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危機管理におけるマスコミ対応・広報リリースの注意点|弁護士が解説

はじめに

「工場で火災が発生し、近隣住民に避難指示が出た」
「顧客情報の流出が疑われる事案が発生した」
「役員が背任容疑で逮捕された」

こうした緊急事態において、企業には「説明責任」が求められます。しかし、慌てて不正確な情報を発信したり、逆に「確認中」を繰り返して情報を出し惜しみしたりすることは、マスコミや世間の不信感を増幅させる原因となります。

危機管理におけるマスコミ対応のゴールは、単に事態を収束させるだけでなく、ステークホルダー(顧客、取引先、株主、従業員、地域社会)からの信頼を維持・回復することにあります。そのためには、広報的な「誠実さ」と、法的な「リスク管理」の高度なバランスが求められます。

Q&A:マスコミ対応の初動と判断

Q1. 不祥事が発覚しましたが、まだ詳細な原因が不明です。詳細が判明してから公表すべきでしょうか?

いいえ、第一報は「迅速性」を優先し、判明している事実だけでも公表すべきです。

原因究明に時間がかかる場合、沈黙している期間が長ければ長いほど「隠蔽しているのではないか」という疑念を持たれます。

まずは「現在、○○という事案が発生しております」「直ちに調査委員会を立ち上げ、事実確認を行っております」といった第一報(速報)を出し、企業として事態を認識し、対応中であることを示す姿勢が重要です。詳細は「判明次第、追って報告する」とすることで、誠実さをアピールできます。

Q2. 謝罪会見は必ず開かなければなりませんか?

事案の社会的影響度や被害の規模によって判断します。

すべての不祥事で記者会見が必要なわけではありません。小規模なミスや、被害が限定的である場合は、Webサイトでのリリース掲出や、個別取材への対応(書面回答など)で済む場合もあります。

一方、以下のようなケースでは記者会見の開催を検討すべきです。

Q3. マスコミから電話取材が殺到しています。その場で答えても良いですか?

原則としてその場での即答は避け、窓口を一本化して対応します。

個別の社員や役員が、準備なしに不用意な発言をすると、ニュアンスが誤って伝わったり、公式見解と矛盾したりするリスクがあります。

「広報部が窓口となっておりますので、そちらへお問い合わせください」と案内し、広報担当者が質問事項を文書等で受け付け、社内で正確な事実確認と法的チェックを行った上で、回答を作成するフローを徹底してください。

解説:法的リスクを考慮した広報戦略

危機管理広報では、法的な防御(リーガル)と、社会的評価の維持(レピュテーション)の両立が不可欠です。

危機管理広報の3原則

マスコミ対応においては、以下の3原則を徹底します。

  1. 迅速性: バッドニュース(悪い情報)ほど早く出す。第一報の遅れは致命的です。
  2. 正確性: 嘘をつかない、推測で語らない。一度発表した内容を後で「実は違いました」と訂正することは、信頼を大きく損ないます。
  3. 誠実性: 被害者や迷惑をかけた相手への配慮を最優先する。言い訳や責任転嫁と取られる言動は厳禁です。

広報リリース(プレスリリース)作成の注意点

プレスリリースは公式文書として残るため、一言一句に法的配慮が必要です。

(1) 事実と推測の峻別

「事実(客観的に確認されたこと)」と「推測・見解(現時点での会社の考え)」を明確に区別して記載します。

(2) 「謝罪」の法的意味と表現

「申し訳ございません」という言葉は、道義的な謝罪(世間をお騒がせしたこと、不安を与えたことへの陳謝)としては必須ですが、文脈によっては「法的責任(賠償義務)を全面的に認める」と解釈されるリスクがあります。

特に、事故原因や責任の所在が争点になり得る段階では、「多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」といった表現を用い、具体的な法的責任の所在については調査結果を待つ姿勢を示すなど、慎重な言葉選びが求められます。

(3) 個人情報・プライバシーへの配慮

被害者や加害者(従業員)の実名、住所、家族構成などを公表するかどうかは、個人情報保護法およびプライバシー権の観点から慎重に判断する必要があります。公益上の必要性がない限り、個人が特定される情報は伏せるのが原則です。

記者会見の対応と準備

記者会見は、企業のトップが直接説明責任を果たす場であり、その態度や言動が企業のイメージを決定づけます。

(1) 想定問答集(Q&A)の作成

記者が質問してきそうな内容(厳しい質問を含む)をリストアップし、模範回答を作成します。

(2) 登壇者の選定

基本的には社長や担当役員が登壇します。技術的な内容であれば技術責任者、法的な内容であれば法務担当役員や顧問弁護士が同席することもあります。

登壇者は事態を正確に把握している必要があり、「知りませんでした」「担当ではないので」という回答は、無責任な印象を与えます。

(3) NGワードと態度

(4) 会見場所の選定

自社の会議室、貸会議室、ホテルなど、マスコミの人数規模に合わせて設定します。アクセスが良く、機材搬入が可能な場所を選びます。

説明責任と「言わない権利」のバランス

説明責任は重要ですが、何でもすべて話せば良いわけではありません。

このように、正当な理由があって回答できない場合は、その理由を明確に告げた上で回答を拒否することは認められます。「言いたくないから言わない」のではなく、「言えない理由がある」ことを説明することが重要です。

弁護士に相談するメリット

マスコミ対応は、一度失敗すると取り返しがつかないため、専門家のサポートを受けることが極めて有効です。

リリースのリーガルチェック

作成したプレスリリースが、法的観点から問題ないか(名誉毀損にならないか、法的責任を不用意に認める表現になっていないか、など)をチェックします。弁護士が文言を修正することで、リスクを最小限に抑えた公表が可能になります。

模擬会見(メディアトレーニング)の実施

弁護士が記者役となり、本番さながらの模擬記者会見を行います。厳しい質問(意地悪な質問)を投げかけ、回答内容や話し方、表情などをチェックし、改善点を指導します。これにより、本番での立ち往生や失言を防ぐことができます。

不当な報道への対応

事実と異なる報道や、過度なバッシング報道がなされた場合、弁護士名で訂正を求めたり、記事の削除を請求したりする法的措置を講じることができます。マスコミ側も、弁護士が介入することで、取材や報道の適正化を意識するようになります。

まとめ

危機管理広報におけるマスコミ対応は、企業が社会に対して「自浄能力」と「誠実さ」を示す最大の機会でもあります。

法的責任を恐れるあまり情報を隠蔽したり、逆に広報的配慮のみで安易に責任を認めすぎたりすることは、どちらも企業にとってリスクとなります。

重要なのは、「法的な正確性」と「広報的な誠実性」のバランスです。

このような状況に直面された場合は、直ちに弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。

当事務所では、企業法務と危機管理に精通した弁護士が、マスコミ対応の戦略立案から、リリース文面の添削、会見リハーサル、そして事後のレピュテーション回復まで、サポートを提供いたします。貴社のブランドと信用を守るため、共に最善の対応策を講じましょう。


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