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【建設業・労災対応】事故発生時の「初動」が会社を守る!報告義務・提出書類と避けるべき労災隠しを弁護士が解説

はじめに

建設業の現場において、労働災害(労災)はどれほど細心の注意を払っていても、完全にゼロにすることは難しいのが現実です。高所作業、重機の稼働、複数業者の混在作業など、建設現場には常に危険が潜んでいます。

万が一、現場で事故が発生した際、企業に求められるのは「迅速かつ適切な初動対応」です。動転して対応が遅れたり、誤った判断で事実を隠そうとしたりすれば、被災者の救護に支障をきたすだけでなく、企業は法令違反による刑事責任や、社会的信用の失墜、公共工事の指名停止といった致命的なダメージを負うことになります。

特に建設業においては、元請・下請という重層的な請負関係があるため、「誰が、どの書類を、どこに提出するのか」という判断が複雑になりがちです。また、「労災保険を使うと保険料が上がるのではないか」「現場の無災害記録が途切れる」といった懸念から、いわゆる「労災隠し」に走ってしまうケースも後を絶ちませんが、これは絶対に避けるべき行為です。

本記事では、建設業の経営者、現場責任者、人事労務担当者の方々に向けて、労災事故発生直後の救護対応から、労働基準監督署への報告手続き、労災保険の請求手順に至るまで、法的な観点に基づいた正しい実務フローを解説します。

Q&A

Q1:軽微な怪我で、本人が「病院に行かなくても大丈夫」と言っている場合でも、会社として対応が必要ですか?

はい、対応が必要です。

たとえ軽微な怪我であっても、後に症状が悪化したり、後遺障害が残ったりする可能性があります。会社として、必ず医療機関を受診させ、医師の診断を受けさせてください。また、業務に起因する負傷であれば、原則として健康保険ではなく労災保険を使用する必要があります。

さらに、休業が及ばない(不休)災害であっても、労災発生の事実自体は社内で記録し、再発防止策を検討する必要があります。休業4日未満の軽微な災害であっても、労働基準監督署への報告(労働者死傷病報告)が必要な場合があります(四半期ごとの報告など)。「大したことない」という自己判断が、後のトラブルや労災隠し疑惑の温床となります。

Q2:下請業者の作業員が現場で怪我をしました。元請業者である当社はどのような手続きを行う必要がありますか?

建設業の場合、労災保険の適用においては「元請負人の一括適用」という特例があります。

したがって、労災保険の給付請求手続き(治療費や休業補償の請求)については、原則として元請業者の労災保険を使用し、元請業者が証明を行うことになります。

一方で、労働基準監督署への事故報告(労働者死傷病報告)については、被災した労働者を直接雇用している事業者(下請業者)が提出義務を負います。ただし、元請業者としても、現場を統括管理する立場として、事故報告の内容を確認し、元請としての安全管理責任に関する調査に協力する必要があります。役割分担を誤らないよう注意が必要です。

Q3:従業員が「自分の不注意で起きた事故なので、会社に迷惑をかけたくない。健康保険で治療したい」と言っています。認めても良いですか?

いいえ、認めるべきではありません。

業務中の事故(業務災害)や通勤中の事故(通勤災害)の治療に、健康保険を使うことは法律で禁止されています。これを「労災隠し」とみなされるリスクもあります。

従業員の「会社に迷惑をかけたくない」という意図が、実は「労災にすると解雇されるのではないか」「人事評価に響くのではないか」という不安から来ていることもあります。会社としては、「労災保険を使うことは労働者の正当な権利であり、会社への迷惑ではない」ことを明確に伝え、適正に労災保険の手続きを進める義務があります。もし健康保険を使ってしまった場合、後から労災への切り替え手続きが必要となり、煩雑な事務作業が発生します。

解説

1. 事故発生直後の初動対応フロー(緊急対応)

労災事故が発生した瞬間から、時間は刻一刻と過ぎていきます。現場の責任者は以下の優先順位で冷静に対応する必要があります。

(1) 人命救助と救急搬送の要請

何よりも優先すべきは被災者の救護です。

この段階で「労災になるかどうか」を躊躇して通報を遅らせることは許されません。

(2) 二次災害の防止

事故現場は危険な状態が続いている可能性があります。

これ以上の被害者を出さない措置を講じます。

(3) 現場の保存

警察や労働基準監督署による実況見分が行われる可能性があるため、救護や危険防止に必要な範囲を除き、現場の状況をむやみに変えないようにします。

(4) 関係各所への連絡

2. 労働基準監督署への報告義務(労働者死傷病報告)

