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答弁書の提出期限と方法

はじめに

書面は「届け出て」初めて意味を持つ

内容が固まった答弁書も、正しい手続きで提出しなければ、その効力を発揮しません。裁判実務には、書面を「いつまでに」「どこに」「どのようにして」提出するかについて、厳格なルールが定められています。特に答弁書は、被告が最初に行う重要な手続きであり、その提出方法を間違えると、意図しない不利益を被る可能性もあります。

「裁判所に持っていけばいいだけでしょう?」と軽く考えがちですが、実は提出先は1ヶ所ではありません。この記事では、見落としがちな答弁書の提出に関する「期限」と「方法」という、手続き的な側面に焦点を当てて、具体的なルールと注意点を解説します。

Q&A

Q1. 答弁書の提出期限に1日か2日、遅れてしまいそうです。もう受け付けてもらえないのでしょうか?

期限を過ぎても、裁判所は答弁書を受け付けてくれます。しかし、提出が遅れると、裁判官や原告が第1回期日までに内容を検討する時間がなくなり、円滑な訴訟進行の妨げになります。実務上は、期日の前日までに提出すれば不利益に扱われないことも多いですが、これはあくまで慣行であり、保証されるものではありません。期限を守るのが大原則ですが、万が一遅れそうな場合は、事前に裁判所の担当書記官に電話で一報を入れておくのが望ましいでしょう。

Q2. なぜ原告にも直接、答弁書を送る必要があるのですか?裁判所から送ってはくれないのでしょうか?

これは、訴訟手続きを迅速に進めるための「直送(ちょくそう)」というルールです。訴状は裁判所が被告に送達しますが、それ以降に当事者が提出する書面(答弁書、準備書面など)は、原則として、裁判所に提出すると同時に、相手方にも直接送付しなければなりません。これにより、相手方は裁判所経由よりも早く書面を入手でき、次の準備に速やかに取り掛かることができます。

Q3. 答弁書と一緒に、こちらの手元にある証拠も提出すべきですか?

最初の答弁書の段階では、必ずしも証拠を添付する必要はありません。特に、「とりあえずの答弁書」を提出する場合は、証拠は不要です。詳細な反論(特に「抗弁」)を記載した答弁書を提出する場合は、その主張を裏付ける重要な証拠(乙第1号証、乙第2号証…と番号を付けます)を添付することもあります。どの証拠をどのタイミングで出すかは重要な戦略ですので、弁護士とよく相談して決めるべきです。

解説

答弁書提出の3つのルール

ルール1:提出期限

訴状と一緒に入っている「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」には、答弁書の提出期限が明記されています。期限は、通常、第1回口頭弁論期日の1週間前です。この期限は、裁判官と原告が、期日までに答弁書の内容を読み込み、争点を把握するための準備期間として設けられています。この期限内に答弁書を提出しておくことで、たとえ第1回期日に欠席しても、答弁書の内容を法廷で述べたものとして扱ってもらえます(擬制陳述)。期限を守ることは、被告の権利を守る上で重要です。

ルール2:提出先―裁判所と原告、2ヶ所への提出義務

答弁書は、裁判所に「正本」を1通、そして相手方である原告に「副本(コピー)」を1通、合計2ヶ所に提出(送付)する必要があります。

ルール3:適切な方法で提出する

答弁書の提出・直送には、いくつかの方法があります。

弁護士が利用する民事裁判のIT化―「mints」とは

現在、民事裁判の手続きはIT化が進んでいます。弁護士に依頼した場合、こうした最新のシステムを利用した、より迅速で確実な手続きが可能になります。その中核となるのが「mints(ミンツ)」と呼ばれるオンラインシステムです。

これは、弁護士が裁判所への書面提出をオンラインで行うためのシステムです。従来のように、書面を印刷して裁判所に持参したり郵送したりする必要がなく、事務所のパソコンから直接、安全に提出することができます。

弁護士に依頼するメリットは、法的な助言や書面作成に留まりません。こうしたITシステムを活用することで、手続きの正確性と迅速性が格段に向上し、あなたは煩雑な事務作業から解放されます。

まとめ

正しい手続きが、主張の信頼性を高める

作成した答弁書は、その内容だけでなく、「期限内に」「裁判所と原告の2ヶ所に」「適切な方法で」提出して、初めて意味を持ちます。特に、相手方への「直送」は忘れやすいポイントなので注意が必要です。こうした手続きの一つ一つを正確に行うことが、裁判官からの信頼を得て、円滑に訴訟を進めるための土台となります。手続きに不安がある場合や、本業が忙しくて対応が難しい場合は、専門家である弁護士にお任せいただくのが有益です。


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