時間的即時性を表す言葉ですが、昭和37年12月10日大阪高裁判決によれば、時間的即時性の強弱で言えば以下のように整理することが可能と思われます。

「直ちに」>「速やかに」>「遅滞なく」※左が最も時間的即時性が強い

「みなす」「推定する」

「みなす」とは、成立が異なるものを法律上の関係において同一に取り扱うことを意味し、反証を許しません。たとえば、「胎児は、相続については、既に産まれたものとみなす。」(民法886条1項)等、私法上の規定で多くみられます。

これに対して、「推定する」とは、ある事項について一応の事実を推定し、法律効果を生じさせることを意味し、反証が許されます。

どちらも日常用語の語感としては似ているように感じるかもしれませんが、法令用語としては全く意味合いが異なるため注意が必要です。

なお、契約書上は、当事者の交渉力等によりますが、一般的には反対当事者の反証を許さない「みなす」を使用する例が多いかと思います。

こちらにとって有利な規定であれば「みなす」の方がありがたいですが、不利な規定についても安易に「みなす」とされていないか、レビューの際は見過ごさないようにしましょう。

「解除」「解約」

「解除」も「解約」も、ともに既存の契約を解消するときに使われる用語ですが、法令上の用語とは必ずしも一致するわけではありません。

「解除」とは、契約の効力を過去にさかのぼって消滅させ、当該契約が初めから存在しなかったことと同じ法律効果を発生させることを意味します。

これに対して、「解約」とは、契約の効力を将来に向かって消滅させることを意味します。たとえば、賃貸約のような継続的な契約関係において、契約当事者の一方の意思表示により、契約の効力を将来に向かって消滅させること、をいいます。講学上、解除と区別して、「解約告知」又は「告知」ともいわれますが、法令上は、解約のことを解除という場合も多くあります。

具体的には、民法626条1項本文は、「雇用の期間が5年を超え・・・るときは、・・・当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。」と規定していますが、この場合の「解除」は、その効果が将来に向かってのみ生ずるだけですので、講学上の「解約」になります。

このように、法令上の「解除」=契約書(講学)上の「解除」とは必ずしも一致しませんので、注意が必要です。契約において「解除」と「解約」の厳密な意味での区別が重要な争点となる場合には、あらかじめ遡及効を持たせるか否か、契約書にその旨明記しておくとよいでしょう。

「無効」「取消し」「撤回」

「無効」とは、法律上の効果が初めからないことをいいます。これに対して、「取消し」とは、瑕疵のある法律行為の効力を過去に遡って消滅させることをいいます。そして、「撤回」とは、意思表示をした者が、その効果を将来に向かって消滅させることをいいます。

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