労働安全衛生法に基づき、事業者は労働災害が発生した場合、所轄の労働基準監督署長に報告しなければなりません。これが「労働者死傷病報告」です。

(1) 報告の基準と期限

休業日数によって手続きが異なります。

休業4日以上(死亡含む)の場合
休業4日未満の場合

(2) 建設業における注意点

建設現場での事故の場合、この報告書を提出するのは「被災者を直接雇用している事業主(下請業者)」です。元請業者ではありません。

しかし、報告書には「元方事業者(元請)」の名称や事業場名を記載する欄があり、元請の確認印などは法的には不要ですが、実務上は元請が内容を確認し、現場としての事故報告と整合性を取ることが一般的です。

(3) 電子申請の活用

令和7年(2025年)1月1日より、労働者死傷病報告の電子申請が原則義務化される流れにあります(経過措置あり)。紙での提出ではなく、e-Govを通じた申請に対応できるよう準備が必要です。

3. 「労災隠し」のリスクと法的責任

「労災隠し」とは、故意に労働者死傷病報告を提出しなかったり、虚偽の内容(業務中の事故を私傷病と偽るなど)を記載して提出したりする行為を指します。

「労災保険を使わない=労災隠し」ではありませんが、報告義務を怠れば労災隠しとなります。また、下請けに圧力をかけて報告させない行為も厳しく処罰されます。

4. 労災保険の請求手続き(給付申請)

労働基準監督署への「報告」とは別に、被災者が治療費や休業補償を受け取るためには、労災保険の「請求」手続きが必要です。

(1) 療養補償給付(治療費)

(2) 休業補償給付(休業時の賃金補償)

(3) 建設業の「元請一括」適用

前述の通り、建設業の現場労災の場合、労災保険の手続きは元請業者の保険番号を使用します。請求書には元請業者の証明が必要となります。下請業者の保険番号ではない点に注意してください。

5. 行政調査と再発防止策

重大な事故の場合、労働基準監督署による災害調査や、警察による捜査が行われます。

会社は、単に書類を出すだけでなく、以下の対応を誠実に行う必要があります。

弁護士に相談するメリット

労災事故発生時の対応において、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談いただくメリットは以下の通りです。

1. 事故直後の迅速なリーガルアドバイス

「これは労基署に報告すべきか」「警察への連絡は必要か」といった初動の判断を誤ると、取り返しのつかない事態になります。弁護士が法的観点から即座に適切な指示を出します。

2. 労働基準監督署・警察への対応支援

行政調査や警察の捜査に対し、会社としてどのように事実を説明し、資料を提出すべきかについて助言します。また、事情聴取への同席や、提出書類(報告書、是正報告書など)のリーガルチェックを行い、不当に不利な認定を防ぎます。

3. 損害賠償請求(民事責任)への備え

労災事故では、労災保険給付だけでは補償が不十分だとして、被災者側から会社に対して数千万円から億単位の損害賠償請求(安全配慮義務違反)がなされるケースがあります。初動の段階から、将来の訴訟リスクを見据えた証拠保全や事実確認を行えるのは、弁護士ならではの強みです。

4. 刑事事件化の回避・軽減

業務上過失致死傷罪や労働安全衛生法違反で刑事事件化しそうな場合、捜査機関に対して適切な意見申し入れや弁護活動を行い、不起訴処分や処分の軽減を目指します。

まとめ

労災事故発生時の対応は、スピードと正確性が重要です。

「バレなければいい」「面倒だから」といった安易な考えで労災隠しを行うことは、会社を破滅に導く行為であり、断じて許されません。

正しい報告手続きを行い、被災者に誠実に対応することこそが、結果として会社の信頼を守り、損害を最小限に抑える道です。

建設現場での事故対応、書類作成、行政調査への不安がある場合、あるいは既に事故が起きてしまい対応に困っている場合は、直ちに弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。危機管理のプロフェッショナルとして、貴社をサポートいたします。


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