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訴状審査とは?裁判所からの「補正」指示への的確な対応法

はじめに

訴状を裁判所に提出し、事件番号が付与されると、次に行われるのが「訴状審査」です。これは、担当となった裁判官や書記官が、提出された訴状の内容を法的な観点から精査する、いわば最初の関門です。この審査の結果、内容に不備や不明瞭な点があると判断されると、裁判所から「補正(ほせい)」、つまり修正や追完を求める指示が出されます。

「裁判所から修正を求められた」と聞くと、何か大きな失敗をしてしまったかのように感じ、不安になるかもしれません。しかし、訴状審査と補正は、裁判実務において日常的に行われる手続きの一つです。

この記事では、「訴状審査」で裁判所が何をチェックしているのか、そして「補正」を求められた場合にどのように対応すればよいのか、その具体的な方法と注意点を解説します。

Q&A:訴状審査と補正に関するよくある疑問

Q1. 裁判所から「補正勧告」の連絡が来ました。これは、裁判で不利になるということでしょうか?

いいえ、全くそんなことはありません。補正勧告は、あくまで訴訟の前提となる訴状の形式や主張内容を明確にするための手続きです。むしろ、裁判官が疑問に思っている点を正式な審理に入る前に解消し、争点を明確にするための機会と捉えるべきです。この段階で誠実かつ的確に対応することで、その後の審理をスムーズに進めることができます。不利になるどころか、主張をより分かりやすく裁判官に伝えるチャンスと考えることもできます。

Q2. 裁判所の補正命令に応じないと、どうなりますか?

これは大きなリスクを伴います。裁判所が「補正命令」を発したにもかかわらず、指定された期間内に原告が適切な補正を行わない場合、裁判官は「訴状却下命令」という決定を下すことができます(民事訴訟法第137条)。訴状が却下されると、訴えは初めから無かったものとして扱われ、請求内容についての審理(本案審理)を一切してもらえません。せっかく起こした訴訟が、入り口で門前払いされてしまう、という厳しい結果になります。

Q3. 補正の手続きは複雑ですか?弁護士に任せることはできますか?

はい、もちろん弁護士にお任せいただけます。補正指示の意図を正確に理解し、法的に的確な内容の「補正書」を作成するには、専門的な知識が必要です。弁護士に依頼していれば、裁判所とのやり取りから補正書の作成・提出まで、すべて代理人として行います。そもそも、経験豊富な弁護士が作成した訴状は、補正を求められること自体が少ないと言えます。

解説:訴状審査と補正の実務

1. 「訴状審査」とは?-裁判官による最初のチェック

訴状審査とは、配点された裁判官(または裁判部の裁判官と書記官)が、訴訟を本格的に開始する前に、訴状に法律上の問題点がないかを確認する手続きです。審査の目的は、その後の審理を円滑かつ適正に進めるための土台を整えることにあります。

2. 裁判所は何をチェックしているのか?審査の主なポイント

審査の対象は、形式的な側面と内容的な側面の両方に及びます。

形式面のチェック

これらの形式的な不備は、比較的補正が容易なものです。

内容面のチェック

内容面の不備は、訴訟の根幹に関わる部分であり、補正にも慎重な対応が求められます。

3. 裁判所からの指示:「補正命令」

審査の結果、不備が見つかると、裁判所は原告に対して補正を促します。

4. 補正への具体的な対応方法

補正を求められたら、指示された内容に従い補正書面を作成し、裁判所に提出します。

弁護士に相談するメリット

訴状審査と補正の対応は、訴訟の初期段階における重要なプロセスです。

  1. 補正を未然に防ぐ訴状作成
    経験豊富な弁護士は、裁判所が審査でどこをチェックするかを熟知しています。そのため、そもそも補正を求められる可能性の低い、要件を満たした質の高い訴状を作成することができます。
  2. 補正指示の意図の正確な理解
    裁判所からの補正指示は、時に抽象的で、その真意を汲み取るのが難しい場合があります。弁護士は、裁判官が何を知りたがっているのか、どの法律要件の充足を求めているのかを的確に理解し、適切な補正を行うことができます。
  3. 迅速かつ的確な補正書の作成
    補正には期限があります。弁護士は、限られた時間の中で、法的に的確かつ説得力のある補正書を迅速に作成し、裁判所に提出することができます。
  4. 訴状却下リスクの回避
    弁護士に依頼することで、補正命令を看過したり、不適切な対応をしてしまったりして、訴状が却下されるという最悪の事態を回避できます。

まとめ

訴状審査は、あなたの訴えが法的な審理の土俵に乗るための、いわば健康診断のようなものです。裁判所から補正を求められることは、決して特別なことでも、不利なことでもありません。むしろ、争点を明確にし、その後の審理を円滑に進めるための重要な協同作業と捉えるべきです。

ただし、その対応には専門的な知識と迅速さが求められ、これを誤ると訴訟が門前払いされるリスクも伴います。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、訴訟の入り口である訴状作成から、万一の補正対応まで、依頼者が安心して訴訟を進められるようサポートいたします。


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